
―― 迷わない記帳は、“操作”ではなく“考え方”で決まる
「会計ソフトが苦手」なのではなく、「判断ルールがない」だけ
第1回では、
簿記を学んでも利益が増えない理由を整理しました。
第2回では、
**仕訳を意識しない「判断ベース記帳」**という考え方をお伝えしました。
今回はいよいよ、実務の話です。
freee や マネーフォワードを前にして、
こう感じたことはありませんか?
- 何をどこまで入力すればいいのか分からない
- 画面の質問に答えているうちに不安になる
- 「これで合っているのか?」がずっと残る
でも、はっきり言います。
会計ソフトが難しいのではありません。
社長側に「迷わないためのルール」がないだけです。
社長が会計ソフトでやろうとしてはいけないこと
まず最初に、
社長が やらなくていいこと を整理します。
- 勘定科目を完璧に選ぼうとする
- 仕訳が合っているかを毎回気にする
- 一発で正解を入れようとする
これらはすべて、
入力を止める原因になります。
社長に必要なのは、
「正解を出す力」ではなく、
**「迷わず前に進む力」**です。
社長のための入力ルールは、たった4ステップでいい
ここからが本題です。
freee/マネーフォワードを前提にした
社長のための入力ルールは、
実はとてもシンプルです。
社長入力の基本4ステップ
- 取引を「事実」として受け取る
- お金の動きを決める
- 今月の儲けとの関係を考える
- 「いつものか/特別か」を分ける
この4つだけです。
ステップ①|取引を「会計」ではなく「事実」として見る
まず最初にやるべきことは、
「これは何の仕訳か?」と考えないこと
です。
代わりに、こう考えます。
- 何をしたのか?
- 誰に対して?
- 何が起きたのか?
例:広告費を払った場合
×「これは広告宣伝費で、借方が…」
○「今月、広告会社に○円払った」
これだけでOKです。
会計ソフトは、
事実さえ入力できれば、裏側は自動でやってくれます。
ステップ②|お金は「今」動いたのか?「まだ」なのか?
次に判断するのは、これです。
- すでに支払った?
- まだ払っていない?
この判断は、とても重要です。
ケーススタディ|カード払いで混乱する社長
よくあるのが、このケースです。
「クレジットカードで払ったから、
まだお金は減っていない気がする」
でも、判断はこうです。
- 支払いを“確定”させたか? → YES
- あとは引き落としを待つだけか? → YES
なら、
「お金は動いた」と判断してOKです。
細かい仕訳は、
会計ソフトが勝手に処理します。
ステップ③|今月の儲けに「関係あるか?」だけを見る
次に考えるのは、
この取引は、今月の利益に影響するか?
です。
例①|消耗品を買った
- 文房具
- 日用品
- 消耗品
→ 今月の儲けに関係あり
例②|パソコンを買った
- 仕事用PC
- 高額
- 数年使う
→ 今月の儲けには直結しない
ここまで判断できれば十分です。
「減価償却」という言葉を知らなくても、
判断はできます。
ステップ④|「いつもの支出」か「特別な支出」かを分ける
最後のステップは、
P/Lを“読みやすくする”ための判断です。
- 毎月ある支出か?
- 今回限りの支出か?
ケース|P/Lを見て「なんかおかしい」と思える社長
ある社長は、
月次P/Lを見てこう言いました。
「今月、利益が少ない気がする」
よく見ると、
- ホームページ制作費
- 研修費
- 備品購入
が同じ月に重なっていました。
これが分かるのは、
入力時に「特別」と認識していたからです。
会計ソフトは「迷わせるため」に作られていない
freeeやマネーフォワードの画面には、
たくさんの選択肢があります。
でも、忘れないでください。
あれは、あなたを試す問題ではありません。
あくまで、
- 状況を整理するための質問
- 判断を助けるための誘導
です。
「全部に正しく答えなければいけない」
と思った瞬間に、苦しくなります。
事例|入力ルールを決めたら、数字を見る余裕が生まれた
ある小規模事業者の例です。
以前は、
- 月末にまとめて入力
- 毎回1時間以上かかる
- 結果、P/Lは見ない
という状態でした。
そこで、
「この4ステップだけ守りましょう」
と伝えました。
すると、
- 入力時間は10〜15分
- 毎週入力できる
- 月次P/Lを自然に見るようになった
入力が目的から手段に戻ったのです。
社長が“触るところ”と“触らなくていいところ”
ここで、線引きをしておきましょう。
社長が触るところ
- 取引内容の確認
- お金の動き
- 月次P/Lのチェック
社長が触らなくていいところ
- 仕訳の細かい形
- 勘定科目の厳密な定義
- 決算時の調整
ここを混同すると、
また元に戻ってしまいます。
正解を目指さない入力が、結果的に一番正しい
皮肉な話ですが、
「正しく入力しよう」とするほど
記帳は止まり、数字は見えなくなります。
一方で、
「判断だけして、先に進む」
と決めた社長ほど、
- 数字を見る頻度が増え
- 気づきが増え
- 結果的に修正も早くなります
今日の一言
「会計ソフトを正しく使おうとするな。
判断ルールを決めて、止まらずに使え。」
