
――頑張らないと儲からない会社は、設計が間違っている・第9回――
「きっかけは小さなトラブルだった」
社長からよく聞く言葉があります。
「最初は本当に小さな問題だったんです」
「まさか、こんなことになるとは…」
- 主力社員が辞めた
- 大口の取引先が1社抜けた
- 原価が少し上がった
どれも、致命的に見えない出来事です。
でも、なぜかそこから
会社全体が一気に苦しくなる。
問題は「出来事」ではない
最初にお伝えしたいのは、これです。
会社が崩れる原因は、
その出来事そのものではない
本当の原因は、
ビジネスモデルが
「部分耐性」を持っていないこと
にあります。
ビジネスモデルは「つながりの塊」
ビジネスモデルは、
- 売上
- コスト
- 人
- 業務
- お金の流れ
が、一本の線ではなく、
網の目のようにつながった構造です。
だからこそ…
- 一部が止まる
- 一部が壊れる
と、その影響が
連鎖的に広がることがあります。
壊れやすいモデルの特徴
一部が壊れると全体が崩れる会社には、
共通点があります。
特徴①:特定の人に依存している
- あの人がいないと回らない
- 社長しか分からない
- ベテラン1人で支えている
この状態は、
人が「部品」ではなく
「心臓」になっている
モデルです。
ケーススタディ①:エース退職で止まった会社
ある制作会社。
- 売上は安定
- 顧客も多い
しかし、
- 企画
- 見積
- 品質管理
を一人の社員が担っていました。
その人が辞めた瞬間
- 見積が出せない
- 品質が落ちる
- クレームが増える
結果、
売上 → 信用 → 人材
の順で連鎖崩壊
特徴②:一つの売上源に依存している
- 売上の6〜7割が1社
- 1商品が主力
- 1チャネル頼み
一見、効率的です。
でも、裏を返すと…
その一点が壊れたら、
全体が傾く
ケーススタディ②:主力取引先の方針転換
ある下請け企業。
- 技術力は高い
- 関係も良好
しかし、
元請けが内製化を決断。
何が起きたか
- 売上が一気に半減
- 固定費はそのまま
- 新規開拓は未経験
結果、
「良い会社」なのに、
経営は急降下
特徴③:数字が一方向にしか流れていない
これは少し分かりにくいですが、
とても重要です。
よくある構造
- 売上 → 利益
- 利益 → 何となく残る
だけを見ている。
しかし実際には…
- 原価がどこで上がったか
- どの業務が赤字か
- どの顧客が足を引っ張っているか
が見えていない。
見えない歪みは、必ず溜まる
管理会計がない会社では、
- 小さな赤字
- 非効率な業務
- 合わない顧客
が、静かに積み上がります。
ケーススタディ③:忙しさの正体が見えなかった会社
あるサービス業。
- 売上は右肩上がり
- 現場は常にフル稼働
でも、
- 利益は微増
- キャッシュは増えない
原因を分解すると
- 儲からない案件が忙しさを作っていた
- 儲かる仕事は後回し
結果、
一部の歪みが、
全体の体力を削っていた
なぜ「一部」で止まらないのか
理由はシンプルです。
ビジネスモデルが
余白なく設計されているから
余白がないとは?
- 代替手段がない
- 切り離せない
- 逃げ道がない
こうなると、
小さなトラブル = 致命傷
になります。
強いモデルは「壊れても続く」
本当に強いビジネスモデルは、
- 一人抜けても
- 一部売上が減っても
- 一工程が止まっても
全体が止まらない
その違いはどこにあるのか
強いモデルは、
- 業務が分解されている
- 収益源が分散されている
- 数字で異変が早く分かる
つまり、
「切り離せる設計」
になっています。
管理会計は「崩れる前の警報装置」
管理会計があると、
- 利益率の変化
- 原価構造の歪み
- 部分赤字
が、早い段階で見えます。
だから
- 小さな修正で済む
- 大きく壊れない
「頑張れば何とかなる」は危険信号
もし今、
- 誰かが無理をしている
- 社長がカバーしている
- 現場の根性で回っている
なら、
すでに一部は壊れ始めている
可能性があります。
設計の問題は、人の問題に見える
怖いのはここです。
- 人が悪い
- 努力が足りない
- 意識の問題
に見えてしまう。
でも実際は、
壊れやすい設計の上で、
必死に踏ん張っているだけ
というケースがほとんどです。
会社を強くするとは、
完璧にすることではありません。
壊れても続く構造
を、最初から持つことなのです。
今日の一言
一部が壊れて全体が崩れるのは、
人が弱いからではない。
切り離せない設計が、弱いだけだ。
