
――成長は、設計しないと壊れる・第3回――
「戦略は頭で考えるもの、計画は数字の話」になっていないか?
経営者と話していると、
こんな言葉を耳にすることがあります。
「戦略はもう決まっているので、
あとは事業計画を作ってもらえれば」
一見、整理されているように聞こえますが、
この言葉が出た瞬間、私は内心こう思います。
あ、これは危ないな
なぜなら、
成長戦略と事業計画を“別物”として扱い始めた会社は、
高確率でどこかで成長が止まるからです。
成長戦略と事業計画は、本来「同じもの」である
まず結論から言います。
成長戦略と事業計画は、分けて考えるものではありません
役割が違うだけで、
見ている「中身」は同じです。
- 成長戦略:言葉で描いた未来
- 事業計画:数字で描いた未来
つまり、
同じ未来を、別の言語で表現しているだけ
なのです。
分けて考えた瞬間に起きる、典型的なズレ
では、成長戦略と事業計画を分けて考えると、
何が起きるのでしょうか。
① 戦略が「夢物語」になる
成長戦略だけを先に作ると、
こうなりがちです。
- 新規事業をやりたい
- 市場を広げたい
- 人を増やしたい
方向性としては正しい。
しかし、
- いくらかかるのか
- いつ回収できるのか
- 失敗したらどうなるのか
が、語られていない。
結果、戦略は実行力を持たない言葉になります。
② 事業計画が「作業」になる
逆に、事業計画を後付けで作るとどうなるか。
- 売上を逆算
- 利益を帳尻合わせ
- 銀行向けに体裁を整える
数字は並んでいるけれど、
「なぜこの数字なのか?」
を、社長自身が説明できない。
この状態では、事業計画は
経営の道具ではなく、提出書類です。
ケーススタディ①:戦略と計画がズレた会社
あるITサービス会社。
社長は明確な成長戦略を語っていました。
「3年で売上を倍にして、
次の柱となる事業を育てたい」
方向性は悪くありません。
しかし、作られた事業計画を見ると、
- 売上は伸びている
- しかし利益は横ばい
- キャッシュは常にギリギリ
戦略と数字が、まったく噛み合っていなかったのです。
理由は簡単でした。
戦略は頭の中、
計画は別の人がExcelで作っていた
のです。
成長戦略とは「やること」ではない
多くの社長が誤解していますが、
成長戦略とは、
「何をやるか」
を決めることではありません。
本質は、
「何をやらないか」を決めること
です。
- どの市場に集中するのか
- どの顧客を選ぶのか
- どの投資は見送るのか
これを決めない限り、
事業計画の数字は定まりません。
事業計画とは「戦略の耐久テスト」である
ここで視点を変えましょう。
事業計画は、戦略を否定するために作る
このくらいのスタンスが、ちょうど良いのです。
- この戦略、本当に回るか?
- お金は持つか?
- 人は足りるか?
数字に落とした瞬間、
戦略の弱点はすべて露出します。
だからこそ、
戦略と計画は、同時に作らなければならない
のです。
ケーススタディ②:戦略と計画を同時に作った会社
ある製造業の社長。
以前は、
- 戦略は社長の頭の中
- 計画は税理士任せ
でした。
ある年から方針を変更。
- 戦略を言葉で整理
- その場で数字に落とす
- 合わなければ戦略を修正
これを何度も往復しました。
結果、
- 無理な成長案は自然に消え
- 残った戦略は実行力が高い
- 社内の納得感が段違い
社長はこう言いました。
「初めて、
戦略と数字が同じものだと分かりました」
成長設計とは「言葉と数字の翻訳作業」
ここまでをまとめると、
成長設計とはこう定義できます。
成長設計=
言葉(戦略)と数字(計画)を、
何度も翻訳し続けるプロセス
- 言葉にしたら、数字で確かめる
- 数字が合わなければ、言葉を修正する
この往復がない成長は、
必ずどこかで壊れます。
なぜ社長がこの作業をやらなければならないのか
ここで重要なポイントがあります。
この翻訳作業は、社長にしかできない
なぜなら、
- 何を優先するか
- どこで妥協するか
- どこで勝負するか
は、社長の価値観そのものだからです。
数字を作ることは任せられても、
数字に意味を与えることは、任せられない。
成長戦略と事業計画を分けた瞬間、経営は分断される
戦略が言葉だけになると、
- 現場に伝わらない
- 数字に反映されない
計画が数字だけになると、
- 意図が伝わらない
- 修正できない
この分断こそが、
「成長しているのに不安が消えない」
経営の正体です。
今日の一言
成長戦略は、数字になることで現実になる。
事業計画は、言葉を失った瞬間に意味を失う。
この二つは、最初から最後まで一体である。
