⑫成長をコントロールできる社長、できない社長


――成長は、設計しないと壊れる・第12回――

同じ「成長したい」でも、結果が真逆になる理由

世の中の社長は、ほぼ全員こう言います。

「もっと成長したい」
「会社を大きくしたい」
「次のステージに行きたい」

ところが現実を見ると、

  • 安定的に成長し続ける会社
  • 成長の途中で息切れする会社
  • 成長したはずなのに、社長が一番苦しくなる会社

に、きれいに分かれます。

この差は、
努力量でも、才能でも、覚悟でもありません。

決定的な違いは、たった一つ。

成長を“コントロールできているかどうか”

です。


成長を「起こそうとする社長」と「扱える社長」

まず、成長をコントロールできない社長の特徴から見ていきましょう。

成長をコントロールできない社長

  • 成長は「起きるもの」
  • 売上が伸びる=成功
  • 問題は後から対処するもの

一方で、

成長をコントロールできる社長

  • 成長は「扱うもの」
  • 売上は成長要素の一部
  • 問題は“事前に起きる前提”で考える

この認識の差が、
すべての判断を分けていきます。


「売上が伸びているのに苦しい」社長の正体

多くの社長が、一度はこの壁にぶつかります。

  • 売上は過去最高
  • 仕事は増えている
  • でも、なぜか不安が消えない

このとき、成長をコントロールできない社長はこう考えます。

「まだ足りない」
「もっと伸ばさないと」
「ここで止まったら負けだ」

しかし、実際に起きているのは、

成長の“副作用”を把握できていない状態

です。


成長には、必ず「増えるもの」と「壊れるもの」がある

これまでの回でも触れてきましたが、
ここで改めて整理します。

成長すると、必ず増えます。

  • 売上
  • 業務量
  • 意思決定の数

同時に、必ず壊れ始めます。

  • 情報の透明性
  • 社長の把握力
  • 現場との距離感
  • キャッシュの余裕

成長をコントロールできない社長は、
「増えるもの」だけを見ます。

コントロールできる社長は、
「壊れ始めるもの」を先に見ます。


ケーススタディ①:成長を止められなかった社長

ある制作会社。

  • 案件は次々と増加
  • 紹介も止まらない
  • 社長は営業も現場もフル稼働

数字上は、順調な成長。

しかし、

  • 社長の判断が遅れる
  • 原価管理が曖昧になる
  • 利益率が下がっていることに気づかない

結果、

「忙しいのに、なぜかお金が残らない」

成長はしているが、
誰もコントロールしていない状態でした。


ケーススタディ②:成長を“絞った”社長

別のITサービス業。

  • 問い合わせは増加中
  • しかし社長は、あえて受注制限
  • 利益率と対応可能人数を優先

売上成長は鈍化しました。

それでも社長はこう言います。

「今は、このサイズが一番安全で、強い」

結果、

  • 社内の判断スピードが向上
  • 管理会計がきれいに回る
  • 次の成長の準備が整った

これは、

成長を“止めた”のではなく、
“コントロールした”例

です。


成長をコントロールできる社長が握っている3つの視点

では、成長をコントロールできる社長は、
具体的に何を見ているのでしょうか。

① 成長スピード

「どれくらい伸びているか」ではなく
「どれくらいの速さか」。

② 成長コスト

売上を1円増やすために、
何がどれだけ増えているか。

③ 成長耐久力

今の組織・仕組みは、
あとどれくらい耐えられるか。

この3つを、
常に数字と感覚の両方で見ています。


成長をコントロールできない社長の思考パターン

逆に、うまくいかない社長の思考はとても共通しています。

  • 「いけるところまでいく」
  • 「今は踏ん張りどころ」
  • 「忙しいのは良いこと」

これらは一見ポジティブですが、

コントロールを放棄する言葉

でもあります。


管理会計は「成長のハンドル」である

ここで、管理会計の位置づけをはっきりさせましょう。

管理会計は、成長を速くするための道具ではない

成長を“曲がる・止まる・戻る”ためのハンドル

です。

ハンドルがない車は、
アクセルを踏めば踏むほど危険になります。

成長も、まったく同じです。


成長をコントロールできる社長の決断は、静かで早い

成長をコントロールできる社長ほど、

  • 大きな号令を出さない
  • 感情的に動かない
  • 修正を当たり前にする

決断は派手ではありません。

しかし、

小さな修正を、何度も、早く打つ

これができるから、
大きな事故を起こしません。


このシリーズの最終結論

『成長は、設計しないと壊れる』

この言葉の本当の意味は、こうです。

成長とは、拡大することではない

成長とは、社長が“扱える範囲”を
少しずつ広げていくこと

売上でも、人数でもありません。

社長のコントロール範囲こそが、
会社の成長限界

なのです。


今日の一言

成長をコントロールできない社長は、
成長に振り回される。
コントロールできる社長だけが、
成長を味方につけられる。


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