⑤「迷ったら戻る数字」を1つ決める


判断に迷うのは、社長が弱いからではない

「A案とB案、どちらも一長一短で決めきれない」
「今は攻めるべきか、守るべきか分からない」
「判断材料は揃っているのに、最後の一押しができない」

社長であれば、誰しも経験があるはずです。

そして多くの場合、
社長はこう考えます。

  • 情報が足りないのではないか
  • もっと考えれば正解が見えるのではないか
  • 決断を急ぐべきではないのではないか

しかし実は、
判断に迷う原因は、情報不足ではありません。

本当の原因は、
「立ち返る基準点がない」ことです。

今回のテーマは、
意思決定構造設計の中でも、非常に重要な最終ピース。

「迷ったら、必ずここに戻る」という“数字”を1つ決める
という話です。

判断が速い社長は、「考えない」のではなく「戻っている」

判断が速い社長を見ると、
「即断即決できてすごい」と感じるかもしれません。

しかし、よく観察すると違います。

彼らは、

  • 深く考えない
  • 勘だけで決めている

のではありません。

必ず、ある一点に立ち戻ってから決めている
のです。

その一点こそが、
「迷ったら戻る数字」。

この数字があるかどうかで、

  • 判断スピード
  • 判断のブレ
  • 後悔の少なさ

が、驚くほど変わります。

なぜ「1つ」でなければいけないのか

ここで、よく出てくる質問があります。

「大事な数字は複数あるのでは?」
「1つに絞るのは危険では?」

確かに、
会社には大事な数字がたくさんあります。

しかし今回決めたいのは、
“分析用の数字”ではありません。

“迷ったときに戻る数字”です。

迷っているときに、

  • 売上も
  • 利益も
  • キャッシュも
  • 稼働率も

全部見始めたら、
迷いはさらに深くなります。

だからこそ、
最後の拠り所は、1つだけにする

これが、
意思決定構造をシンプルに保つコツです。

「迷ったら戻る数字」とは、どういう数字か

では、その数字は
どんな条件を満たしている必要があるのでしょうか。

ポイントは3つです。

  1. 会社の戦い方を一言で表している
  2. 良し悪しが直感的に分かる
  3. 社長が一番責任を持ちたい数字である

順に見ていきましょう。

条件①|会社の戦い方を一言で表しているか

「迷ったら戻る数字」は、
会社の“勝ちパターン”を表す数字です。

たとえば、

  • 高付加価値路線なら → 粗利率
  • 回転重視なら → 稼働率
  • ファン重視なら → リピート率
  • 規模拡大期なら → 売上成長率

など。

重要なのは、
この数字が崩れたら、戦い方が崩れている
と言えるかどうか

逆に言えば、

この数字さえ守れていれば、
多少のブレはOK

そう言える数字が、
候補になります。

条件②|良い・悪いが一瞬で分かるか

迷っているとき、
社長の頭はすでに疲れています。

そんな状態で、

  • 計算が必要
  • 解釈が分かれる
  • 人によって見方が違う

数字は、拠り所になりません。

「迷ったら戻る数字」は、

  • 高いか、低いか
  • 上がっているか、下がっているか

が、一瞬で分かる必要があります

だからこそ、

  • 複雑な指標
  • 組み合わせ指標

よりも、
シンプルな1指標が向いています

条件③|社長が「自分の責任だ」と言える数字か

もう一つ、とても重要な条件があります。

それは、

その数字を、現場のせいにできないかどうか

  • 市場が悪かったから
  • 景気が悪かったから
  • 担当者が頑張らなかったから

こうした理由で逃げられる数字は、
拠り所にはなりません。

「迷ったら戻る数字」は、

これは、社長の判断の結果だ

と、胸を張って言える数字であるべきです。

ケーススタディ①|粗利率に戻る社長

ある受注型ビジネスの社長。

彼の「迷ったら戻る数字」は、
粗利率でした。

  • 案件を取るか迷ったら → 粗利率
  • 値引き要求が来たら → 粗利率
  • 人を増やすか迷ったら → 粗利率

すべて、
「この判断で、粗利率はどうなるか?」
に立ち戻ります。

結果として、

  • 判断が速くなる
  • 値引きが減る
  • 利益が安定する

という変化が起きました。

ケーススタディ②|稼働率に戻る社長

別の会社では、
人の稼働が経営の生命線でした。

この社長が選んだのは、
稼働率

  • 新規案件を取るか
  • 断るか
  • 外注を使うか

すべて、

この判断で、稼働率はどうなる?

で決めます。

すると、

  • 無理な受注が減る
  • 現場の疲弊が減る
  • クレームが減る

という好循環が生まれました。

「戻る数字」があると、判断の質が揃う

この数字を決めると、
社長自身だけでなく、会社全体が変わります。

  • 現場が判断理由を理解できる
  • 報告の視点が揃う
  • 「なぜその判断か」が説明できる

つまり、

判断の“軸”が、会社に共有される
ということです。

これは、
意思決定を仕組みに変える大きな一歩です。

実践ワーク|あなたの「迷ったら戻る数字」を決める

今回のワークです。

次の問いに、正直に答えてみてください。

  1. この数字が崩れたら、「経営がズレている」と言えるものは何か?
  2. 判断に迷ったとき、一番見たくなる数字は何か?
  3. その数字の責任を、自分が100%負えるか?

この3つを満たす数字が、
あなたの「迷ったら戻る数字」
です。

決まったら、
ぜひ言葉にしてみてください。

迷ったら、〇〇を見る

これだけで、
判断は驚くほど軽くなります。

完璧な判断より、「戻れる判断」を持つ

最後に、大切なことを。

社長の判断は、
常に正解である必要はありません。

大事なのは、

  • 迷ったときに戻れる
  • ブレたときに修正できる
  • 後悔しにくい

構造を持っていること。

「迷ったら戻る数字」は、
社長のための“安全装置”です。

今日の一言

迷いをなくす方法は、
考え尽くすことではない。
戻る場所を、1つ決めることだ。

その数字が、
あなたの意思決定を支え続けます。


PAGE TOP