
――成長は、設計しないと壊れる・第5回――
「成長したい」の正体は、だいたい一言すぎる
社長と成長の話をしていると、
ほぼ必ず出てくる言葉があります。
「とにかく、もっと成長したいんです」
一見、前向きで立派な言葉ですが、
この一言には大きな問題が潜んでいます。
それは、
“成長”という言葉が、あまりにも雑
ということです。
成長を一語で語ると、設計はできない
「成長」という言葉のまま考えている限り、
社長の頭の中では、だいたいこうなります。
- 売上を伸ばす
- 規模を大きくする
- もっと有名になる
どれも間違いではありません。
しかし、
この状態では、具体的な設計は一切できません。
なぜなら、
- 何を増やすのか
- どこまで増やすのか
- 何と引き換えに増えるのか
が、まったく見えていないからです。
成長とは「結果」ではなく「構造の変化」
ここで、成長を少し違う角度から定義してみます。
成長とは、
会社の中の“構造”が変わること
です。
売上が増えるのは結果であって、
本質は、内部で起きている変化です。
その変化を見える形にするために、
成長を一度、要素分解してみましょう。
成長を分解する5つの基本要素
多くの中小企業で共通して使える、
成長の基本要素は、次の5つです。
① 売上の成長
② 利益構造の変化
③ 業務量・負荷の増加
④ 人と組織の変化
⑤ 社長の役割の変化
「成長」とは、
これらが同時に、別々のスピードで動く現象です。
① 売上の成長だけを見ていると、必ずズレる
まず、多くの会社が一番注目するのが売上です。
- 去年よりいくら増えたか
- 目標との差はどうか
もちろん重要です。
しかし、売上だけを見ていると、
次の問いが抜け落ちます。
その売上は、
どんな構造で生まれているのか?
- 人を増やして取った売上なのか
- 値引きで取った売上なのか
- 効率化で取った売上なのか
同じ売上増でも、
会社への負荷はまったく違います。
ケーススタディ①:売上は伸びたが、疲弊した会社
ある制作系の会社。
売上は前年比130%。
しかし社内は、
- 残業増加
- クレーム増
- 社長の不満増
原因はシンプルでした。
「売上の取り方」を分解していなかった
案件数を増やすことで売上を伸ばした結果、
業務量だけが爆発的に増えていたのです。
② 利益構造は、成長と一緒に必ず歪む
成長期によく起きるのが、
売上は伸びているのに、利益が残らない
という現象です。
これは、
- 人件費
- 外注費
- 管理コスト
が、売上より速く増えるからです。
ここで重要なのは、
利益率は、放っておくと必ず下がる
という事実です。
成長=利益が増える、ではありません。
成長期こそ、利益構造の再設計が必要になります。
③ 業務量は、売上の“倍速”で増える
これは多くの社長が見落としがちなポイントです。
売上が1.2倍になると、
業務量は1.2倍では済みません。
- 調整
- 確認
- 管理
- トラブル対応
これらが重なり、
体感では、1.5倍〜2倍
になることも珍しくありません。
成長を要素分解しないと、
この“体感負荷”が数字に現れず、
社長は「なんとなくしんどい」状態に陥ります。
④ 人と組織は、自然には育たない
人が増えると、組織ができる。
そう思われがちですが、現実は逆です。
人が増えると、
組織は一度、必ず壊れる
- 阿吽の呼吸が通じなくなる
- 暗黙知が共有されなくなる
- 判断基準がバラバラになる
成長を要素分解していない会社では、
この問題を「人の問題」にしてしまいます。
しかし実際は、
設計の問題
です。
ケーススタディ②:組織設計を先にした会社
ある小売業の会社。
売上拡大を前に、社長が最初にやったのは、
- 役割の整理
- 判断基準の明文化
- 情報共有の仕組み作り
結果、
- 成長スピードは緩やか
- しかし、混乱は最小限
この会社は、
「人が増える前に、
組織が壊れるポイント」を先に分解していた
のです。
⑤ 成長で一番変わるのは、社長の仕事
最後に、最も重要な要素です。
成長すると、
社長の仕事は必ず変わる
にもかかわらず、
- 昔と同じ仕事をし続ける
- 昔と同じ見方で判断する
これが、成長のブレーキになります。
成長を要素分解すると、
必ずこの問いにぶつかります。
「今の規模に、
今の社長の仕事は合っているか?」
成長を要素分解すると、初めて設計ができる
ここまで見てきたように、
- 売上
- 利益
- 業務
- 人
- 社長
これらは、
同時に、しかし別々に成長します。
だからこそ、
一語の「成長」ではなく、
要素ごとに考える必要がある
のです。
これができると、
- 何を伸ばすか
- 何を抑えるか
- どこで一度止めるか
が、初めて選べるようになります。
今日の一言
成長は願うものではない。
分解できた瞬間から、設計できるものに変わる。
