
「固定費が重いんです」と言った瞬間、思考は止まっている
社長との会話で、よく出てくるフレーズがあります。
「うちは固定費が重くて…」
「変動費をもっと抑えないとダメですよね」
この言葉、
実はかなり危険です。
なぜならこの時点で、
固定費・変動費が
“会計用語のまま”放置されているからです。
言い換えると、
- 分かっている「つもり」
- 触っている「気分」
にはなっているけれど、
経営判断に使える状態ではない、ということ。
今回は、
固定費・変動費を
社長が本当に管理できる言葉に変換する
というテーマで話を進めていきます。
固定費・変動費は「知識」ではなく「道具」
まず、基本の確認です。
- 固定費:売上に関係なく発生する費用
- 変動費:売上に応じて増減する費用
これは、ほとんどの社長が知っています。
でも、
知っている=使えている
ではありません。
問題はここです。
固定費・変動費が
「分類」で終わってしまっている
これでは、
経営は何も変わりません。
共通の勘違い|固定費は悪、変動費は善?
多くの会社では、
こんな空気があります。
- 固定費は怖い
- 固定費は削るべき
- 変動費は安全
確かに、
固定費が増えると
損益分岐点は上がります。
でも、それだけで
固定費=悪
と決めつけてしまうと、
経営の視野は一気に狭くなります。
ケーススタディ①|固定費を削りすぎて、成長が止まった会社
背景
小売業L社。
売上が伸び悩み、社長は「固定費削減」に着手しました。
- 正社員を減らす
- 教育コストを削る
- 広告を止める
短期的には…
- 利益は一時的に改善
- 数字は良く見える
しかし半年後
- 現場が回らない
- 新人が育たない
- 売上がさらに低下
結果として、
固定費を削ったことで、
売上を生む力まで削ってしまった
状態になっていました。
固定費・変動費を「行動の言葉」に翻訳する
ここからが本題です。
固定費・変動費を
管理できる言葉に置き換えるとは、
どういうことか。
ポイントは、
会計用語 → 行動用語
への変換です。
固定費を“管理できる言葉”にすると?
固定費を、
こんな言葉に言い換えてみてください。
- 毎月、社長が覚悟して払っているお金
- 売上がゼロでも続けると決めた活動
- 会社の「前提条件」を作っている費用
こう考えると、
固定費はこう問い直せます。
- この固定費は、何の前提を作っているか?
- この前提は、今も必要か?
すると、
削る・削らないの判断が
感情ではなく意思になります。
ケーススタディ②|固定費を「覚悟の一覧」にした社長
ITサービス業M社。
社長は、固定費をこう整理しました。
- 人件費 →「専門性を社内に持つ覚悟」
- 家賃 →「この場所で商売する覚悟」
- システム費 →「効率で勝つ覚悟」
結果、
- なんとなく削る
- なんとなく不安になる
という状態から抜け出し、
「この固定費は守る」
「これは見直す」
を、はっきり言語化できるようになりました。
変動費を“管理できる言葉”にすると?
次に、変動費です。
変動費を、
ただの「売上連動コスト」として見ると、
管理は雑になります。
変動費は、
こう言い換えてみてください。
- 売上を取るために払っている通行料
- 仕事を1件増やすたびに必要な代償
- 粗利を削っていく刃
こう見ると、
変動費には
限界点があることに気づきます。
ケーススタディ③|変動費を把握せず、忙しいだけだった会社
建設業N社。
仕事は増えていました。
しかし、
- 利益が残らない
- 社長も現場も疲弊
原因は、
仕事が増えるほど、
変動費が想定以上に増えていた
ことでした。
変動費を、
- 「仕事を取るためのコスト」
- 「1案件あたりの粗利削減要因」
として見直した結果、
- 受ける仕事
- 断る仕事
の基準が、
はっきりしました。
固定費・変動費を“粗利と結びつける”
ここで、
シリーズのテーマに戻ります。
粗利で会社を見るとは、
固定費・変動費を
粗利と結びつけて考えることです。
- 固定費は、粗利で“回収すべきもの”
- 変動費は、粗利を“削りながら発生するもの”
この視点を持つと、
社長の問いが変わります。
- この粗利で、固定費は賄えるか?
- この仕事は、変動費を払っても粗利が残るか?
数字が苦手な社長ほど、言葉を変えるべき理由
「数字が苦手なんです」
そう言う社長ほど、
固定費・変動費を
言葉で管理する必要があります。
- 会計用語は抽象度が高い
- 行動の判断に直結しにくい
だからこそ、
自分が判断できる言葉
自分が覚悟を持てる言葉
に、翻訳するのです。
固定費・変動費を使いこなす社長の思考回路
最後に、
固定費・変動費を
使いこなしている社長の
思考をまとめます。
- 固定費は「減らす対象」ではなく
「構える対象」 - 変動費は「仕方ないもの」ではなく
「仕事を選ぶ基準」 - 粗利は、それらをつなぐ“判断軸”
この三点がつながった瞬間、
経営は一気に整理されます。
次回予告|「損益分岐点」を社長の武器にする
次回は、
「損益分岐点を“怖い数字”から“使える基準”に変える」
というテーマでお届けします。
- 損益分岐点が高い=悪?
- 下げる以外に、打ち手はない?
社長の意思決定に
本当に使える損益分岐点の考え方を、
解説していきます。
今日の一言
固定費・変動費は、
削るための言葉ではない。
社長が覚悟と判断を持つための言葉である。
