②「決めることを決める」だけで、仕事は半分になる


― 社長の判断は、もっと少なくていい ―

「決断疲れ」の正体は、まだ終わっていない

前回の記事では、
社長が感じている“決断疲れ”の正体が、

  • 判断が多すぎるからではなく
  • 毎回ゼロから考え続けているから

だという話をしました。

では、ここからどうするのか。

「判断基準を作ろう」
「数字で決めよう」

……その前に、必ずやらなければならないことがあります。

それが今回のテーマ、
👉 「決めることを決める」
です。

そもそも、社長は“何でも屋”ではない

まず、少し極端な問いを投げてみます。

今、あなたが日々決めていることの中で
「社長でなければ絶対に決められないこと」は、いくつありますか?

おそらく、思ったより少ないはずです。

にもかかわらず、現実には、

  • 現場判断
  • イレギュラー対応
  • 例外処理
  • グレーな相談

これらが、すべて社長のところに集まってきます。

理由は単純です。
「誰が決めるか」が決まっていないから

つまり、
社長が忙しい会社ほど、

判断の内容ではなく、
判断の“担当者設計”が抜け落ちている

のです。

「決めることを決める」とは、どういう意味か

ここで言う「決めることを決める」とは、

  • 決断力を鍛えること
  • もっと早く判断すること

ではありません。

そうではなく、

社長が“必ず自分で決める判断”を、先に決めてしまうこと

です。

言い換えるなら、

  • 社長が責任を持つ判断
  • 社長が関与しない判断
  • ルールで自動的に決まる判断

この3つを、あらかじめ分けておくということ。

これをやるだけで、
体感的には本当に「仕事が半分」になります。

社長が必ず決めるべき判断は、実は3つしかない

多くのケースを見てきて、
社長が“必ず”握っておくべき判断は、だいたい次の3領域に集約されます。

① 売上・利益に関する最終判断

  • どこで儲けるのか
  • どの商品・サービスを伸ばすのか
  • 利益が出ないものを続けるのか、やめるのか

これは、社長以外に決められません。

② 事業の方向性に関する判断

  • どの市場で戦うのか
  • 何をやらないと決めるのか
  • 将来、どんな会社でありたいのか

ここがブレると、現場の判断もすべてブレます。

③ 人・投資に関する大きな判断

  • 採用するか、しないか
  • 教育にお金をかけるか
  • 設備投資・広告投資をどうするか

これも、社長の覚悟が必要な判断です。

逆に言うと、
これ以外は「社長が毎回決めなくてもいい」可能性が高い

ケーススタディ|B社長が「決めない」ことを決めた話

ここで、実際によくあるケースをご紹介します。

従業員15名のB社長。
口癖は、
「結局、全部自分のところに来るんですよね」。

詳しく聞くと、

  • 値引きの可否
  • クレーム時の対応方針
  • 急な予定変更
  • 細かなコスト判断

すべて社長判断。

そこでB社長が最初にやったのは、
判断を減らすことではありませんでした。

やったのは、これだけ。

「自分が必ず決める判断」と
「自分が関与しない判断」を
紙に書き出した

そして、こう言いました。

「これ以外の判断は、
一旦、現場で決めてもらう」

結果どうなったか。

  • 社長への確認は激減
  • 現場の判断スピードは上昇
  • 社長は“考える判断”に集中できるようになった

完璧ではありません。
でも、確実に“楽になった”。

任せることが怖い、本当の理由

ここで、多くの社長がぶつかる壁があります。

「任せたら、変な判断をされそうで怖い」

この感覚、とても自然です。

でも、冷静に考えてみてください。

怖いのは、

  • 任せることそのもの
    ではなく
  • 判断の基準が共有されていないこと

なのです。

基準がないまま任せれば、
そりゃ不安になります。

だから順番が大事です。

  1. 社長が決めることを決める
  2. 社長が決めないことを明確にする
  3. その上で、判断基準を作る

この順序を飛ばすと、
「任せる=丸投げ」になってしまいます。

「全部見ないと不安」な社長ほど、線を引くべき

面白いことに、

  • 優秀
  • 真面目
  • 責任感が強い

こういう社長ほど、
「全部見ていないと不安」になります。

でも実は、
全部見る社長ほど、何も見えていない

判断が混ざりすぎて、

  • 本当に重要な決断
  • どうでもいい決断

の区別がつかなくなるからです。

だからこそ、
最初にやるべきは、

「これは自分の仕事」「これは自分の仕事じゃない」
という線を、意図的に引くこと

です。

「決めることを決める」は、覚悟の作業

ここまで読んで、
「それでも、やっぱり不安だな…」
と感じている方もいるでしょう。

それは正解です。

なぜなら、
「決めることを決める」作業は、仕組みづくりであると同時に、覚悟づくりだから。

  • 自分が責任を持つ判断
  • 他人の判断を信じる領域

これを分けることは、
社長自身のスタンスを問われる作業でもあります。

でも、この一歩を踏み出さない限り、

  • 社長はずっと忙しい
  • 社長しか決められない会社
  • 社長が一番のボトルネック

から抜け出せません。

次回予告

数字をたくさん見るほど、社長は判断できなくなる
― 「見る数字を絞る」という、もう一つの決断 ―

今日の一言

社長の仕事は、すべてを決めることではない。
「自分が決めること」を先に決めることだ。


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