
― 強みは「探すもの」ではなく、「構造の中から浮かび上がるもの」―
「うちの強みって、何なんでしょうか?」
事業構造転換の話を進めていくと、
社長から必ずと言っていいほど出てくる言葉があります。
「結局、うちの強みが分からなくて…」
・技術はあるけど、他社も持っている
・実績はあるけど、特別とは言えない
・一生懸命やっているけど、どこも同じ気がする
この悩みを持っていない社長の方が、むしろ少数派です。
そして、多くの社長はここで立ち止まります。
「強みが分からない以上、
提供価値なんて決められないですよね?」
ですが、ここではっきり言います。
強みが分からないのは、能力不足ではありません。
見方を間違えているだけです。
「強み=キラキラした特徴」という呪い
まず、社長の頭の中にある
“強みのイメージ”を疑ってみましょう。
多くの社長は、無意識のうちにこう考えています。
- 圧倒的な技術力
- 業界トップクラスの実績
- 誰にも真似できない独自性
だから、
「そんな大層なもの、うちにはない」
となる。
ですが、現実のビジネスで選ばれている理由は、
もっと地味で、もっと現実的です。
ケース①「強みがない」と言い切っていた社長の正体
ある社長は、初めての打ち合わせでこう言いました。
「正直、強みはないです。
普通の会社です」
話を聞いていくと、こんなことが分かりました。
- 問い合わせ対応が異常に早い
- 専門用語を使わず説明する
- 導入後のフォローが丁寧
本人にとっては、
「当たり前すぎて、価値だと思っていなかった」
ことばかり。
しかし、お客さん側に聞くと、
「説明が分かりやすかったから」
「不安がなく進められたから」
と、明確に選ばれていました。
社長は最後に、こう言いました。
「そんな理由で選ばれてるなんて、思いませんでした」
これが、
強みが見えなくなる典型的な構造です。
強みは「社内」ではなく「顧客側」にある
ここで、視点をひっくり返します。
強みとは、
- 自分たちが誇れること
ではなく - お客さんが理由として挙げること
です。
つまり、
強みは社内を見ていても見つかりません。
見るべきは、
- なぜ依頼されたのか
- なぜ続いているのか
- なぜ他社に行かなかったのか
この「理由」です。
「できること」と「選ばれる理由」は別物
社長がよく混同しているのが、ここです。
- できること(スキル・業務)
- 選ばれる理由(価値)
例えば、
×「システム開発ができます」
×「設計から施工まで一貫対応」
これらはできることであって、
それ自体が強みとは限りません。
一方で、
○「何を優先すべきか整理してくれる」
○「判断の不安を減らしてくれる」
これは、
お客さんに起きた変化です。
強みとは、
この“変化”の部分に宿ります。
なぜ社長ほど、自社の強みが見えなくなるのか
ここも重要なポイントです。
社長は、
- 全体を見ている
- 日常業務に深く関わっている
- 苦労も失敗も知っている
だからこそ、
「こんなの、大したことじゃない」
と感じやすい。
でも、お客さんは違います。
- 比較対象がある
- 過去の失敗体験がある
- 不安を抱えている
その中で、
あなたの会社を選んでいます。
評価の基準が、そもそも違うのです。
ケース② 強みを「作ろう」として迷子になった会社
別の会社では、
強みを作ろうとして、迷走しました。
- 新しいサービスを作る
- キャッチコピーを考える
- 無理に差別化しようとする
結果、
- 現場は混乱
- 説明は分かりにくく
- 余計に売れなくなる
後から分かったのは、
もともと選ばれていた理由を、
自分たちで壊していた
という事実でした。
強みは、
無理に足すものではありません。
既にあるものを、正しく拾い直す
それだけで十分なことが多いのです。
強みが見えない会社に共通する3つの状態
ここで、チェックしてみてください。
① お客さんの声を記録していない
感想・理由・不満。
これが残っていないと、強みは見えません。
② 「どこでも同じ」と思い込んでいる
他社の中身を、本当に知っていますか?
③ 社内基準で価値を判断している
「すごいかどうか」ではなく、
「助かるかどうか」です。
強みは「市場とセット」で初めて意味を持つ
ここで、STEP1とのつながりが出てきます。
強みは、
どの市場で語るか
によって、価値が変わります。
- 大企業向けでは弱み
- 小規模事業者向けでは強み
ということは、普通に起こります。
だから、
「強みが分からない」
のではなく、
「どの市場で見るかが決まっていない」
だけの場合も多いのです。
強みを言語化するための3つの問い
ここで、実際に使える問いを出します。
- なぜ最初に声をかけてもらえたか?
- なぜ継続してくれているか?
- もし自社がなくなったら、何に困るか?
この答えの中に、
強みのタネが必ずあります。
派手である必要はありません。
再現性があれば、それで十分です。
強みが決まると、社長は楽になる
強みを言語化できると、
社長の仕事は確実に変わります。
- 説明が短くなる
- 価格の話がしやすくなる
- 判断基準が増える
そして何より、
「これでいいのか?」という迷いが減る。
これは、
事業構造転換において、
非常に大きな変化です。
強みとは「自慢」ではない
最後に、大事なことを一つ。
強みとは、
- 自慢するための言葉
ではなく - 判断を揃えるための言葉
です。
- どの仕事を受けるか
- どこに時間を使うか
- 何をやらないか
その基準になります。
今日の一言
強みは探すものではない。
お客さんの中に、すでに答えはある。
次回は、
「値付けが怖い社長へ(STEP3)」
お金の話に進みます。
