
― 値上げは「裏切り」ではなく、「構造を正直にする行為」―
「値上げしたら、お客さんに嫌われますよね?」
事業構造転換のSTEP3、
収益構造・価格の話に入った瞬間、
多くの社長の表情が一気に曇ります。
- 値上げしたら、離れられるんじゃないか
- 今までの関係が壊れるんじゃないか
- 自分が強欲だと思われないか
そして、こう結論づけてしまう。
「値上げは、できればやりたくない」
中には、はっきりこう言う社長もいます。
「値上げって、悪いことじゃないですか?」
でも、ここで一度立ち止まって考えてみてください。
本当に「値上げ=悪」なのでしょうか?
なぜ社長ほど「値上げ=悪」だと思い込むのか
この思い込みには、理由があります。
① お客さんとの関係を大切にしてきたから
小規模な会社ほど、
お客さんとの距離は近い。
顔が見える分、
「お金の話」を持ち出すのが怖くなる。
② 過去の経験がトラウマになっている
- 値上げの話をしたら渋い顔をされた
- 断られた経験がある
たった一度の経験が、
「値上げ=地雷」という認識を作ります。
③ 値付けに“自信”ではなく“罪悪感”がある
「この金額、もらっていいのかな…」
という気持ちがあると、
値上げは「申し訳ない行為」になります。
でも、ここで重要なことがあります。
値上げが怖いのは、
価格そのものではなく、
価格を説明できないことです。
ケース① 値上げを避け続けた結果、何が起きたか
ある社長は、10年以上、
一度も値上げをしていませんでした。
理由はシンプルです。
「お客さんが嫌がると思って」
その結果どうなったか。
- 原価は上がる
- 作業量は増える
- 社長の手取りは減る
それでも、値上げはしない。
最終的に起きたのは、
「忙しいのに、将来が見えない会社」
社長はこう言いました。
「値上げしなかったから、
お客さんを守れたと思っていました」
でも実際には、
- 社員の昇給ができない
- 投資ができない
- 社長が疲弊している
会社そのものが、守れていなかったのです。
値上げとは「関係を壊す行為」ではない
ここで、認識を変えましょう。
値上げとは、
- お客さんを裏切る行為
ではなく - 自分たちの提供価値と価格を一致させる行為
です。
むしろ、構造がズレたまま続ける方が、
長期的には関係を壊します。
なぜなら、
- 余裕がなくなる
- 対応が雑になる
- 本来やるべきことができなくなる
結果、
「安いけど微妙な会社」
になってしまう。
これは、
お客さんにとっても不幸です。
「値上げ」と「値付け」は別物
ここで、多くの社長が混同している点があります。
- 値上げ
- 値付け(価格設計)
この2つは、まったく別です。
値上げ
今の構造のまま、
単純に金額だけを上げること。
値付け(設計)
提供価値・業務内容・責任範囲を整理し、
その構造に合った価格を決めること。
怖いのは前者です。
本来やるべきなのは、後者です。
ケース② 値上げではなく「設計」をやった会社
別の会社では、
「値上げはしませんでした」。
代わりにやったのは、
- サービス内容を整理
- やらないことを明確化
- 提供範囲を言語化
結果、
- 価格は上がった
- でもクレームはゼロ
- むしろ納得感が増した
お客さんからは、こう言われました。
「何をしてくれる会社か、
前より分かりやすくなりましたね」
これが、
値上げではなく、設計の効果です。
社長が値上げを怖がる本当の理由
もう一段、深く掘ります。
社長が本当に怖いのは、
「断られること」ではありません。
「自分の価値を否定されること」
です。
価格は、
自分たちの仕事そのものと結びついている。
だから、
- 高いと言われる
= - 価値がないと言われた
と、無意識に感じてしまう。
でも、ここは切り離してください。
価格への反応は、
あなた個人への評価ではありません。
値段を下げても、感謝されるとは限らない
よくある誤解があります。
「安くすれば、喜ばれる」
確かに、
一瞬は喜ばれます。
でも、その後どうなるか。
- 要求は増える
- 感謝は減る
- 当たり前になる
そして最終的に、
「安いから頼んでいるだけ」
という関係になります。
これは、
長く続けたい関係でしょうか?
価格は「会社の覚悟」を表す数字
価格とは、
- 原価+利益
だけで決まるものではありません。
そこには、
- どこまで責任を持つのか
- どんな関係を築きたいのか
- どんな会社でありたいのか
社長の覚悟が、
そのまま数字になります。
だから、価格を決めきれないとき、
迷っているのは「お金」ではなく、
「どんな会社でいたいか」
なのです。
値上げを考える前に、社長がやるべき3つの整理
いきなり価格表を見直す必要はありません。
まずは、これを整理してください。
- 今、何に一番時間を使っているか
- その時間は、誰のための価値か
- その価値は、価格に反映されているか
この3つがズレていれば、
価格もズレています。
値上げできない会社は、構造転換が止まる
はっきり言います。
STEP3を避け続けると、
事業構造転換は必ず止まります。
- 利益が出ない
- 投資できない
- 人に任せられない
結果、
社長が一生、現場に縛られる。
これは、
能力や努力の問題ではありません。
価格設計の問題です。
値上げは「最後の手段」ではない
多くの社長は、
値上げを「追い込まれたときの手段」
だと思っています。
でも実際は逆です。
構造を整えた結果、
自然に決まるもの。
だから、
- 無理に勇気を出す必要はない
- 感情で決める必要もない
設計すれば、
数字はあとからついてきます。
今日の一言
値上げは悪ではない。
構造をごまかさず、正直にする行為だ。
次回は、
「社長が仕事を手放せない理由(STEP4)」
業務構造の迷いに進みます。
