⑤完璧なデータより、“判断できるデータ”を作る


――管理会計のためのデータ取得・入力設計・第5回――

データの完璧主義が経営を遅くする

「データは正確で完璧でなければならない」──
こう考える社長は少なくありません。

確かに、間違ったデータで判断するとリスクはあります。しかし、完璧なデータを求めすぎるあまり、意思決定が遅れてしまう方が会社にとって大きな損失です。

例えば、売上や原価の数字が少し曖昧でも、経営判断が即できる状態であれば、チャンスを逃さず改善策を打てます。
逆に、完璧を求めて1週間も数字を揃えている間に、機会を逃すこともあります。


判断に必要な精度を見極める

まず大切なのは、**「どこまで正確であれば判断できるか」**を見極めることです。

  • 売上:1,000円単位で十分か?
  • 原価:概算で十分か?
  • 在庫:個単位か箱単位で十分か?

完璧を目指すと現場負担が増えます。
「判断できる精度」を決めることで、現場は無理なく入力できます。

ケーススタディ:小売店の改善例

  • 以前:売上を商品別・時間帯別・支払い方法別で全て手入力
    → 現場負担大、数字は揃うが集計に時間がかかる
  • 改善後:
    • 商品別の売上だけ入力、支払い方法はPOSで自動集計
    • 時間帯は週単位で概算
  • 結果:数字は即判断可能な精度で揃い、現場負担も大幅減

数字の精度より、意思決定の速度を優先

会社経営で重要なのは、スピードです。

  • 数字の精度が100%でも、意思決定が1週間遅れる
  • 数字の精度が概算でも、即判断できれば改善策を即実行可能

ケーススタディ:製造業

  • 問題:原価計算を細かく精査してから利益改善策を検討
    → 月末集計まで改善策を打てず、納期トラブルやコスト増加が続く
  • 改善:概算原価を週次で把握し、必要な改善は即実行
  • 結果:納期遅延減少、コスト削減も即効

ポイント:完璧な数字より、「意思決定に使える数字」を優先する。


判断できるデータの作り方

  1. 必要最小限の数字を揃える
    • 管理会計に必要な数字だけを抽出
  2. 概算で十分なものは概算で入力
    • 精度より即時性を優先
  3. 重要な数字は正確に、その他は簡略化
    • 売上や利益など判断に直結する数字は正確
    • 補助的な数字は概算でOK

ケーススタディ:サービス業

  • 以前:顧客ごとの売上、スタッフ稼働、キャンセル、問い合わせ…全て詳細入力
  • 改善後:
    • 売上、スタッフ稼働は正確に
    • キャンセルや問い合わせは週次集計で十分
  • 結果:即日判断可能なデータが揃い、現場も無理なく入力

現場が続けられる仕組みを作る

判断できるデータを作るためには、現場が嫌がらず続けられることが不可欠です。

  • 自動化できる部分は自動化
    • POS、勤怠、仕入システムと連携
  • 入力項目は最小限に絞る
  • ルールは簡単で明確に
  • 現場の意見を反映する

ケーススタディ:製造業の例

  • 以前:各工程の作業時間・材料使用量を手入力
  • 改善:バーコードスキャンで自動取得、必要最小限の手入力のみ
  • 結果:現場負担は半分、数字も即判断可能

判断できるデータのメリット

  1. 意思決定が速くなる
  2. 現場負担が減る
  3. 改善策をすぐ打てる
  4. 完璧でなくても数字に信頼感が出る

ケーススタディ:小売業

  • 改善前:詳細な日別・商品別売上を手入力
    → 数字は正確だが、意思決定が月単位で遅れる
  • 改善後:商品別売上だけ自動集計
    → 日次で売上状況把握、販促や発注に即反映

今日からできる実践アクション

  1. 完璧を目指す箇所と概算で十分な箇所を分ける
  2. 意思決定に直結する数字だけを優先して入力
  3. 入力は現場の負担を考慮して簡単にする
  4. 自動化や連携を積極的に活用
  5. 定期的に判断に必要な精度を見直す

今日の一言

完璧なデータより、“判断できるデータ”を作れ。
数字の精度よりも、
意思決定のスピードと現場の継続性を優先することが、
会社の成長を加速させる。


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