
――増やす前に、止まって考えろ・第4回――
投資は万能ではない――強くするか、弱くするか
社長にとって「投資」は会社の成長を加速させる手段です。
しかし、すべての投資が会社を強くするわけではありません。
- 最新設備を導入したのに利益が増えない
- 社員を増やしたのに現場が混乱した
- 外注を増やしたのにコストだけ膨らんだ
こうした失敗は、投資を正しく分類できていないことが原因です。
今回のテーマは、
「この投資は会社を強くするか、それとも弱くするか?」
を見極める方法です。
強くする投資と弱くする投資の違い
まずは単純に分類してみます。
1. 会社を強くする投資
- 売上・利益を確実に押し上げる
- 社員の生産性やモチベーションを向上させる
- 会社の財務体力や安全性を改善する
例:新規顧客を獲得するための営業ツール、収益性の高い機械、社員教育
2. 会社を弱くする投資
- 売上・利益を大きく増やさないのにコストだけかかる
- 社員の負担や管理コストが増える
- 資金繰りや財務安全性を悪化させる
例:見栄で導入した最新設備、売上貢献の見込みがない広告、不要なオフィス拡張
ケーススタディ①:強い投資の例
ある飲食店チェーンでは、厨房機器の更新を検討。
- 現状の厨房はピークタイムで作業が遅れる
- 新しい機器は効率が良く、1日2時間の作業短縮
- 月の売上増見込み:30万円
- 設備費回収期間:8カ月
この投資は、効率化で社員の負担を減らし、売上も確実に増えるため、会社を強くする投資です。
ケーススタディ②:弱い投資の例
同じチェーンで、社長が「最新デザインのオフィス什器」を導入したケース。
- 什器費用:100万円
- 売上や効率に直接影響なし
- 社員の満足度は上がるが、コスト回収できない
結果、資金が圧迫され、設備投資の優先度が高い厨房機器導入が遅れる。
会社を弱くする投資の典型例です。
投資判断の3つのチェックポイント
投資が会社を強くするか弱くするかを見極めるには、数字と視点が必要です。
1. 利益への影響
- 追加売上 – 追加コスト = 実質利益
- 利益に貢献しない投資は再考
2. キャッシュフローへの影響
- 設備費、借入返済、維持費を含めて現金が足りるか
- キャッシュ不足は会社の安全性を損なう
3. 機会費用
- 投資資金を別の施策に回したら、より大きな効果が得られるか
- 「優先度」を数値化することが重要
ケーススタディ③:数字で見分けた投資の優先順位
ある製造業では3つの投資案がありました。
- 最新設備導入:回収期間12カ月、月追加利益20万円
- 広告強化:費用10万円、売上見込み5万円
- 社員研修:費用5万円、効率化効果月10万円
数字で比較すると、
- 設備導入:○
- 広告強化:×
- 社員研修:△
最も強い投資=設備導入
最も弱い投資=広告強化
このように数字化するだけで投資の優先順位が明確になります。
投資判断で社長が犯しがちな心理的ミス
- 見栄やブランド意識で決める
「他社もやっている」や「かっこいいから」という理由 - 短期的視点で判断する
効果が数か月以内で見えない投資は避けるべきと誤解 - 感情的に決める
社員の希望や自分の思い込みで決定
これらを避けるためには、数字で可視化して判断する習慣が必要です。
投資判断のフレームワーク
社長が投資判断をするとき、簡単なフレームを使うとブレません。
- 目的を明確にする
売上増か、効率化か、社員満足か - 数値化する
追加売上・追加コスト・キャッシュ影響・回収期間 - 優先順位をつける
限界利益や回収期間で比較 - リスクと安全性を確認
キャッシュフローの逼迫や負債の増加がないか
今日の一言
投資は、会社を強くするか弱くするかで判断せよ。
数字と目的を明確にし、
回収期間・利益貢献・キャッシュ影響を押さえた投資だけが、
会社を安全に成長させる。
