
――管理会計は、シンプルでいい・第4回――
「管理会計はやっている“はず”なのに、何も変わらない」
ここまで読んでくださった方の中には、
こんな感覚を持っている社長もいるかもしれません。
「数字は一応見ている」
「Excelも作っている」
「でも、経営が劇的に変わった感じはしない」
実はこれ、とてもよくある状態です。
そして、ここに管理会計の分かれ道があります。
それは、
その管理会計は、“使われているか?”
という問いです。
管理会計は、
「あるか・ないか」ではありません。
**「使われているか・使われていないか」**です。
今回は、
経営を前に進める管理会計と、止めてしまう管理会計の違い
を、はっきりさせていきます。
そもそも「使える管理会計」とは何か?
まず、定義をシンプルにします。
使える管理会計とは、
数字を見たあとに、
社長の行動が1つ変わる管理会計
です。
逆に言えば、
- 見て終わり
- 分かって終わり
- 「ふーん」で終わり
これらはすべて、
使われていない管理会計です。
どれだけ立派な資料でも、
どれだけ正確な数字でも、
行動が変わらなければ、
経営は1ミリも前に進まない
これは、かなり重要な前提です。
使えない管理会計①「説明はできるが、決められない」
まず一番多いパターンです。
- 売上がなぜ増えたか
- 利益がなぜ減ったか
- 経費の内訳がどうなっているか
説明は完璧。
でも、会議の最後はこう終わります。
「状況は分かりました」
「引き続き、様子を見ましょう」
この瞬間、
管理会計は報告資料に変わります。
説明が悪いわけではありません。
ただ、
説明で終わる数字は、
経営を前に進めない
のです。
使えない管理会計②「現場の感覚とズレている」
次に多いのが、このケース。
数字上は、
- 利益は出ている
- 問題はなさそう
でも、社長や現場はこう感じている。
「なんとなく、しんどい」
「忙しいのに、余裕がない」
このとき、
「数字では問題ありません」
と言われると、
社長は数字から距離を取ります。
なぜなら、
自分の実感と合わない数字は、信じられない
からです。
使える管理会計は、
社長の感覚と会話ができる数字です。
使えない管理会計③「やることが増えるだけ」
管理会計を導入した結果、
- 入力作業が増えた
- チェック項目が増えた
- 会議資料が分厚くなった
でも、
「で、何が変わったの?」
となるケース。
これは、
管理会計が“仕事”になってしまっている状態
です。
管理会計は、
仕事を増やすためのものではありません。
判断を減らすためのものです。
ケーススタディ:管理会計を「使える」に変えた会社
ここで、実際の事例を紹介します。
従業員15名ほどの会社。
以前は、毎月こんな流れでした。
- 税理士から試算表が届く
- 社長がざっと目を通す
- 特に何も決めない
いわば、
数字はあるが、使われていない状態。
変えたのは、数字ではなく「問い」
この会社でやったことは、
数字を増やすことではありません。
変えたのは、
数字を見たときの問いです。
- この数字を見て、
今月「やめること」は何か? - この数字を見て、
来月「試すこと」は何か?
たったこれだけ。
すると、会議が変わりました。
- 数字 → 行動
- 報告 → 判断
に変わったのです。
使える管理会計の共通点①「問いがセットになっている」
使える管理会計には、必ず
“この数字を見たら、何を考えるか”
がセットになっています。
例えば、
- 粗利率が下がったら → 値決めを疑う
- 固定費が重くなったら → 投資かどうか考える
- 現金が減ったら → スピードを落とす
数字単体ではなく、
反応ルールがある。
これが、使える管理会計です。
使える管理会計の共通点②「すぐ動けるサイズ感」
使える管理会計は、
完璧を目指しません。
- 7割分かればOK
- ズレたら直す
- ダメなら戻す
この前提があるから、
「まずやってみよう」
が言える。
管理会計は、
行動を小さくする装置でもあります。
使える管理会計の共通点③「社長の言葉で語れる」
使える管理会計は、
- 専門用語が少ない
- 社長の言葉で説明できる
特徴があります。
「今は、稼ぐ力に対して
会社がちょっと重い」
こう言える状態は、
かなり管理会計が“使えている”状態です。
管理会計は「経営を前に進めるための会話」
管理会計を導入するとき、
ぜひ思い出してほしいことがあります。
管理会計は、
社長が
「次、何をするか」を
話すための道具
です。
- 正しさを競うものではない
- 間違いを責めるものでもない
未来の一手を決めるための会話。
それが生まれていないなら、
その管理会計は、まだ使われていません。
「使えるかどうか」は、たった1つで分かる
最後に、
とてもシンプルなチェック方法をお伝えします。
月次で数字を見たあと、
こう自問してください。
「この数字を見て、何を変える?」
答えが出るなら、
その管理会計は使えています。
出ないなら、
数字か、見方か、問いかけを
変える必要があります。
今日の一言
管理会計は、理解するためのものではない。
経営を“一歩前に進める”ための道具である。
