
――戦わない市場を決めるという戦略・第1回――
「いい商品なんですけどね…」という社長のため息
経営者と話していると、非常によく聞く言葉があります。
「商品(サービス)自体は、いいと思うんですよ」
「お客さんからの評価も悪くない」
「でも、なぜか売れないんです」
この言葉、あなたも一度は口にしたことがあるかもしれません。
そして、この言葉が出ているとき、
社長の頭の中では、こんな前提が出来上がっています。
「いい商品=売れるはず」
しかし、現実はご存じの通りです。
いい商品なのに、売れない。
むしろ、
「なぜあれが売れて、これが売れないのか分からない」
という現象の方が多い。
今日はまず、この“違和感”の正体から解きほぐしていきます。
「いい商品」は、売れる理由にならない
少し厳しいことを言います。
市場において、「いい商品」は前提条件でしかありません。
つまり、
- いい商品だから売れる
のではなく、 - いい商品でないと、そもそも土俵に立てない
というだけの話です。
売れる・売れないを分けているのは、
商品そのものの良し悪しではありません。
では、何が違いを生んでいるのでしょうか。
売れない理由は「努力不足」ではない
ここで多くの社長が、次の罠にハマります。
「もっと伝え方を工夫しよう」
「営業を強化しよう」
「広告を増やそう」
もちろん、これらが必要な場合もあります。
ただし、市場選びを間違えている場合、
どれだけ頑張っても成果は出ません。
なぜなら、
戦ってはいけない場所で、全力で戦っている
からです。
ケーススタディ①:技術力の高い会社が苦しむ理由
ある製造業の会社。
- 技術力は高い
- 品質も安定している
- 社長も現場も真面目
それなのに、価格競争に巻き込まれ、利益が出ません。
社長はこう言います。
「うちの品質は、絶対に負けていないんです」
しかし、市場から見るとどうでしょうか。
- お客さんは「違い」を感じていない
- 比較軸は「価格」と「納期」
- 技術力は評価される前に、土俵から外されている
これは、商品が悪いのではありません。
戦う市場が、ズレているだけ
なのです。
「誰に売るか」を決めないと、誰にも刺さらない
マーケティングの基本として、よく言われます。
「ターゲットを決めましょう」
ただ、これを
「年齢・性別・地域」
くらいの話で終わらせてしまうと、本質を外します。
重要なのは、
その人は、どんな“状況”で困っているのか
です。
- 余裕があるときか
- 追い込まれているときか
- 比較検討しているのか
- 今すぐ決断しないといけないのか
同じ人でも、状況が違えば、選ぶ商品はまったく変わります。
ケーススタディ②:いいサービスなのに選ばれない理由
あるITサービス会社。
- 機能は豊富
- サポートも手厚い
- 価格も極端に高くない
それでも、なかなか契約に至りません。
理由を探ると、
- 顧客は「まず安く試したい」
- そこまで高機能を求めていない
- 導入の手間を嫌がっている
つまり、
「いい」けれど、「今ほしい」ではなかった
のです。
売れない商品に共通する、たった一つの特徴
ここまでの話をまとめると、
売れない「いい商品」には、共通点があります。
それは、
「どの市場で、誰と戦っているのか」が曖昧
だということ。
- 強者がひしめく市場
- 価格比較が当たり前の市場
- 差が伝わりにくい市場
ここに入ってしまうと、
どれだけ良くても、消耗戦になります。
市場戦略とは「戦い方」ではない
ここで、このシリーズの核心に触れます。
市場戦略とは、どう戦うかではない。
戦わない場所を決めること。
多くの社長は、
- 競合に勝つ方法
- 差別化の仕方
- 営業トーク
を考えます。
しかし、もっと前に考えるべきことがあります。
「そもそも、ここで戦う必要があるのか?」
「売れない」は、商品ではなく市場からのサイン
売れないとき、
市場はこう言っています。
「ここでは、あなたの強みは評価されません」
これは否定ではありません。
場所を変えれば、主役になれる可能性がある
というサインです。
管理会計と市場戦略は、実はつながっている
ここで、管理会計との関係にも触れておきましょう。
市場を間違えると、
- 粗利が出ない
- 値引きが増える
- 数字で説明できない苦しさが生まれる
逆に、市場を正しく選ぶと、
- 同じ商品でも利益率が上がる
- 数字が安定する
- 成長の再現性が生まれる
市場戦略は、管理会計の“前提条件”
なのです。
このシリーズで伝えたいこと
このシリーズ
『戦わない市場を決めるという戦略』
では、
- なぜ消耗戦に陥るのか
- なぜ価格競争から抜けられないのか
- なぜ数字が安定しないのか
をすべて
**「市場の選び方」**から紐解いていきます。
戦い方の話は、後です。
今日の一言
「いい商品が売れない」のではない。
戦う市場を間違えると、
“いい商品ほど苦しくなる”。
