③売上を追いかけた瞬間、利益は逃げていく


――利益は、勝手には生まれない・第3回――

「売上さえ上がれば何とかなる」は、社長を追い詰める言葉

経営が苦しくなったとき、
多くの社長が、ほぼ反射的にこう言います。

「とにかく、売上を作らないと」
「今は利益より、売上を取りに行くしかない」
「忙しくなれば、何かが変わるはず」

この言葉、
一度も口にしたことがない社長の方が、
少ないかもしれません。

でも実はこの瞬間、
利益は、静かに逃げ始めています。


売上は「追いかけるもの」ではない

まず、はっきり言います。

売上を追いかける経営は、
一時的には楽になり、
長期的には必ず苦しくなります。

なぜか。

それは、
売上という数字が、
**一番“見えやすくて、危ない数字”**だからです。


売上は、麻酔のような数字

売上が上がると、

・数字が増える
・忙しくなる
・評価される
・達成感がある

つまり、
経営の痛みを一時的に感じなくなる。

これが、
売上の怖さです。

利益が薄くなっていても、
キャッシュが減っていても、

「まあ、売上は上がってるし」

と、自分に言い聞かせられてしまう。


売上を追うと、社内で何が起きるか

売上最優先になると、
会社の中では、こんな変化が起きます。

・値引きが増える
・条件の悪い仕事も受ける
・急ぎ案件が増える
・現場が疲弊する

これらはすべて、

利益率を削る行動

です。

でも、
売上が立っている間は、
そのダメージが見えません。


ケーススタディ:売上倍増、利益半減の会社

ある小規模のサービス業の話です。

・前年売上:5,000万円
・今年の目標:とにかく売上1億円

社長は営業に走り、
案件は次々に決まりました。

結果、

・売上:1億円(目標達成)
・社員はフル稼働
・外注も増加

一見、大成功です。

ところが決算を見ると、

・利益:前年の半分以下

理由はシンプル。

・値引き案件が多い
・外注費が想定以上
・管理コストが増加

売上は倍、
でも利益は減少。

社長の口から出た一言は、

「こんなに働いて、なんで…?」


売上を追うと「選べなくなる」

売上を最優先にすると、
社長は、こんな状態になります。

・仕事を選べない
・断れない
・条件交渉ができない

なぜなら、

「今月の売上が足りないから」

この一言が、
すべての判断を支配するからです。


利益が出る会社は、売上に“条件”をつけている

一方、利益が出ている会社は、
売上をこう見ています。

・この売上は、いくら利益が残る?
・固定費の回収に貢献している?
・社内の負荷に見合っている?

つまり、

「どんな売上でもOK」ではない

のです。


売上至上主義が生む、3つの落とし穴

① 値引きが当たり前になる

一度値引きを始めると、

・元の価格に戻せない
・値引き前提の客が残る
・利益率が下がり続ける

売上は増えても、
一件あたりの価値が下がる。


② 固定費が後からついてくる

売上が増えると、

・人を増やす
・設備を増やす
・家賃が上がる

こうして固定費が増えます。

そして気づいたときには、

「売上を下げられない会社」

になっている。


③ 社長の時間が消える

売上を追う経営では、

・社長が現場に張り付く
・トラブル対応に追われる
・考える時間がなくなる

結果、

経営判断が、
ますます短期的になる

という悪循環に入ります。


売上は「結果」であって「目的」ではない

ここが、
一番大事なポイントです。

売上は、経営の目的ではありません。

売上は、

・利益を生むための手段
・固定費を回収するための通過点

それ以上でも、それ以下でもない。


利益が出る会社は、売上を“抑える勇気”を持つ

利益が出ている会社の社長ほど、

・この仕事は受けない
・この条件ならやらない
・今月は売上を追わない

こうした判断を、
あえてします。

これは怠けではなく、

利益を守るための戦略

です。


「忙しいのに儲からない」は、売上の罠

もし今、

・忙しい
・売上はある
・でも不安

こう感じているなら、

それは能力不足でも、
努力不足でもありません。

売上という数字に、
引っ張られすぎているだけ

です。


売上を追う前に、決めるべき一つのこと

売上を考える前に、
社長が決めるべきなのは、これです。

「最低、いくらの利益を残したいか」

この一言が決まると、

・やる仕事
・やらない仕事
・価格
・使っていい費用

すべてが変わります。


今日の一言

売上を追いかけた瞬間、
社長の視界から“利益”は消える。
利益は、追わずに“守る”もの。



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