
―忙しさの正体を、そろそろ直視しよう―
「去年より忙しいのに、なぜか楽にならない」
「売上は確実に伸びているんです」
「問い合わせも増えて、正直かなり忙しいです」
「なのに、なぜか前より余裕がないんですよね…」
この言葉も、前回と同じくらい、よく耳にします。
そして多くの社長は、ここでこう考えます。
「もっと売らなきゃダメなんだ」
「まだ頑張りが足りないんだ」
でも、本当にそうでしょうか。
今回は、
「頑張って売っているのに、利益が残らない理由」を、
努力論ではなく、構造の話として解きほぐしていきます。
忙しさ=成長、と思い込んでいませんか?
まず、はっきりさせておきたいことがあります。
忙しさと、利益は、ほとんど関係がありません。
これは、感覚的には受け入れにくいかもしれません。
なぜなら、私たちはずっとこう教えられてきたからです。
- 忙しい=求められている
- 忙しい=売れている
- 忙しい=成長している
しかし、経営の現場では、
「忙しい会社ほど、利益が薄い」
という現象が、珍しくありません。
ケーススタディ|卸売業C社の話
C社は、取引先も多く、毎日出荷に追われる会社です。
- 売上は前年比110%
- 取引先も増加
- 社内は常にバタバタ
しかし決算を見ると、
利益はほとんど横ばい。
むしろ、社長の疲労感だけが増していました。
なぜでしょうか。
理由は単純でした。
- 利益の薄い取引ほど、量が多い
- 手間のかかる仕事ほど、売上が立つ
- 忙しさを生む仕事と、利益を生む仕事が一致していない
つまり、
「売れている」と「儲かっている」が別物だったのです。
頑張りすぎる社長ほど、ハマる落とし穴
利益が残らない会社には、
ある共通した“思考のクセ”があります。
それは、
「売上を増やせば、いつか利益はついてくる」
という考え方です。
これは、決して怠慢ではありません。
むしろ、誠実で、責任感の強い社長ほど、
この考えに縛られやすい。
でも、ここに大きな誤解があります
売上には、性質の違いがあります。
- 売れば売るほど、楽になる売上
- 売れば売るほど、苦しくなる売上
この違いを無視して、
「とにかく売上を積み上げる」
という判断を続けると、どうなるか。
頑張れば頑張るほど、
利益が削られていく構造が完成します。
「利益が残らない売上」には、共通点がある
ここで一度、
「頑張っても報われない売上」の特徴を整理してみましょう。
特徴①|単価が低く、量で稼ぐ前提になっている
- 値上げは怖い
- 周りも安い
- 断ったら仕事がなくなりそう
こうして、
薄利多売が“当たり前”になります。
結果、
- 売上は増える
- でも、忙しさも比例して増える
- 利益は、ほとんど増えない
特徴②|手間や負荷が価格に反映されていない
- 急ぎ対応
- イレギュラー対応
- ついで作業
これらが、
「サービスだから」「関係性だから」
という理由で、すべて無償化されていきます。
気づいたときには、
一番手のかかる仕事ほど、利益が薄い
という状態になっています。
特徴③|「断らない」ことが美徳になっている
- 来た仕事は基本断らない
- 社長自ら穴埋めする
- 無理が常態化している
これは一見、立派に見えます。
しかし経営として見ると、
仕事を選ばない=利益構造を放棄している
状態です。
なぜ社長は、構造ではなく「気合」で乗り切ろうとするのか
ここで、少し厳しい話をします。
利益が残らない理由を
「忙しいから」「景気が悪いから」「人が足りないから」
と外に求めている限り、構造は変わりません。
なぜなら、
それらはすべて“結果”だからです。
本当の原因は、もっと手前にある
- どんな仕事を取ると決めたのか
- どんな条件を飲むと決めたのか
- どこまでを“サービス”にすると決めたのか
これらはすべて、
社長の判断です。
ただし、多くの場合、
社長自身が「決めている自覚」がありません。
- なんとなく
- これまでそうしてきたから
- 断るのが怖いから
こうした“無意識の判断”が積み重なり、
今の利益構造が出来上がっています。
「頑張らないと回らない会社」は、危険信号
ここで、一つの基準を提示します。
社長が頑張らないと利益が出ない会社は、
すでに構造的に無理がある。
これは、才能や努力の問題ではありません。
- 社長が現場に出ないと回らない
- 社長が詰めないと数字が合わない
- 社長が無理をして、ようやく黒字
この状態は、
社長の体力を利益に変換しているだけです。
長くは続きません。
利益が残る会社は、何が違うのか?
では逆に、
「それほど無理していないのに、利益が残る会社」は、
何が違うのでしょうか。
共通点は、たった一つです。
最初から、
「頑張らなくても利益が出る形」を前提にしている
- 仕事を選んでいる
- 条件を揃えている
- 手間と価格のバランスを意識している
つまり、
利益を、後から何とかしようとしていないのです。
次にやるべきことは「もっと売る」ではない
ここまで読んで、
「じゃあ、どうすればいいんだ?」
と思われたかもしれません。
安心してください。
いきなり値上げをしろ、仕事を断て、
という話ではありません。
次にやるべきことは、ただ一つです。
「どの売上が、
自分たちを忙しくしているのか」を知ること
そして、
「その忙しさは、
利益につながっているのか」を疑うこと
この視点を持つだけで、
社長の判断は、確実に変わり始めます。
次回は、
「売上を細かく分解しなくても、
“構造”として捉える方法」
について掘り下げていきます。
今日の一言
忙しさは、努力の証明ではない。
それは、利益構造からの“警告”である。
ここに気づけた社長から、
経営は静かに、しかし確実に変わり始めます。
