
――増やす前に、止まって考えろ・第3回――
「設備投資は会社を成長させる」と思っていませんか?
社長の多くが、設備投資に対してこう考えます。
- 「最新の機械を導入すれば、仕事が早くなる」
- 「新しい設備があれば売上が増えるはず」
- 「周りの会社もやっているからうちも必要」
確かに、適切な設備投資は会社の成長を加速させます。
しかし、計画や数字を無視した投資は、会社を圧迫する最大の原因になります。
驚くほど多くの中小企業が、同じ失敗パターンに陥っているのです。
設備投資で陥る典型パターン
- 売上見込みが楽観的すぎる
「この設備を入れれば売上が倍増する」と考えるが、現実は未達成。 - 資金繰りを考えない
設備代金や借入返済をキャッシュフローに落とし込まず、現金が足りなくなる。 - 利益計算を無視する
設備を導入しても、追加コスト(維持費・人件費)が利益を圧迫。 - 機会費用を考えない
投資に資金を使ったことで、他の成長機会を逃す。
ケーススタディ①:売上が伸びず赤字になった製造業
ある製造業の社長は、受注量増加に備え最新機械を導入。
- 設備費用:1,000万円
- 借入返済:毎月10万円
- 予想売上増:月50万円
しかし、実際の売上増は月15万円にとどまり、
追加コストや返済で利益はマイナスに。
社長は「設備が悪いのではなく、市場が想定と違った」と考えましたが、
数字で計画していれば避けられた失敗です。
設備投資を判断する3つの数字
社長が設備投資を検討する際、注目すべき数字は次の3つです。
1. 回収期間(Payback Period)
- 設備費 ÷ 追加限界利益
- 何カ月で投資額を回収できるかを計算
2. 限界利益(Contribution Margin)
- 売上増分から、追加変動費を引いた額
- 設備導入によって、利益が実際に増えるか
3. キャッシュフロー影響
- 設備代金支払いと借入返済のタイミング
- 資金繰りが逼迫しないか
ケーススタディ②:数字で判断して成功した例
ある飲食チェーンでは、厨房機器を追加導入するか検討。
- 追加機器費:200万円
- 予想売上増:月30万円
- 追加変動費:月5万円
回収期間=200 ÷ (30-5) = 8カ月
- さらにキャッシュフローをシミュレーションした結果、
資金繰りは十分余裕あり。
結論:設備投資は合理的で、即導入決定
数字を押さえたことで、感覚では「高額すぎる」と迷った設備も安心して導入できました。
設備投資で陥りやすい心理的罠
- 最新機器欲しさの衝動買い
「他社が導入しているから」と焦って決める - 社長の思い込み売上
「導入すれば売上が2倍」と感覚で予測 - 現場社員への依存
「現場が欲しがっているから」と感情で判断
どれも数字を確認すれば簡単に避けられる罠です。
設備投資は「感情ではなく数字で決める」
設備投資を決めるとき、社長は以下のプロセスを踏むべきです。
- 現状の利益構造と限界利益を確認
追加投資で利益が本当に増えるか - 回収期間と資金繰りをシミュレーション
返済負担で会社が苦しくならないか - 投資の優先順位をつける
他の成長機会より優先する価値があるか
数字を可視化して判断すれば、感情に流されることはありません。
ケーススタディ③:優先順位を間違えた例
同じく製造業A社は、
- 設備投資:500万円
- 追加売上予測:月20万円
- キャッシュ残高:100万円
「他社が導入している」という理由だけで投資を決定。
結果、設備は導入されたものの、資金不足で仕入れが滞り、売上は減少。
回収どころか、短期的に会社が苦しくなりました。
今日の一言
設備投資は、売上や感情ではなく数字で判断せよ。
回収期間、限界利益、キャッシュフローを押さえることで、
失敗しない設備投資ができる社長だけが、会社の成長を安全に加速できる。
