①売上が上がっても、会社は強くならない


――売上・利益・お金は、まったくの別物・第1回――

「まずは売上を上げよう」という呪文

経営の話になると、ほぼ必ず出てくる言葉があります。

「まずは売上を上げないと始まらないよね」

この言葉、間違っているようで、
半分だけ正しく、半分は危険です。

なぜなら、売上は上がっているのに、

・会社は楽にならない
・社長は忙しくなる一方
・お金の不安はむしろ増えている

そんな会社が、世の中には山ほどあるからです。


売上が伸びたのに、なぜか不安が増える社長たち

実際によくある相談です。

「去年より売上は1.5倍なんです」
「でも、なぜか前より苦しいんですよね…」

数字だけ見ると、成長企業です。
周りからも、こう言われます。

「順調ですね」
「調子いいじゃないですか」

それでも社長本人は、こう感じています。

「このままで大丈夫なのか分からない」

この違和感こそが、
売上だけを見て経営しているサインです。


売上は「頑張った量」でしかない

まず、大前提として整理しておきましょう。

売上とは何か?

それは――
「どれだけ動いたか」「どれだけ取引したか」
を表す数字です。

・たくさん売った
・たくさん働いた
・たくさん回した

その結果が、売上です。

つまり売上は、
努力量・稼働量の指標にすぎません。


売上が増える=負担も増える

ここで、あまり語られない事実があります。

売上が増えると、同時にこうなります。

・仕入れが増える
・外注費が増える
・人件費が増える
・ミスやトラブルも増える

売上アップは、
会社にとって負荷テストでもあるのです。

それなのに、

「売上さえ上がれば何とかなる」

この考えだけで突っ走ると、
会社はどんどん消耗していきます。


ケース①:売上2倍、利益はほぼゼロ

あるサービス業の会社の話です。

・売上:前年比200%
・スタッフも増員
・仕事は途切れない

一見、絶好調です。

ところが、決算を見てみると、

・利益はほぼ横ばい
・キャッシュは減少
・社長は現場に出ずっぱり

理由は明確でした。

✔ 単価は上がっていない
✔ 人を増やすほど固定費が増えた
✔ 忙しさに比例してムダも増えた

売上は伸びた。
でも、会社の体力はまったく強くなっていなかったのです。


売上と「強さ」は別の話

ここで、今日のテーマの核心に入ります。

売上が上がることと、会社が強くなることは、別物です。

会社の強さとは何か?

・多少売上が落ちても耐えられる
・判断を焦らなくていい
・社長が冷静でいられる

こうした状態を支えているのは、
売上ではありません。


「強い会社」を作っているのは、別の数字

強い会社に共通しているのは、

・売上よりも
・成長率よりも

「残るかどうか」を重視している点です。

つまり、

・利益
・キャッシュ
・固定費とのバランス

こちらを見ています。

売上は、あくまでその結果です。


売上が上がるほど、社長が苦しくなる理由

売上重視経営の怖いところは、
社長の感覚がズレていくことです。

・忙しい=うまくいっている
・電話が鳴る=成長している
・仕事が多い=安心

でも実際は、

忙しさと安心感は、比例しない

むしろ逆で、

✔ 忙しいほど考える時間がなくなる
✔ 数字を見る余裕がなくなる
✔ 判断が遅れる

こうして、
売上に振り回される経営になっていきます。


ケース②:売上を追うのをやめたら、会社が楽になった

別の会社の例です。

・売上はあえて横ばい
・仕事を選ぶようにした
・単価を少し上げた

結果、

✔ 利益率が改善
✔ キャッシュが安定
✔ 社長の残業が減った

売上至上主義をやめただけで、
会社の「質」が変わりました。

社長はこう言います。

「売上を減らす決断が、一番怖かった」
「でも、一番効きました」


売上はアクセル、利益とお金はハンドルとブレーキ

分かりやすく例えるなら、

・売上=アクセル
・利益=進む方向
・お金=ブレーキと安全装置

アクセルだけ踏み続けると、
どうなるでしょうか。

事故ります。

経営も同じです。


管理会計が見るのは「売上の先」

ここで、管理会計の出番です。

管理会計は、

・売上を否定しません
・売上を軽視もしません

ただし、こう問いかけます。

「その売上は、
会社を強くしていますか?」

・残っていますか?
・楽になっていますか?
・選択肢は増えていますか?

この問いに答えられない売上は、
追う価値が薄いのです。


売上が上がらなくても、会社は強くできる

ここが、多くの社長が救われるポイントです。

・売上が急に伸びなくてもいい
・派手な成長でなくていい

✔ 利益率を整える
✔ キャッシュの流れを把握する
✔ 固定費をコントロールする

これだけで、
会社は確実に強くなります。


「売上が正義」という思い込みを外す

売上は、分かりやすい数字です。
だからこそ、安心感があります。

でも、その安心感は時に、
社長を一番苦しめます。

「売上はあるのに、不安」

この状態から抜けるには、
売上以外の数字を、ちゃんと味方につけることです。


今日の一言

売上は、頑張った証拠。
でも、会社を守るのは
「残る仕組み」を見ている社長だけ。


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