
――戦わない市場を決めるという戦略・第9回――
「こんなに頑張っているのに…」が口癖になったら危険信号
経営者と話していて、
ある言葉が出てくると、私は少し身構えます。
「いや、うちは本当に頑張ってるんですよ」
この言葉が出る会社ほど、
- 長時間労働
- 気合と根性
- 価格を下げてでも仕事を取る
という状態に陥っていることが多い。
そして、なぜか利益は残らない。
努力が報われない原因は「能力不足」ではない
最初に、はっきり言っておきます。
努力が報われない会社の多くは、
能力が低いわけでも、怠けているわけでもない
むしろ逆です。
- 真面目
- 責任感が強い
- 顧客対応も丁寧
それでも報われない。
原因は、ほぼ一つ。
戦っている市場を間違えている
市場は「努力を増幅」も「無効化」もする
市場とは何か。
それは、
- 顧客の価値基準
- 比較のされ方
- 競争のルール
がセットになった環境です。
この環境は、
- 正しい場所なら、努力を何倍にもする
- 間違った場所なら、努力をゼロにする
という性質を持っています。
ケーススタディ①:誰よりも働く社長の末路
ある小規模サービス業の社長。
- 朝7時から深夜まで働く
- クレーム対応も自ら行う
- 新規営業も自分
周囲から見れば、
「この人以上に頑張っている人はいない」。
しかし、
- 利益はほぼゼロ
- 借入は増える一方
- 家族との時間もない
なぜか。
問題は「市場」にあった
この会社がいた市場は、
- 価格比較が前提
- 違いが分かりにくい
- 業者が乱立
つまり、
努力が価格に反映されない市場
でした。
どれだけ丁寧でも、
どれだけ時間をかけても、
「結局、安いところで」
で終わる世界。
市場は「性格」が悪いことがある
これは身も蓋もない話ですが、
市場には、性格が悪いものがある
- 頑張っても評価されない
- 値下げだけを要求される
- 失敗だけが責められる
こういう市場では、
真面目な人ほど、損をする
努力が報われる市場の共通点
一方で、努力が報われる市場には
共通点があります。
- 顧客が価値で判断する
- 専門性が評価される
- 長期関係が前提
つまり、
努力が「価格」や「継続」に変換される
構造がある。
ケーススタディ②:同じ努力、真逆の結果
同じ技術、同じスキルを持つ2社。
A社
- 誰でも対象
- 比較前提
- 単発取引
B社
- 特定業界特化
- 判断軸が明確
- 継続前提
結果は、
- A社:疲弊
- B社:安定成長
努力量はほぼ同じ。
違ったのは、
努力を置いた市場
「もっと頑張れ」は、危険なアドバイス
経営が苦しいとき、
よく言われる言葉があります。
- もっと営業しろ
- もっと発信しろ
- もっと努力しろ
しかし、市場を間違えている場合、
努力の追加は、消耗を早めるだけ
です。
アクセルを踏む前に、
走っている道が合っているか
を見る必要があります。
市場選択は「経営者の仕事」である
現場は、
- 与えられた市場で
- 与えられた条件で
- 最善を尽くす
ことしかできません。
市場を選ぶのは、
経営者の唯一無二の役割
です。
ここを放棄すると、
現場に無理を強いる経営
になります。
市場を変えると、同じ努力が軽くなる
市場を変えると、何が起きるか。
- 説明しなくても伝わる
- 値引き交渉が減る
- 断る勇気が持てる
つまり、
同じ努力が、楽になる
のです。
「逃げ」ではなく「配置転換」
市場を変えると言うと、
- 逃げ
- 負け
- 諦め
と感じる人もいます。
しかし実際は、
努力の置き場所を変えるだけ
です。
努力そのものは、
何一つ無駄ではありません。
市場は「後から正当化される」
面白いことに、
- 成功した後
- 利益が出た後
人はこう言います。
「あの市場を選んだのが良かった」
しかし本当は、
市場選択が、
成功を“起こした”
のです。
正しい市場は、経営者を孤独にしない
間違った市場では、
- 誰も助けてくれない
- 常に一人で戦う
- 判断が怖くなる
正しい市場では、
- 顧客が味方になる
- 応援される
- 判断が前向きになる
これは精神論ではなく、
構造の違いです。
努力を疑う前に、市場を疑え
最後に、これだけは伝えたい。
もし今、
- 頑張っているのに苦しい
- 真面目なほど損をしている
- 自分を責めている
なら、
努力を疑う前に、
市場を疑ってほしい
今日の一言
報われない努力は、
あなたの問題ではない。
その努力を置く市場を、
間違えているだけだ。
