
――限界利益を制する者が、経営を制する・第2回――
「その判断、何を基準にしていますか?」
社長に、こんな質問をすると
多くの方が一瞬、言葉に詰まります。
「その判断、何を基準にしていますか?」
- 値上げするかどうか
- この仕事を受けるか断るか
- 人を増やすかどうか
- 広告を打つかどうか
経営には、判断の連続があります。
でも、その判断基準を
はっきり言語化できる社長は、
実はそれほど多くありません。
多くの場合、返ってくる答えは、
- 「今までそうしてきたから」
- 「忙しいから」
- 「売上になるから」
- 「なんとなく不安だから」
どれも、間違いではありません。
でも、数字としての軸がない。
ここに、経営が不安定になる原因があります。
限界利益を知らない判断は「地図なしの運転」
限界利益を知らずに経営判断をすることは、
例えるならこうです。
地図もナビも持たずに、
とりあえずアクセルを踏む運転
- 進んでいる感じはする
- でも、どこへ向かっているか分からない
- 気づいたら、ガソリンが減っている
売上が増えても、
利益が出ていても、
安心できない理由はここにあります。
限界利益は、
経営における「方向感覚」を与えてくれる数字です。
なぜ「売上があるのに苦しい」のか?
多くの社長が、
こんな経験をしています。
- 売上はそれなりにある
- 仕事も忙しい
- なのに、なぜかお金が残らない
この状態で、
社長はさらにこう考えます。
「もっと売らなきゃダメだ」
でも、その判断が
状況を悪化させることがある。
なぜか。
答えはシンプルです。
限界利益が低いまま、
売上だけを増やしているから
ケーススタディ①:忙しさが増えただけの値下げ判断
ある会社の話です。
競合が増え、
価格競争が激しくなった業界。
社長は悩んだ末、
こう判断しました。
「少し値下げして、仕事量でカバーしよう」
結果、
- 受注数は増えた
- 現場はフル稼働
- 社長も現場に出ずっぱり
でも、月末の数字を見ると、
- 利益はほとんど増えていない
- むしろ、資金繰りがきつくなった
なぜか。
値下げによって、
1件あたりの限界利益が大きく減っていたのです。
限界利益を知らなければ、
「売上が増えている=正しい判断」
に見えてしまう。
でも実際は、
会社の体力を削る判断
だった、というわけです。
限界利益は「判断のブレーキ」になる
限界利益を把握していると、
判断の質が変わります。
例えば、値下げの話。
限界利益を知らないと、
- 「売上が落ちるのは怖い」
- 「他社も下げている」
- 「仕事がなくなるよりマシ」
という感情で判断しがちです。
でも、限界利益が分かっていると、
- この値下げで
- 1件あたり、いくら減るのか
- 何件売らないと取り戻せないのか
が、見えてきます。
その瞬間、
「これは、やってはいけない判断だな」
と、冷静にブレーキが踏めるようになります。
ケーススタディ②:広告を打つかどうかの判断
次は、広告の例です。
「広告を出せば売上は増えそうだ」
この判断自体は、間違っていません。
でも、限界利益を知らずに出稿すると、
こういうことが起こります。
- 問い合わせは増えた
- 受注もそこそこ
- でも、広告費が重い
結果、
「忙しくなったのに、手元にお金が残らない」
一方、限界利益を見てから判断した会社では、
- 1件あたりの限界利益を把握
- 広告1件獲得あたりの許容コストを算出
- それを超えない範囲で出稿
結果、
- 広告は「コスト」ではなく
- 利益を生む投資になりました。
同じ広告でも、
判断の質がまったく違います。
「利益が出ているから大丈夫」の落とし穴
よくある危険な言葉があります。
「今は利益が出ているから大丈夫」
この言葉が出たとき、
要注意です。
なぜなら、
- 今の利益は
- 過去の判断の結果
だからです。
これからの判断が正しいかどうかは、
限界利益を見なければ分からない。
利益だけを見ていると、
- 気づいたときには
- 手遅れになっている
ということが、普通に起こります。
限界利益は「未来を決める数字」
限界利益が示すのは、
- 過去の成績
ではなく - これからどう動くべきか
です。
- この仕事を増やすべきか
- この商品は育てるべきか
- このやり方は続けるべきか
それらすべてに、
答えをくれる数字です。
完璧な数字はいらない
ここで、大事なことを一つ。
限界利益は、
完璧である必要はありません。
- 原価の細かい配賦
- 厳密な計算
それよりも、
- 大きくズレていないか
- 判断を誤らない水準か
これが重要です。
7割の精度でいい。
でも、ゼロはダメ。
知らずに判断することが、
一番のリスクです。
限界利益を知らない経営は「感覚経営」になる
限界利益を持たないと、
経営はどうしても、
- 勘
- 経験
- 気合
に頼ることになります。
それが悪いわけではありません。
でも、
勘と数字が噛み合ったとき、
経営は一気に安定する
限界利益は、
その橋渡しをしてくれる存在です。
今日の一言
限界利益を知らないままの判断は、
会社の体力を賭けた“ギャンブル”になる。
判断する前に、まず「1件あたり、いくら残るか」を見よ。
