
――限界利益を制する者が、経営を制する・第1回――
「売上を上げよう」が、なぜ空回りするのか
経営の現場で、もっともよく聞く言葉。
それは間違いなく、これです。
「とにかく売上を上げよう」
売上が上がれば、
利益も増えて、
会社も楽になる。
一見、何の問題もない正論に見えます。
でも、現実はどうでしょうか。
- 売上は伸びている
- なのに、社長は忙しい
- 利益は思ったほど残らない
- 資金繰りは楽にならない
こうした会社を、あなたも見たことがあるはずです。
このとき、社長はこう感じています。
「頑張っているのに、なぜ楽にならないんだろう?」
その違和感の正体こそが、
**“売上でも利益でもない、もう一つの数字”**です。
利益を見ているのに、判断を間違える理由
では、「売上」ではなく
「利益」を見ればいいのでしょうか。
実際、多くの社長はこう言います。
「いや、うちは利益をちゃんと見てます」
確かに、
損益計算書の一番下にある
営業利益・経常利益は見ている。
でも、それでも判断を誤る。
なぜか。
理由はとてもシンプルです。
利益は“結果”であって、
判断に使うには遅すぎる数字だから
利益が見えるのは、
すべてが終わったあと。
- 値決め
- 仕事の受け方
- 人の使い方
そのすべての結果が、
最後に「利益」として表れます。
つまり、利益を見て考えている時点で、
もう打てる手は限られているのです。
社長が最初に覚えるべき数字の正体
では、
社長が最初に覚えるべき数字は何なのか。
それが、今回のテーマ。
限界利益
です。
あまり聞き慣れない言葉かもしれません。
でも、難しく考える必要はありません。
限界利益とは、
一言で言うとこうです。
「1つ売れたときに、会社にどれだけ残るか」
売上から、
その売上を得るために直接かかったお金を引いたもの。
これが、限界利益です。
限界利益は「会社のエンジン音」
限界利益は、
会社の状態をとても正直に映します。
売上が増えるたびに、
- 限界利益がしっかり増える会社
- 限界利益がほとんど増えない会社
この差が、
後からとてつもなく大きな差になります。
限界利益は、言わば
会社がアクセルを踏んだときの“エンジン音”
売っているのに、
音が大きくならない。
それは、
どこかに無理があるサインです。
ケーススタディ①:売上2倍でも苦しくなった会社
ここで、実際によくある例を。
あるサービス業の会社。
売上は、2年でほぼ2倍になりました。
- 新規案件を積極的に受注
- 単価は少し低め
- とにかく数をこなす
数字だけ見れば、成長企業です。
ところが社長は言います。
「前より、明らかに苦しいんです」
なぜか。
理由は明確でした。
- 1件あたりの限界利益が低い
- 人を増やさないと回らない
- 固定費が増える
- 利益はほとんど残らない
売上は増えた。
でも、限界利益が薄かった。
つまり、
アクセルを踏んでも、
エンジンが回っていなかった
のです。
限界利益を見ると、判断が変わる
限界利益を意識し始めると、
社長の判断は、驚くほど変わります。
例えば、
- 「この仕事、売上はいくらか?」
ではなく - 「この仕事、限界利益はいくら残るか?」
という問いに変わる。
すると、
- 受ける仕事
- 断る仕事
- 値上げすべき仕事
が、自然に見えてきます。
ケーススタディ②:売上を落として、利益が増えた会社
別の会社の話です。
この会社は、
毎月かなりの数の案件を抱えていました。
でも、社長はいつも疲弊していました。
限界利益を計算してみると、
- 忙しい案件ほど、限界利益が低い
- 手間の少ない案件ほど、限界利益が高い
という構造が見えました。
そこで社長は、
- 利益の薄い仕事を整理
- 単価を見直し
- 件数を減らした
結果、
- 売上は少し下がった
- でも、利益は増えた
- 現場に余裕が生まれた
売上では見えなかったものが、
限界利益では、はっきり見えたのです。
なぜ「最初に」限界利益なのか?
ここで大事なポイントがあります。
限界利益は、
- 売上よりも
- 利益よりも
判断の“手前”にある数字です。
- 価格を決める前
- 仕事を受ける前
- 投資を考える前
このタイミングで使える。
だから、
社長が最初に覚えるべき数字
なのです。
限界利益は「難しい管理会計」ではない
ここで、身構える必要はありません。
限界利益は、
- 高度な分析
- 複雑な理論
ではありません。
必要なのは、
- この売上に対して
- 直接いくら出ていくか
それだけ。
完璧でなくていい。
7割でいい。
大事なのは、
限界利益という“物差し”を持つこと
です。
限界利益を知らない経営は「体重計のないダイエット」
限界利益を知らずに経営することは、
体重計なしでダイエットするようなものです。
- 頑張っている
- 動いている
- でも、成果が分からない
そして、ある日突然こう思う。
「こんなはずじゃなかった」
限界利益は、
そのズレに早く気づかせてくれます。
今日の一言
売上でも、最終利益でもない。
社長が最初に持つべき数字は、
「1つ売れたとき、いくら残るか」だ。
