
――成長は、設計しないと壊れる・第4回――
「成長すれば、だいたい全部よくなる」という勘違い
「会社を成長させたいんです」
これは、ほぼすべての社長が口にする言葉です。
でも、その言葉の裏にある前提をよく聞いてみると、
こんなイメージを持っている方が少なくありません。
- 売上が増える
- 利益も増える
- 人も増える
- 会社は安定する
要するに、
成長=良いことが全部増える
というイメージです。
ですが、現実は少し(いや、かなり)違います。
成長とは「増えるもの」と「必ず壊れるもの」のセット
まず、はっきり言います。
成長とは、何かが増えると同時に、
何かが必ず壊れる現象です
これは例外がありません。
売上が増えれば、
・業務量が増える
・判断回数が増える
・トラブルも増える
人が増えれば、
・意思疎通のコストが増える
・価値観のズレが生まれる
・管理が必要になる
成長とは、
シンプルだった世界が、複雑になることでもあるのです。
「成長痛」は偶然ではなく、構造的に起きる
よく、こんな表現がされます。
「今は成長痛だから仕方ない」
一見、前向きな言葉ですが、
私はこの言葉を聞くたびに少し違和感を覚えます。
なぜなら、
成長痛は、放っておくと“慢性痛”になる
からです。
痛みが出る場所は、だいたい決まっています。
- 社長が忙しすぎる
- 現場が回らない
- お金は動いているのに、残らない
これらは偶然ではなく、
成長によって壊れた構造を、設計し直していないサインです。
ケーススタディ①:売上が2倍になったのに、社長が限界になった会社
あるサービス業の会社。
2年間で売上は約2倍。
外から見れば、順風満帆です。
しかし、社長はこう言いました。
「正直、今が一番つらいです」
理由を聞くと、
- すべての判断が社長に集中
- 社員は増えたが、任せられない
- クレーム対応も社長
つまり、
売上は増えたが、
“社長が一人で回す構造”は壊れていなかった
のです。
本来、成長に合わせて壊すべきだったのは、
「社長が全部見る」という働き方。
しかし、それを壊さずに売上だけを伸ばした結果、
社長が限界を迎えていました。
成長とは「壊していいもの」を決める行為
ここで大事な視点があります。
成長とは、守ることではなく、
壊すことを選ぶ行為でもある
という視点です。
- これまでのやり方
- これまでの判断スピード
- これまでの関わり方
すべては、
ある規模までしか通用しない仮設の仕組みです。
成長とは、その仮設を卒業するプロセスでもあります。
壊れるのに、一番時間がかかるもの
成長によって壊れるものの中で、
一番やっかいなのは何か。
それは、
社長自身の「感覚」
です。
- 昔は肌感覚で分かった
- 昔は全員の顔が見えた
- 昔は即断できた
規模が大きくなると、
この感覚は必ずズレます。
それでも、
「今までこれでやってきたから」
と感覚に頼り続けると、
判断ミスが増え、疲弊します。
ケーススタディ②:数字を見始めたことで、成長が安定した会社
別の会社の例です。
売上が伸び始めたタイミングで、
社長はこう言いました。
「そろそろ、
感覚経営を卒業しないと危ない気がする」
そこで始めたのが、
- 月次での数字確認
- 成長による負荷の可視化
- 無理な部分の修正
結果、
- 成長スピードは少し落ちた
- でも、社内は安定
- 社長のストレスも激減
この社長は、
「壊れる前に、壊すべきものを壊した」
のです。
成長すると「増えるもの」一覧
ここで一度、整理してみましょう。
成長すると、確実に増えるもの。
- 売上
- 業務量
- 判断回数
- トラブルの種類
- 社内の多様性
これは避けられません。
問題は、
それに耐える構造を、
用意しているかどうか
です。
成長すると「壊れやすいもの」一覧
一方で、壊れやすいもの。
- 社長の時間
- 現場との距離
- 情報の透明性
- お金の見えやすさ
これらは、
意識しないと確実に壊れます。
そして壊れたあとで気づくと、
修復コストは一気に跳ね上がります。
成長設計とは「壊れる前提」で考えること
ここで、第1回からの話とつながります。
成長は、願うものではなく、設計するもの
設計とは、
- 何が増えるかを予測する
- 何が壊れるかを先に想定する
- 壊れる前に、手を打つ
この一連の思考です。
「壊れてから直す」ではなく、
「壊れる前に組み替える」。
これが、成長設計の核心です。
今日の一言
成長とは、増えることではない。
増えることによって、壊れるものをどう扱うかで、
会社の未来は決まる。
