
「で、あなたの会社は“何で”売上を作っていますか?」
突然ですが、少し意地悪な質問をします。
「あなたの会社の売上は、どのように生まれていますか?」
この問いに対して、
スラスラと一文で答えられる社長は、実はそれほど多くありません。
多くの場合、返ってくるのはこんな答えです。
- 「えーっと、商品AとBがあって、最近はCも始めて…」
- 「基本は既存顧客で、たまに新規が入ってきて…」
- 「売上の柱が3つあってですね…」
どれも間違ってはいません。
でも、ここで重要なのは正確さではなく、構造が伝わるかどうかです。
今回の記事では、
「売上を分解しない」シリーズの総仕上げとして、
自社の売上を“たった一文”で説明するワーク
に取り組んでいきます。
なぜ「一文」で説明できないと危険なのか
「一文で説明するなんて、言葉遊びでは?」
そう思われるかもしれません。
しかし、売上を一文で言えない状態には、
はっきりとした“経営上のリスク”があります。
理由①|社長自身が、構造を掴めていない
一文で言えないということは、
頭の中に「全体像」が存在していない可能性が高いということです。
細かい数字や個別案件は覚えている。
でも、
- どこが軸なのか
- 何に依存しているのか
- どこを伸ばしたいのか
が、言語化されていない。
これは、地図を持たずに車を運転しているような状態です。
理由②|人に説明できない構造は、引き継げない
社員に方針を伝えるとき、
銀行や外部の人と話すとき、
あるいは将来、誰かに事業を任せるとき。
そのたびに、
「えーっとですね…」と長い説明が必要になる会社は、
構造が属人化しています。
一文で言える構造は、
そのまま「共有できる構造」になります。
「売上を分解しない」からこそ、一文にできる
ここで、これまでのシリーズを少し振り返ります。
- 売上を細かく分解しすぎると、判断できなくなる
- 社長が見るべき売上構造は3つだけ
- 新規
- 既存
- 依存
つまり、
見る情報を意図的に減らしてきたわけです。
その結果、ようやくできるようになるのが、
「一文で説明する」という行為です。
細かい要素を削ぎ落とし、
構造だけを残す。
これが、このワークの本質です。
ワーク①|まずは「今の状態」を一文で書いてみる
それでは、実際に手を動かしてみましょう。
お題
「現時点での自社の売上構造」を、一文で書いてください
制限時間は5分。
完璧でなくて構いません。
例(よくあるパターン)
- 「既存顧客からのリピート売上が中心で、新規は紹介に依存している」
- 「単発案件が多く、毎月新規を取らないと売上が立たない構造」
- 「社長個人の営業で受注した案件が売上の大半を占めている」
どうでしょうか。
意外と、ここまでは書ける方が多いはずです。
ここでのポイントは、
良し悪しを判断しないこと。
まずは、現状をそのまま言葉にするだけでOKです。
ワーク②|「主語」と「動詞」をはっきりさせる
次に、今書いた一文を見直してみてください。
チェックポイントは2つです。
チェック①|主語は何か?
- 商品なのか
- 顧客なのか
- 社長なのか
- 仕組みなのか
例えば、
×「売上が安定している」
〇「既存顧客が、毎月継続して購入している」
主語が明確になると、
「誰が売上を作っているのか」が見えてきます。
チェック②|動詞は行動を表しているか?
×「売上がある」
〇「定期契約が更新され続けている」
動詞が弱いと、構造がぼやけます。
売上は“状態”ではなく、“動き”の結果だからです。
ワーク③|「不安になる一言」をあえて足す
次は、少し踏み込んだワークです。
今の一文の後ろに、
次の言葉を付け加えてみてください。
「もし〇〇が起きたら、売上はどうなるだろう?」
例
- 「もし紹介が止まったら、この売上は続かない」
- 「もし社長が動けなくなったら、売上が落ちる」
- 「もし主要顧客が離れたら、売上の半分が消える」
この“不安になる一言”こそ、
あなたの会社の売上構造の弱点です。
一文で言語化できると、
弱点も同時に浮かび上がります。
ケーススタディ|一文が変わると、意思決定が変わる
ケース①|製造業A社
Before
「複数の商品を卸先に販売して売上を作っている」
一見、悪くなさそうです。
しかし、構造が見えません。
After
「特定の卸先2社への定番商品の継続出荷で、売上の7割を作っている」
一文にしたことで、
- 依存が強い
- 新規が弱い
という事実が一気に明確になりました。
結果、
「新商品開発」ではなく、
「取引先分散」を優先する意思決定に変わりました。
ケース②|サービス業B社
Before
「口コミと紹介で、なんとなく売上が回っている」
After
「既存顧客からのリピートと紹介で回っているが、新規獲得は仕組み化されていない」
一文にした瞬間、
「やるべきこと」が明確になりました。
広告を打つかどうか以前に、
新規を生む導線そのものを設計する必要があると気づいたのです。
「良い一文」と「危険な一文」の違い
ここで、少し整理します。
危険な一文の特徴
- 抽象的
- 状態説明で終わっている
- 不安要素が隠れている
例:
「安定した売上がある」
良い一文の特徴
- 誰が、何をしているかが分かる
- 構造が見える
- 次の打ち手を考えられる
例:
「既存顧客の定期契約更新によって売上の大半が支えられている」
良い一文は、
意思決定のスタートラインになります。
この一文は、定期的に“書き換えて”いい
最後に、とても大事なことをお伝えします。
この「一文」は、
一度作ったら終わりではありません。
- 半年後
- 1年後
- 大きな意思決定の前
そのたびに、書き換わっていいのです。
むしろ、
書き換わらないとしたら、
会社は変化していない可能性があります。
今日の一言
売上を一文で言えない会社は、構造を掴めていない。
一文で言えるようになった瞬間、社長の判断は驚くほど軽くなる。
