
「なんとなくOK」「今回はNG」…その違い、説明できますか?
社長業の現場では、こんな場面が日常的に起きています。
- 同じような提案なのに、前回はOKで今回はNG
- なぜダメなのかと聞かれても、うまく言葉にできない
- 「社長の気分次第」と受け取られてしまう
社長本人としては、
ちゃんと考えて決めているつもりです。
しかし問題は、
その判断基準が、社長の頭の中にしか存在しない
という点にあります。
今回のテーマは、
意思決定構造設計の中核とも言える部分。
「OK/NGを分けている“基準”を、言葉にする」
という話です。
判断が属人化している会社で、必ず起きること
判断基準が言語化されていない会社では、
次のような現象が起こります。
- 社長が不在だと、何も決められない
- 現場が判断を避けるようになる
- 同じ相談が何度も上がってくる
これは、能力の問題ではありません。
「どこまでならOKなのか」が分からない
ただ、それだけです。
社長が思っている以上に、
現場は「基準」を求めています。
なぜ社長は、判断基準を言語化しないのか
では、なぜ多くの社長は、
判断基準を言葉にしていないのでしょうか。
理由は、大きく3つあります。
① 感覚でやれてきた成功体験がある
これまで、
直感や経験で何とかなってきた。
だから、
「わざわざ言葉にする必要がない」と感じてしまう。
② 状況次第で変わると思っている
「ケースバイケースだから」
「一律の基準なんて作れない」
確かにその通りです。
しかし、それは基準が不要という意味ではありません。
③ 言語化が、思った以上に難しい
「どう説明すればいいか分からない」
「自分でも整理できていない」
これが、実は一番多い理由です。
判断基準がないと、社長の仕事は永遠に減らない
ここで、はっきりさせておきたいことがあります。
社長が忙しい最大の原因は、
判断基準を“毎回ゼロから考えている”こと。
基準がなければ、
- 毎回、同じ悩み方をする
- 毎回、同じ説明をする
- 毎回、同じ修正をする
これでは、
どれだけ時間があっても足りません。
逆に言えば、
基準を決めた瞬間、その判断は仕組みになる
ということです。
OK/NGを分ける基準は、「正解」ではなく「線」
ここで重要な考え方があります。
判断基準とは、
正解を当てるためのものではありません。
役割は、ただ一つ。
「ここから先はOK」「ここから先はNG」
という“線”を引くこと。
完璧である必要はありません。
むしろ、多少荒くていい。
なぜなら、
線がない状態が、一番危険だからです。
判断基準は、この3種類に分けて考える
判断基準は、
次の3つに分けると、驚くほど整理しやすくなります。
- 数字で切れる基準
- 方針で切る基準
- やらないと決める基準
順に見ていきましょう。
基準①|数字で切れる判断は、必ず数字で切る
まず最優先は、
数字で切れる判断を、感覚で決めないこと。
例:値引き判断
- NG:
「今回は厳しいから、このくらいなら…」 - OK:
「粗利率○%を下回るならNG」
これだけで、
- 現場が迷わなくなる
- 社長の確認が減る
- 後出しダメ出しがなくなる
という変化が起きます。
ケーススタディ:基準を数字にしただけで、社長の電話が減った例
ある会社では、
- 値引き判断
- 外注判断
すべて社長判断でした。
そこで、
- 粗利率
- 外注費率
に「超えたら社長確認」という線を引いたところ、
社長への確認が半分以下になりました。
基準②|数字にできない判断は「方針」で切る
すべての判断が、
数字で割り切れるわけではありません。
そんなときに使うのが、
方針基準です。
例:案件受注の判断
- 「うちは短期利益より、継続取引を重視する」
- 「価格競争の案件はやらない」
これらは、
YES/NOを分ける立派な基準です。
ポイントは、
社長の価値観を、判断用の言葉に変換すること。
基準③|実は一番大事な「やらない基準」
見落とされがちですが、
非常に重要なのがこの基準。
「これは、やらない」
と決めることです。
- 利益が出にくい仕事
- 社長が毎回疲弊する案件
- 将来につながらない依頼
これを明文化するだけで、
- 判断スピードが上がる
- 迷いが減る
- 組織の軸がはっきりする
という効果があります。
判断基準は「守らせるもの」ではない
ここで、よくある誤解を一つ。
判断基準は、
現場を縛るためのルールではありません。
本来の役割は、
- 判断を速くする
- 相談を減らす
- 修正コストを下げる
社長と現場、
両方を楽にするためのものです。
だからこそ、
- 例外があってもいい
- 修正してもいい
- 育てていけばいい
最初から完璧を目指す必要はありません。
実践ワーク|あなたの会社のOK/NGラインを書き出す
今回のワークです。
次の3つを、紙に書いてみてください。
- 数字でOK/NGを切れる判断は何か?
- 数字にできないが、方針で切れる判断は何か?
- そもそも「やらない」と決めるべき判断は何か?
書き出してみると、
- 社長の判断が、どこで詰まっているか
- 任せられる判断
- 仕組みにできる判断
が、はっきり見えてきます。
判断基準が決まると、会社の会話が変わる
基準が言語化されると、
社内の会話が変わります。
- 「社長、どう思いますか?」
- 「基準的にはOKですか?」
この一言の違いが、
意思決定構造が機能し始めたサインです。
今日の一言
判断に迷うのは、能力の問題ではない。
基準が、まだ言葉になっていないだけだ。
その一歩が、
社長の仕事を「判断」から「設計」へと変えていきます。
