
数字を見ているのに、なぜ判断がラクにならないのか
「毎月、数字は見ています」
「試算表も、売上表も、ちゃんと目を通しています」
それでも多くの社長が、こう感じています。
- 見たはずなのに、何を判断すればいいか分からない
- 数字を見たあと、むしろ頭が重くなる
- 結局、感覚で決めてしまう
もし心当たりがあるなら、
それはあなたの数字力が低いからではありません。
“見る数字が多すぎる”こと自体が、判断を鈍らせている
ただ、それだけです。
今回のテーマは、
意思決定構造設計の中でも、とくに重要なポイント。
「社長が毎月“必ず見るべき数字”を、極限まで絞る」
という話です。
「全部見れば安心」は、社長を一番疲れさせる
まず、はっきりさせておきたいことがあります。
社長が見るべき数字は、
現場担当者が見るべき数字とは違う。
これは、非常に重要な前提です。
よくある勘違い
- 売上の内訳を全部把握しなければいけない
- 経費の明細まで分かっていないと不安
- 数字を細かく見ている=経営している
しかし実際には、
- 情報量が多すぎる
- 判断の優先順位が分からなくなる
- 「で、結局どうする?」が決まらない
という状態に陥りがちです。
社長の役割は、
分析担当ではなく、意思決定者。
そのために必要なのは、
「詳細」ではなく「方向が分かる数字」です。
判断できる社長は、数字を「質問」として見ている
数字を見るのが上手な社長には、共通点があります。
それは、
数字を“答え”として見ていないという点です。
彼らは、数字をこう使っています。
- この数字は、何を問いかけているのか?
- 先月と比べて、どこがズレたのか?
- このまま行くと、何が起きるのか?
つまり、
数字を「判断の入口」にしているのです。
そのためには、
毎月見る数字は「少数精鋭」である必要があります。
社長が毎月見るべき数字は「3つの箱」で考える
ここからが本題です。
社長が毎月見る数字は、
次の3つの箱に分けて考えると、驚くほどシンプルになります。
- 今月、ちゃんと儲かったか?
- この先、資金は持つか?
- 戦い方は、ズレていないか?
この3つに答えられる数字だけを、毎月見ればいいのです。
順に見ていきましょう。
箱①|今月、ちゃんと儲かったか?
最初の箱は、とてもシンプルです。
「今月の活動は、利益を生んだのか?」
ここで社長が見るべきは、
売上ではありません。
見るべき数字はこれ
- 営業利益(または粗利 − 固定費)
なぜなら、
- 売上が高くても、儲かっていない会社は多い
- 利益が出ていなければ、判断はすべて修正対象
だからです。
ケーススタディ:売上は伸びているのに、苦しい会社
売上は前年同月比120%。
一見、順調そうな会社。
しかし中身を見ると、
- 値引きが増えて粗利率が低下
- 人を増やして固定費が増加
- 利益は前年割れ
この状態で社長が
「売上が伸びているから大丈夫」と判断してしまうと、
手遅れになります。
まずは、
「利益が出たかどうか」だけを見る。
これが、社長数字の第一歩です。
箱②|この先、資金は持つか?
2つ目の箱は、
社長にしか守れない領域です。
それが、資金(キャッシュ)。
利益が出ていても、
資金が尽きれば会社は止まります。
見るべき数字はこれ
- 現預金残高
- 月間の固定支出額(ざっくりでOK)
この2つが分かれば、
「今の状態で、何カ月持つか?」
という問いに答えられます。
なぜ、社長は資金を“見ないふり”してしまうのか
- 見ると不安になる
- 対策を考えなければならない
- できれば現実逃避したい
その気持ちは、とても自然です。
しかし、
資金を見ないことが、一番リスクが高い。
社長が毎月、
「残り何カ月分の体力があるか」を把握しているだけで、
判断の質は大きく変わります。
箱③|戦い方は、ズレていないか?
3つ目の箱は、
少し抽象度が上がります。
「今の数字は、戦略通りか?」
という視点です。
ここで見るべきは、
細かいKPIの山ではありません。
見るべき数字はこれ
- 自社が一番大事にしている“1つの指標”
たとえば、
- 客単価
- 粗利率
- リピート率
- 稼働率
など、
「この数字が崩れたら、戦い方が間違っている」
と言えるものを1つだけ選びます。
ケーススタディ:数字が多すぎて、何も見えなくなった例
ある会社では、
- 売上
- 件数
- 客単価
- 稼働率
- 利益率
すべてを毎月チェックしていました。
結果どうなったか。
- どれが重要か分からない
- 毎回「様子見」になる
- 行動が変わらない
そこで、
「粗利率」だけを見るようにしたところ、
- 値引き判断が変わる
- 商品構成が変わる
- 利益が安定する
という変化が起きました。
社長数字は、“少ないからこそ、効く”のです。
「見る数字」を決めると、「聞く質問」が変わる
毎月見る数字が決まると、
社長の質問が変わります。
- なぜ今月は利益が下がった?
- この固定費、いつ回収できる?
- この指標が崩れた理由は?
すると現場も、
- 数字を意識して報告する
- 感覚ではなく理由を考える
- 判断基準が共有される
こうして、
意思決定構造が会社に根付き始めるのです。
実践ワーク|あなたの「社長数字」を決める
今回のワークです。
次の問いに、紙に書いて答えてみてください。
- 今月、利益が出たかを判断する数字は何か?
- 会社の体力を測る数字は何か?
- 戦略ズレを察知する“1つの指標”は何か?
この3つが決まれば、
あなたが毎月見る数字は、もう十分です。
数字は、社長を縛るものではない
最後に、とても大切なことを。
数字は、
社長を管理するためのものではありません。
社長を、迷いから解放するための道具です。
- 見る数字を減らす
- 判断を速くする
- 考える時間を増やす
これが、
意思決定構造設計における「数字の役割」です。
今日の一言
社長が見る数字は、
「全部」ではなく、
「決断に足りるだけ」でいい。
その一歩が、
社長の仕事を、ぐっと軽くします。
