
「集客は、現場や外注先に任せています」
「自分は数字の最終結果だけを見ています」
社長の方と話していると、よく出てくる言葉です。
決して間違っているわけではありません。
限られた時間の中で、すべてを自分でやることは不可能です。
ただし、ここに集客が迷走する最大の分岐点があります。
それは、
集客を“作業”として捉えているか、
“社長業(経営判断の対象)”として捉えているか
という違いです。
シリーズ最終回となる今回は、
集客構造設計を、社長業の中でどう位置づけるべきかを整理していきます。
社長が集客に関わると、なぜ現場は混乱するのか
まず、よくある誤解から整理しましょう。
「社長が集客に口を出すと、現場が混乱する」
これは半分正解で、半分間違いです。
混乱するケースの多くは、
社長がやるべきでないレイヤーに入り込んでいる場合です。
例えば、
- 投稿文の細かい表現を直す
- 広告バナーの色を指示する
- SNSの更新頻度を日替わりで変える
これらは、完全に“作業レイヤー”です。
ここに社長が入り込むと、現場は振り回されます。
一方で、社長が本来関わるべきなのは、
- どの顧客を取りに行くのか
- どの行動を成果と定義するのか
- 何をもって「良い集客」と判断するのか
という、構造と判断のレイヤーです。
ここを放置してしまうと、
現場も外注先も「正解が分からないまま動く」ことになります。
集客構造設計は「経営の翻訳作業」である
集客構造設計を一言で言うなら、
それは経営方針を、行動に翻訳する作業です。
- どんなお客さんと付き合いたいのか
- どんな強みで選ばれたいのか
- どこまでの価格帯・関係性を許容するのか
これらは、完全に経営の話です。
ところが、多くの会社では、
この翻訳をせずに、いきなり手段に入ります。
- とりあえずSNS
- とりあえず広告
- とりあえずHP改善
結果、施策は増えるが、方向性は定まらない。
これが、本シリーズで繰り返し見てきた「迷走」の正体です。
落とし穴|集客を「売上を作る装置」としか見ていない
社長が集客から距離を取ってしまう背景には、
こんな認識があります。
集客は、売上を作るための手段
もちろん、間違いではありません。
しかし、この見方だけだと、集客は短期成果に引っ張られます。
- 今月の問い合わせ数
- 今期の売上
- CPA(獲得単価)
これらだけを見ると、
どうしても「今効く施策」しか選べなくなります。
社長業としての集客構造設計では、
もう一段上の役割を持たせます。
それは、
会社の戦い方を固定化する装置
としての役割です。
どんな顧客が集まり、
どんな相談が増え、
どんな案件が当たり前になるのか。
これは、集客構造によって、かなりの部分が決まってしまいます。
ケーススタディ|社長が関与レイヤーを変えた会社
ある会社では、以前こんな状態でした。
- 集客はすべて外注
- 月次レポートは確認
- 数字が悪いと「何とかして」と言う
外注先は、指示が曖昧なまま改善を繰り返し、疲弊していました。
そこで社長が変えたのは、
「口出しの量」ではなく「口出しの場所」です。
具体的には、
- どんな顧客の問い合わせなら成功か
- 問い合わせが来なくてもOKな月の定義
- 改善判断をする数字と、その基準
この3点だけを明確にしました。
結果、
- 外注先は迷わず動ける
- 社長は日々の作業から解放される
- 改善は淡々と積み上がる
集客は、社長が現場に張り付かなくても、
社長業として機能し始めたのです。
社長業としての集客構造設計、3つの責任
集客を社長業として位置づけると、
社長の役割は次の3つに整理されます。
1. 取らない客を決める責任
集客で最も重要なのは、
「誰を集めるか」ではなく
「誰を集めないか」です。
ここを決められるのは、社長しかいません。
短期売上に引っ張られると、
本来合わない客も集めてしまいます。
その歪みは、必ず後から組織に返ってきます。
2. 判断基準を決める責任
- この数字ならOK
- ここを超えたら見直す
この基準がなければ、
集客は永遠に「感覚勝負」になります。
判断基準を決めることは、
意思決定の設計そのものです。
3. 続ける前提を作る責任
誰が、どの頻度で、何を見るのか。
忙しい月でも、最低限何はやるのか。
これは作業ではなく、設計です。
この設計をするのが、社長業です。
「任せる」と「放置する」は、まったく違う
ここまで読むと、
「やはり社長が全部見るべきなのか」と感じるかもしれません。
そうではありません。
社長業としての集客構造設計とは、
任せるために、決めることです。
- 任せる範囲
- 任せない判断
- 確認するポイント
これを決めて初めて、
任せることが“経営判断”になります。
決めずに任せるのは、放置です。
放置された集客は、必ず迷走します。
集客構造設計は「未来の社長業」を楽にする
最後に、少し長い目の話をします。
集客構造設計を社長業として位置づける最大の価値は、
将来の社長の仕事を減らすことにあります。
- 毎回同じ判断をしなくていい
- 感覚で悩まなくていい
- 人が変わっても回る
これは、組織が大きくなるほど効いてきます。
集客を
「その場しのぎの施策」
から
「会社の戦い方を支える構造」
に変えること。
それが、社長業としての集客構造設計です。
今日の一言
集客を社長業にするとは、手を動かすことではない。
「何を判断し、何を任せるか」を決め切ることだ。
