
― 社長の「勘」は、捨てるものではない ―
感覚経営は、本当に「悪」なのか?
「うちは感覚経営だからさ」
少し自嘲気味に、そう話す社長は少なくありません。
どこかに、
感覚経営=遅れている・危ない・未熟
という空気があるからでしょう。
一方で、こんな声もよく聞きます。
「数字経営って、なんだか冷たく感じる」
「現場を分かっていない人の机上の空論みたいで…」
感覚経営にも違和感がある。
数字経営にも、しっくり来ない。
虎の穴に来られる社長の多くは、
この“宙ぶらりん”な感覚を抱えています。
この記事で、まず最初にお伝えしたいことがあります。
感覚経営は、悪ではありません。
問題は、
感覚だけで走り切ろうとすること。
あるいは、
数字で感覚を否定しようとすること。
感覚と数字の関係を、
ここで一度、整理してみましょう。
数字経営に違和感を持つ理由
「数字で経営しましょう」と言われた瞬間、
多くの社長の頭には、こんなイメージが浮かびます。
- エクセルだらけ
- 会議で数字を詰められる
- 感覚や経験が軽視される
特に、現場叩き上げの社長ほど、
この違和感は強くなります。
「数字だけ見てたら、現場は回らないよ」
これは、半分正解です。
数字は、現場を動かす力を持っていません。
動かすのは、人であり、判断です。
だからこそ虎の穴では、
数字経営=数字中心の経営
とは考えていません。
では、何が分かれ目になるのか。
それを章ごとに見ていきましょう。
感覚は「敵」ではない
現場感覚の価値を、軽く見てはいけない
まず、はっきりさせます。
社長の感覚は、極めて価値が高い。
- 現場で何が起きているか
- お客さんが何を求めているか
- 社員がどこで疲弊しているか
これらは、
数字よりも先に、感覚として表れます。
ある飲食業の社長の話です。
「最近、このメニュー、出てる数字は悪くないんだけど
なんか“無理してる感”があるんだよね」
後から数字を見直すと、
- 原価率は上昇
- 仕込み時間が増加
- 現場の負担が増えていた
感覚は、
数字が崩れる“予兆”を捉えていたのです。
ベテラン社長の強みは、ここにある
経験を積んだ社長ほど、
判断が早い理由があります。
- 似た状況を何度も見てきた
- 失敗のパターンを体で知っている
これは、
言語化されていないデータベースです。
AIにも、若手にも、簡単には真似できません。
虎の穴では、
この感覚を「曖昧なもの」として扱いません。
磨くべき資産として扱います。
感覚だけに頼ると起きること
説明できない判断が、組織を止める
感覚が強みになるのは、
一人で経営している間までです。
組織ができ始めると、
こんな場面が増えてきます。
- 「なぜ、この判断なんですか?」
- 「どういう基準で決めたんですか?」
このとき、
「なんとなく」「今までの経験で」
しか答えられないと、何が起きるか。
組織がついてこなくなります。
判断はあっていても、
納得が得られない。
社長の頭の中だけで完結してしまう
感覚経営の最大の弱点は、
再現性がないことです。
- 社長がいると回る
- 社長がいないと止まる
これでは、
- 人が育たない
- 任せられない
- 社長が休めない
という状態になります。
感覚は重要ですが、
共有できなければ、経営には使えない。
ここで、数字の出番がやってきます。
数字は、感覚を裏切らない
数字は「感覚の仮説検証」である
虎の穴では、
数字をこう位置づけています。
数字は、感覚を検証するための道具
感覚が先。
数字は後。
例えば、
- 「この事業、伸びそうな気がする」
- 「この固定費、ちょっと重い気がする」
これを、
- 売上構成
- 粗利率
- 固定費比率
で確認する。
数字は、
感覚を否定するためではなく、
支えるために使うものです。
対立ではなく、「補完」の関係
感覚と数字は、
どちらかを選ぶものではありません。
- 感覚だけ → 独りよがり
- 数字だけ → 血が通わない
この2つが揃ったとき、
初めて「経営判断」になります。
ある製造業の社長は、こう言いました。
「数字を見るようになって、
勘が鈍ったと思ってたけど、逆だった
勘に“自信”が持てるようになった」
これが、
感覚×数字の理想的な関係です。
虎の穴が目指す経営の姿
感覚 × 数字 × 意思決定
虎の穴が目指しているのは、
この三点がつながった状態です。
- 社長の感覚が出発点
- 数字で構造を確認
- 社長が決める
どれが欠けても、成立しません。
特に大事なのは、
最後に「決める」こと。
数字が良くても、
やらないと決める。
数字が悪くても、
挑戦すると決める。
これが、社長の仕事です。
社長が孤独にならない経営
感覚だけの経営は、孤独です。
- 誰にも分かってもらえない
- 説明できない
- 相談しても、ズレる
数字があると、
対話が生まれます。
- 税理士と
- 幹部と
- 外部の専門家と
虎の穴がやっているのは、
社長の感覚を、共有可能な形にすることです。
それが、
社長を孤独にしない経営につながります。
数字は、社長の味方である
感覚経営と数字経営の分かれ目は、
ここにあります。
- 感覚を信じるか、捨てるか
ではなく - 感覚を一人で抱えるか、数字で共有するか
数字は、
社長を縛るものではありません。
社長の感覚を、守り、強くする味方
それが、虎の穴が考える
「数字経営」です。
今日の一言
数字経営とは、感覚を捨てることではない。
感覚を、独りで抱え込まないための技術である。
