
―― 「儲かっているのにお金がない」の正体を一気にほどく
「黒字なのに、なぜか不安」になる理由
ここまでの3回で、私たちはあえて、
- 仕訳を教えず
- 勘定科目も深掘りせず
- 会計ソフトを“判断ツール”として使う
という話をしてきました。
すると、多くの社長から、
こんな声が出てきます。
「P/Lは、なんとなく見えるようになってきた」
「でも…B/Sがよく分からない」
「黒字なのに、なぜか安心できない」
ここで初めて出てくるのが、
P/LとB/Sの関係というテーマです。
P/LとB/Sは「役割」がまったく違う
まずは、超シンプルに整理しましょう。
P/L(損益計算書)とは?
一定期間の“頑張りの結果表”
- 売上はいくらだったか
- 経費はいくらかかったか
- 結果、利益はいくらか
👉 「今月・今年、どうだったか?」を見る表
B/S(貸借対照表)とは?
ある一時点での“会社の体力表”
- いま、何を持っているか
- いま、何を抱えているか
- 純粋な残りはどれくらいか
👉 「いま現在、どうなっているか?」を見る表
よくある誤解
多くの社長は、こう思っています。
「P/Lが良ければ、B/Sも良いはず」
でも、現実は違います。
P/Lが黒字でも、B/Sが弱い会社
は、いくらでもあります。
事例|黒字なのに、資金繰りが苦しい会社
ある小規模事業者の例です。
- 毎月のP/Lは黒字
- 税理士からも「利益出てますね」と言われる
- でも、通帳残高はいつもギリギリ
社長はこう言いました。
「利益って、どこに消えてるんですか?」
この疑問を解くカギが、
P/LとB/Sの違いです。
「儲け」と「お金」は、そもそも別物
ここで、一番大事な話をします。
利益(儲け)=お金の増減
ではありません。
これは、感覚的にかなり裏切られます。
なぜズレが起きるのか?
理由はシンプルです。
- P/Lは「約束ベース」
- B/Sは「現実ベース」
だからです。
ケース①|売上は立ったが、まだ入金されていない
- 今月、100万円の売上
- でも、入金は来月
P/Lでは、
「今月は100万円売った」
と記録されます。
でもB/Sでは、
「まだお金はない」
「代わりに“もらう権利”がある」
という状態になります。
ケース②|パソコンを買った場合
- 30万円のパソコンを購入
- 現金は減った
でもP/Lでは、
「今月、30万円の損」
にはなりません。
B/Sに、
「パソコンという“モノ”を持っている」
と記録されます。
ここで初めて出てくる「仕訳」の意味
ここまでの話で、
こう感じた方もいるかもしれません。
「じゃあ、このズレをつないでいるのが仕訳?」
その通りです。
仕訳の正体
仕訳とは、
“P/LとB/Sを同時に動かすためのルール”
です。
- 何かが起きる
- P/LかB/S(あるいは両方)が動く
- その動きを記録する
これが仕訳です。
仕訳は「原因」、財務諸表は「結果」
ここで、仕訳の位置づけをはっきりさせます。
- 取引・出来事 → 原因
- 仕訳 → 原因の翻訳
- P/L・B/S → 結果
つまり、
社長が見るべきは「結果」
仕訳は、その裏側の翻訳機
なのです。
だから前半3回では、
あえて仕訳を扱いませんでした。
図で考えると、一気に分かる
(※ブログでは図解を入れると非常に効果的です)
イメージ
- 現場で何かが起きる
- 会計ソフトが判断を質問する
- 裏側で仕訳が切られる
- P/LとB/Sに結果が出る
社長は、
④だけを読めればいい。
社長は、仕訳をどこまで分かれば十分か?
ここで、非常に重要な線引きをします。
社長が分かっていれば十分なこと
- なぜ利益とお金がズレるのか
- この取引は、P/LかB/Sか
- 今月の判断に、どこが影響しているか
社長が分からなくていいこと
- 仕訳の左右(借方・貸方)
- 細かい勘定科目の定義
- イレギュラーな会計処理
ここをやり始めると、
また「勉強はしたが、使えない」状態に戻ります。
事例|B/Sを“怖い表”から“安心材料”に変えた社長
ある社長は、
B/Sを見るたびにこう言っていました。
「数字が多すぎて、正直見たくない」
そこで、こう伝えました。
「B/Sは、会社の“今の写真”です」
「増えたか、減ったかだけ見てください」
- 現金は増えた?減った?
- 借入は減っている?
- 未回収が増えていない?
すると、
「あ、今は無理していい時期じゃないですね」
と、自分で判断できるようになりました。
P/LとB/Sが分かれると、社長は自由になる
P/LとB/Sを分けて考えられるようになると、
- 黒字でも浮かれなくなる
- 赤字でも冷静になれる
- 数字に振り回されなくなる
ようになります。
これは、
仕訳を覚えたからではありません。
構造を理解したからです。
次回予告|最低限これだけ知ればいい「社長のための仕訳」
次回は、
「社長が最低限知っておくべき5つの仕訳パターン」
を扱います。
- 仕訳を“暗記”しません
- 借方・貸方も、極力使いません
- 「だからP/LとB/Sがこう動くのか」
が分かる形で整理します
今日の一言
「仕訳は覚えるものではない。
P/LとB/Sのズレを説明する“通訳”である。」
