
――未来は、数字で設計できる・第2回――
「社長の夢を聞かせてください」と言われて、言葉に詰まる理由
「今後、どんな会社にしたいですか?」
「3年後、どうなっていたら理想ですか?」
こう聞かれて、スラスラ答えられる社長は、実はそれほど多くありません。
- なんとなく大きくしたい
- 今より楽になりたい
- ちゃんと利益が出る会社にしたい
どれも間違いではありません。
むしろ、**とても人間らしく、自然な“夢”**です。
ただし、この状態のままでは、経営判断には使えません。
なぜなら、
夢が「言葉」のままだと、
今日なにをやるべきかが決まらない
からです。
今回のテーマは、ここです。
夢を数字に落とした瞬間、
社長の頭の中が一気に整理される理由を解説していきます。
夢はフワッとしていていい。でも経営はフワッとできない
まず大前提として、はっきり言います。
夢は、フワッとしていていい。
- 社員にちゃんと給料を払いたい
- お客さんに選ばれる会社でいたい
- 家族との時間を大事にしたい
こうした想いが、経営の原動力になります。
ただし問題は、
その夢のまま、経営をしようとすることです。
夢はエネルギーになりますが、
行動の優先順位は教えてくれません。
- 売上を伸ばすべきか
- コストを下げるべきか
- 人を増やすべきか
- 仕事を断るべきか
これらはすべて、
数字に落とさないと判断できない領域です。
数字にする=夢を現実に引きずり下ろすこと
「夢を数字にする」と聞くと、
- ロマンがなくなる
- 現実を突きつけられそう
- できなかったら嫌だ
そんな感情が湧く方もいるかもしれません。
でも、視点を変えてみてください。
数字にするとは、
夢を“実行可能な場所”まで引きずり下ろすことです。
たとえば、
「将来、年商1億円の会社にしたい」
これは、とても立派な夢です。
では、ここに一つ質問を加えます。
- 年商1億円って、月にいくらですか?
- その売上は、何人で回しますか?
- 1人あたり、いくら売る計算ですか?
この瞬間から、夢は「計算できるもの」に変わります。
ケース①:「なんとなく拡大したい」社長が迷走していた理由
ある製造業の社長の話です。
この社長は、口癖のように言っていました。
「もっと会社を大きくしたいんです」
ですが実際には、
- 新規投資に踏み切れない
- 人を採用するのが怖い
- 毎年、同じ規模で停滞
理由は単純でした。
「どこまで大きくしたいのか」が数字で決まっていなかったのです。
そこで行ったのは、たったこれだけ。
- 3年後の売上目標を仮で置く
- そこから逆算して、今の体制との差を見る
すると、社長はこう言いました。
「あ、これなら人を1人増やしても大丈夫ですね
逆に、今は設備投資は早いかもしれない」
夢を数字にした瞬間、
やること・やらないことが自然に分かれたのです。
数字にすると「やらなくていいこと」も見えてくる
ここが、とても重要なポイントです。
夢を数字に落とすと、
- やるべきこと
だけでなく - やらなくていいこと
も、はっきりします。
多くの社長が忙しい理由は、
全部やろうとしているから
です。
でも、数字にすると分かります。
- その施策、本当に売上に効く?
- それ、今やる必要ある?
- 夢に近づく行動か?
数字は、社長にとってのフィルターになります。
「夢を叶えるための数字」と「管理会計の数字」は同じ線上にある
ここで、第1回目の話とつながります。
管理会計は、
- 今、何が起きているか
- 数字はどう動いているか
を見るためのもの。
一方、事業計画(未来の管理会計)は、
- これから、数字をどう動かしたいか
を見るためのもの。
つまり、
夢 → 数字 → 行動 → 実績 → 修正
この流れが一本につながったとき、
経営は「感覚」から「設計」に変わります。
ケース②:「楽になりたい」という夢を、あえて数字にした結果
もう一つ、印象的なケースを紹介します。
あるサービス業の社長の夢は、こうでした。
「正直、もっと楽になりたいんです」
一見、数字とは無縁に見えますよね。
でも、ここから数字に落としました。
- 月の売上はいくら必要か
- 自分が現場に出なくても回る体制は?
- 外注・人件費はいくらまでOKか
すると見えてきたのは、
- 利益率を上げないと楽にならない
- 売上を増やすより、単価を上げるべき
- 忙しい仕事を減らす決断が必要
社長はこう言いました。
「楽になるって、
こういう数字の話だったんですね」
夢は、
数字にしないと“行動”に翻訳されないのです。
完璧な数字じゃなくていい。仮でいい
ここで、もう一つ大事なことを伝えます。
数字は、当てにいかなくていい。
- 仮で置く
- ズレたら直す
- そのズレから学ぶ
これで十分です。
むしろ、
当てようとするから、数字が重くなる
当てようとするから、作れなくなる
事業計画も、夢の数字化も、
**「未来のたたき台」**です。
夢を数字に落とせる社長は、ブレにくくなる
最後に、一番の効果をお伝えします。
夢を数字に落とした社長は、
- 判断がブレにくい
- 他人の意見に振り回されにくい
- 不安になりにくい
なぜなら、
自分の中に「判断の基準」があるから
です。
銀行、税理士、社員、取引先。
誰と話しても、軸が数字にある。
これは、経営者としての強さです。
今日の一言
夢は、語るものではなく、数字にして初めて動き出す。
