
黒字なのに不安、という一番つらい状態
「決算書は黒字なんです」
「でも、正直あまり安心できていません」
「通帳を見ると、なぜか気が重い」
この感覚、覚えがありますか?
これは経営者としておかしい状態ではありません。
むしろ、ちゃんと経営している社長ほど陥りやすい違和感です。
今回のテーマは、その正体。
「利益」と「キャッシュ」は、まったく別物だという話です。
利益とは何か?|成績表であって、現金ではない
まず、利益の正体から。
利益とは、
「一定期間の経営活動を、会計ルールで評価した結果」
です。
ここで大事なのは、
利益=お金が増えた、ではないという点。
利益は、
・まだ回収していない売上
・すでに払ったけど、分割で計上する費用
・帳簿上の調整
こうしたものを全部ひっくるめた評価点です。
つまり利益は、
通知表の点数みたいなもの。
良い点を取っても、財布の中身が増えるとは限りません。
キャッシュとは何か?|会社の血液そのもの
一方、キャッシュは極めてシンプルです。
- 通帳に今、いくらあるか
- 今日・来月、実際に払えるか
これだけ。
キャッシュは、
会社が「生きているかどうか」を決める血液です。
極端な話、
利益が出ていなくても、キャッシュがあれば会社は続きます。
逆に、
利益が出ていても、キャッシュが尽きたら終わりです。
なぜ利益とキャッシュはズレるのか
では、なぜこの二つはズレるのでしょうか。
スモールビジネスで多い原因は、だいたい次の3つです。
① 売上は立っているが、まだ入金されていない
売上=入金、ではありません。
- 請求書は出した
- 売上は計上されている
- でも入金は来月・再来月
この時点で、
利益はあるが、キャッシュはない状態になります。
成長期ほど、ここで苦しくなります。
② 設備投資・一括支払いの存在
機械、車、システム導入。
これらは、キャッシュは一気に減りますが、
利益上は分割(減価償却)されます。
結果として、
「お金は出ていったのに、利益はそんなに減っていない」
という違和感が生まれます。
③ 借入返済は、利益計算に出てこない
これが意外と盲点です。
借入金の元本返済は、
利益計算には一切登場しません。
でも、通帳からは確実にお金が出ていきます。
つまり、
「黒字なのに、毎月なぜか苦しい」
という状態が、簡単に生まれます。
社長がやるべきことは、難しい分析ではない
ここで、「キャッシュフロー計算書を勉強しなきゃ」と
身構える必要はありません。
虎の穴的・最初の一歩は、これだけです。
- 利益と通帳残高を、必ず並べて見る
- 「今月ズレた理由」を一言で説明できるか考える
売掛金が増えた
投資をした
返済があった
理由が言語化できれば、恐怖は半分消えます。
利益はハンドル、キャッシュはガソリン
ここで、比喩で整理します。
- 利益:どこに向かっているか(ハンドル)
- キャッシュ:どこまで走れるか(ガソリン)
ハンドルだけ良くても、ガソリンがなければ止まる。
ガソリンだけあっても、ハンドルが狂っていれば事故る。
両方を見るのが、社長の仕事です。
今日の「虎の巻」→ 黒字倒産は、数字が原因ではない
黒字倒産は、経営が下手だから起きるのではない
利益とキャッシュを、同じものだと思ってしまうから起きる
