
――社長の仕事は、決めること・第10回――
社長の決断は会社のDNAになる
社長が下す判断は、単なる業務上の選択ではありません。
それは会社の文化や方向性、さらには成長可能性に直結する「DNA」とも言える存在です。
例えば、価格戦略ひとつを考えてみましょう。安売りを続けて顧客を囲い込む判断を続けると、会社は「低価格競争型」の文化になり、社員も利益よりも売上を優先する思考に染まります。一方で、価値提供を優先して適正価格を設定する判断を続けると、利益体質の会社へと変わっていきます。
つまり、社長の判断の積み重ねこそが、会社の未来そのものを作るのです。
決断の質が生む二つの結果
決断の質によって、会社には二つの結果が生まれます。
1. 成長の加速
- 明確な判断基準がある
- 数字や情報で裏付けされている
- 社員に理解され、行動に結びつく
こうした決断は、会社の成長を加速させます。
事例:製造業のB社では、社長が設備投資の判断を迅速に行い、生産ラインを最新化。結果、競合より半年早く新製品を市場投入でき、売上が前年比120%に伸びました。
2. 停滞や損失
- 感覚や気分で判断
- 根拠のない先送り
- 社員が理解できない判断
こうした決断は、停滞や損失を招きます。
事例:飲食チェーンC社では、新規店舗展開を先送りしてきたため、競合が先に市場を抑え、開店しても集客に苦戦。結果、計画していた売上の30%しか達成できませんでした。
決断の質を高める3つの要素
では、社長が下す判断の質を高めるには、何が必要でしょうか。
1. 正しい情報の取得
- 市場データ、顧客ニーズ、財務状況などを幅広く集める
- 不確定要素はシナリオ分析で補う
2. 判断基準の明確化
- 「利益優先か」「成長優先か」など、価値観を明確にする
- 判断の軸がぶれないことで、社員も意思決定に迷わない
3. スピードとタイミング
- 適切な情報で決断を先延ばしにしない
- 早すぎず、遅すぎず、最適なタイミングで実行する
意思決定を数字で支える
決断の質を上げるには、管理会計やKPIを活用することが有効です。
数字で裏付けることで、判断の正当性を説明でき、社員やステークホルダーも納得しやすくなります。
事例:E社の社長は、新規事業の立ち上げを迷っていましたが、想定売上・利益・回収期間を数値で整理。結果、ROI(投資利益率)が十分高いことが確認でき、決断を下しました。立ち上げ後1年で投資回収を達成し、判断の質が会社の成果に直結しました。
決断をチームで支える方法
社長がすべてを一人で判断する必要はありません。重要なのは、「質の高い意思決定の枠組み」を作ることです。
- チームで情報を集める
- シナリオを作成し、予測を共有
- 社長が最終判断を下す
こうすることで、社長の決断がより正確になり、リスクも管理しやすくなります。
判断が遅れることのリスク
決断を先延ばしすることも、会社の未来を大きく左右します。
- 機会損失:競合が先に市場を抑える
- 金銭的損失:投資や改善が遅れる
- 社員の不安:方向性が不明確でモチベーション低下
「決断の質」と「決断のスピード」はセットで考えるべきなのです。
判断力を鍛える習慣
- 毎週の意思決定リストを作る
- 今週決めるべきこと、来週までに情報収集することを整理
- 判断基準を明文化する
- 利益、成長、リスク許容度など、軸を明確化
- 小さく試す文化を持つ
- 小規模で実験 → 成功・失敗の影響を小さく抑える
社長の決断力は、未来を形作る
社長の決断は、日々の小さな選択の積み重ねです。その一つひとつが会社の方向性を決め、文化や成長の土台になります。
- 適切な情報
- 明確な基準
- 数字で裏付けた判断
これらを意識するだけで、決断の質は大きく向上します。
今日の一言
社長の決断の質こそが、会社の未来を決める。
迷うことはあっても、数字と基準で支えた決断は、
会社を成長軌道に乗せる最強の武器である。
