― 黒字なのに、なぜ苦しい?|第4回目(全4回) ―
「黒字なのに苦しい」は、もう偶然ではない
「決算書は黒字です」
「税理士にも問題ないと言われています」
「赤字じゃないのに、なぜか楽にならないんです」
ここまでこのシリーズを読んできた社長なら、
この違和感が“気のせいではない”ことに、もう気づいているはずです。
黒字なのに苦しい。
忙しいのに報われない。
これは運や景気の問題ではありません。
“見ていない数字がある”
それだけです。
決算書を見ているのに、数字を見ていない
少し挑発的な言い方をします。
黒字でも苦しい会社ほど、
「数字を見ているつもりで、実は見ていない」
多くの社長はこう言います。
「数字はちゃんと見てますよ」
「試算表も毎月もらっています」
でも、その“見ている数字”は、ほとんどの場合ここです。
・売上
・利益
・税金
・前年との比較
どれも大切です。
ですが、それだけでは経営は楽になりません。
黒字でも苦しい会社が共通して見落とす「ある数字」
結論から言います。
黒字でも苦しい会社が、必ず見落としているのは――
「お金の動きのスピードとタイミング」です。
もう少し具体的に言うと、
・いつ入ってきて
・いつ出ていき
・どれくらいの期間、社長が立て替えているのか
この感覚が、数字として見えていない。
利益は「結果」、キャッシュは「現実」
ここで、改めてとても大事な整理をします。
利益とは?
・計算上の成果
・一定期間の成績表
キャッシュとは?
・今、実際に使えるお金
・支払いに耐えられる体力
黒字でも苦しい会社は、
利益は出ているが、キャッシュが追いついていない状態です。
【ケース①】売上が伸びるほど、苦しくなる会社
よくあるケースです。
・売上は右肩上がり
・取引先も増えている
・でも、資金繰りは悪化している
なぜでしょうか?
理由はシンプルです。
✔ 売掛金の回収が遅い
✔ 仕入れや外注は先払い
✔ 人件費は毎月固定
つまり、
仕事が増えるほど、立て替えが増える構造
これを数字で把握していないと、
社長はこう感じます。
忙しいのに、なぜかお金がない…
見落とされがちな数字①:売掛金の“残高”と“回転”
売掛金は、決算書にも載っています。
でも、多くの社長はこう見ています。
「ちゃんと回収できるから大丈夫」
ここで見るべきは、額ではありません。
・何ヶ月分たまっているか
・売上に対して多すぎないか
たとえば、
・月商500万円
・売掛金1,500万円
これは、3ヶ月分を立て替えているということです。
社長が銀行の代わりをしている状態です。
見落とされがちな数字②:固定費の「重さ」
固定費は、利益が出ていると見逃されがちです。
・人件費
・家賃
・リース
・システム費
毎月必ず出ていくお金。
黒字でも苦しい会社は、
「売上が落ちたときの耐久力」を見ていません。
✔ 何ヶ月、売上ゼロでも耐えられるか
✔ 固定費を払うだけのキャッシュがあるか
この視点がないと、
不安はずっと消えません。
見落とされがちな数字③:社長自身の取り分
意外と多いのが、このケースです。
・会社は黒字
・でも社長の給料は後回し
・ボーナスもほぼない
これは美談ではありません。
社長の生活が安定していない会社は、長く続きません。
管理会計では、
・社長はいくら取るべきか
・そのために必要な利益はいくらか
ここまで考えます。
「見落としている数字」は、未来の判断材料
ここで重要なのは、
見落としている数字 =
社長が判断に使っていない数字
だということです。
・売上を増やすべきか
・仕事を減らすべきか
・値上げすべきか
これらの判断は、
利益だけでは決められません。
【ケース②】数字を見直して「安心」を手に入れた社長
ある小規模事業の社長の話です。
・毎年黒字
・でも常に資金繰りに不安
・夜中に通帳を見るのが癖
管理会計で整理したのは、
✔ 売掛金の回収サイト
✔ 固定費と最低必要売上
✔ 月末残高の推移
結果、分かったのは、
利益ではなく、入金タイミングが問題だった
回収条件を見直しただけで、
✔ 資金繰りが安定
✔ 心配事が激減
✔ 経営判断が落ち着いた
社長はこう言いました。
「黒字の意味が、初めて分かりました」
会計は“説明”、管理会計は“安心”
このシリーズのテーマに戻ります。
会計は、
✔ 過去を説明するための数字
管理会計は、
✔ 未来を安心して選ぶための数字
黒字なのに苦しい会社は、
説明はできているが、安心できていない。
その原因は、
見るべき数字を一段深く見ていないだけなのです。
今日の一言
黒字かどうかより、
「いつ・どれだけ残るか」を知らない限り、
社長の不安は消えない。
