④判断基準がない会社では、正解が毎回変わる


― 「昨日はOK、今日はNG」が起きる本当の理由 ―

「それ、前はOKって言ってませんでした?」

現場から、こんな一言を言われたことはありませんか?

  • 「前回は通ったのに、今回はダメなんですね」
  • 「結局、どういう基準なんでしょうか?」
  • 「社長の気分次第ってことですか?」

言われた瞬間、胸がチクっとします。
そして多くの社長は、こう返します。

「いや、そういうわけじゃないんだけど…今回は状況が違って」

このやり取り、実はとても危険です。

なぜならこれは、
会社の中に“判断基準が存在していない”サイン
だからです。

判断がブレる会社で、何が起きているのか

判断基準がない会社では、日常的にこんなことが起きます。

  • 同じような相談なのに、結論が毎回違う
  • 誰に聞くかで答えが変わる
  • 最後は「社長の一言待ち」になる

そして現場は、こう学習します。

「どうせ基準はない」
「最後は社長の感覚」
「自分で考えるより、聞いた方が早い」

結果どうなるか。

  • 判断は社長に集中
  • 社長はさらに忙しくなる
  • 現場は判断しなくなる

これは能力の問題ではありません。
構造の問題です。

「判断基準」とは、ルールブックではない

ここで一つ、誤解を解いておきましょう。

判断基準というと、多くの人がこう考えます。

  • 分厚いマニュアル
  • 細かいルール
  • 例外のない決まりごと

でも、それは違います。

経営における判断基準とは、

迷ったときに、どこに立ち戻るか

を決めておくことです。

完璧な答えを用意することではありません。
ブレない軸を用意することです。

なぜ、人は「基準なし」で判断してしまうのか

ではなぜ、多くの会社には判断基準がないのでしょうか。

理由はシンプルです。

  • これまで、なんとかなってきた
  • 社長の経験と勘で回ってきた
  • 言語化・数値化する必要がなかった

特に創業期や少人数の会社では、
社長の頭の中に基準がある状態でも回ります

問題は、こういう段階に入ったときです。

  • 人が増えた
  • 相談件数が増えた
  • 社長が全部を見るのが物理的に無理になった

このタイミングで基準がないと、
一気に歪みが出ます。

ケーススタディ|D社で起きていた「判断の混乱」

従業員30名ほどのD社。
業績は悪くありません。

ただ、社内はいつもザワついていました。

  • 「A案件は通ったのに、B案件はなぜダメ?」
  • 「部門によって対応が違う」
  • 「結局、社長に聞かないと分からない」

社長本人は、こう言っていました。

「ちゃんと考えて判断してるんですけどね…」

実際そうなのです。
一つひとつの判断は、間違っていない。

問題は、
判断の“理由”が共有されていなかったこと。

社長の頭の中では、

  • 利益率
  • 将来性
  • 今の余力

といった要素を総合して判断していました。

でも、それが
言葉にも、数字にもなっていなかった

だから現場から見ると、
「基準がコロコロ変わる会社」
に見えていたのです。

判断基準がないと、社長自身も苦しくなる

この状態、一番つらいのは誰でしょうか。

実は、
社長本人です。

  • 毎回、判断理由を考え直す
  • 過去の判断と整合性を取る
  • 後から「本当にあれで良かったのか」と悩む

つまり、

社長自身が、自分の判断を信じきれない状態

になります。

これは、かなり消耗します。

判断基準がないとは、
社長が自分の軸を外に出していない状態
なのです。

判断基準は「数字」で固定する

では、どうすればいいのか。

答えは明確です。

判断基準を、数字で固定する

なぜ数字なのか。

  • 感覚よりもブレにくい
  • 他人と共有できる
  • 後から検証できる

からです。

例えば、こんな形です。

  • 利益率が○%以上ならOK
  • 投資回収が○年以内ならGO
  • このKPIを下回ったら見直す

大事なのは、
完璧な数字を探すことではありません。

「今の自分たちは、
何を優先して判断する会社なのか」
を、数字で“仮決め”することです。

「でも、数字だけでは決められない」問題

ここで、必ず出てくる反論があります。

「経営は数字だけじゃないですよね?」

はい、その通りです。

  • 人の気持ち
  • タイミング
  • 将来の可能性

数字に表れない要素は、確実にあります。

ただし、ここで大事なのは順番です。

❌ 数字も見る、感覚も見る、雰囲気も見る
まず数字で線を引き、最後に感覚を使う

判断基準を数字で置くのは、
感覚を排除するためではありません。

感覚を使う“範囲”を決めるため

です。

正解が変わる会社/変わらない会社の違い

ここで、両者を比べてみましょう。

判断基準がない会社

  • 状況説明が毎回長い
  • 「今回は特別」が多い
  • 決断後もモヤモヤが残る

判断基準がある会社

  • 判断が早い
  • 説明がシンプル
  • 現場が納得しやすい

重要なのは、
判断の中身が100点かどうかではありません。

判断の“再現性”があるかどうか

です。

判断基準を決めることは、社長の覚悟を示すこと

最後に、少しだけ踏み込んだ話をします。

判断基準を決めるということは、

  • 何を優先する会社なのか
  • 何を犠牲にする可能性があるのか

を、社長自身が引き受けるということです。

だから怖い。
だから先延ばしになる。

でも、ここを曖昧にしたままでは、

  • 社長は永遠に判断から解放されない
  • 組織は社長待ちから卒業できない

のです。

次回予告

社長がいなくても回る会社は、何を確認しているのか
― 「決めた通りに回っているか」を見るだけの仕事へ ―

今日の一言

判断がブレるのは、能力の問題ではない。
「戻る基準」を決めていないだけだ。


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