
――成長は、設計しないと壊れる・第10回――
「いい計画だった」で終わる会社の共通点
このシリーズを通して、
- 成長とは何か
- 何を伸ばし、何を止めるべきか
- 管理会計がなぜ必要か
を整理してきました。
ところが、ここで非常に多い落とし穴があります。
それは――
成長計画が、
“作っただけ”で終わること
です。
- 事業計画は作った
- 数字も一通り並んでいる
- 銀行にも説明した
でも、日々の経営に戻ると、
「結局、いつも通り忙しい」
「判断は、その場の感覚」
こうなってしまう。
これは計画が悪いのではありません。
“使い方”が決まっていないだけなのです。
成長計画の本当の役割とは?
まず、はっきりさせておきましょう。
成長計画の役割は、
- 未来を予測すること
- 正解を当てること
ではありません。
本当の役割は、これです。
日々の意思決定の「軸」を作ること
つまり、
- この判断は、計画に沿っているか?
- 今月やるべきことは何か?
- やらないと決めるべきことは何か?
これを考えるための道具です。
「年1回の計画」では、成長は設計できない
多くの会社では、
- 年度初めに事業計画
- 年度末に振り返り
この2点だけで終わります。
しかし、現実の経営は、
- 毎月
- 毎週
- 毎日
判断の連続です。
年1回しか見ない計画が、
日々の判断を導けるはずがない
だからこそ必要なのが、
「毎月、計画を使う」仕組み
です。
成長計画を“毎月使う”とはどういうことか?
難しく考える必要はありません。
やるべきことは、シンプルです。
計画と実績を、毎月並べて見る
これだけです。
- 売上
- 利益
- 固定費
- キャッシュ
これを、
- 計画
- 実績
- 差
で見る。
ポイントは、
差が出た理由を“責めずに”考えることです。
「未達=失敗」ではない
ここで、多くの社長が
数字を見るのを嫌がります。
理由は単純。
「未達だと、気分が悪いから」
でも、これは大きな誤解です。
未達は、
- ダメだった証拠
- センスがない証拠
ではありません。
未達は、
設計と現実のズレが見えたということ
むしろ、
経営にとっては「良い情報」です。
ケーススタディ①:未達から、判断が変わった会社
あるITサービス会社。
月次で見ると、
- 売上は計画未達
- でも利益率は想定以上
社長は気づきました。
「売上を追うより、
この単価帯に集中した方がいい」
その結果、
- 売上目標を修正
- 営業方針を変更
- 利益は安定
もし月次で見ていなければ、
無理に売上を追い、
逆に壊れていた可能性があります。
毎月の意思決定に落とす3つの問い
成長計画を“生きたもの”にするには、
毎月、次の3つだけを問いましょう。
① 今月の数字は、どこがズレたか?
全体ではなく、
ズレた部分だけを見る。
② そのズレは、想定内か?
- 想定内 → 織り込み済み
- 想定外 → 設計を見直す
③ 来月、何を変えるか?
- やること
- やらないこと
を一つ決める。
これだけで、
計画は「使われる計画」になります。
毎月見る数字は、増やさなくていい
よくある間違いが、
「ちゃんと管理しよう」として、
数字を増やしすぎること
KPIだらけの資料は、
ほぼ確実に続きません。
おすすめは、
- 売上
- 粗利
- 固定費
- キャッシュ
この4つで十分です。
見続けられる数字こそ、
意味のある数字
です。
成長計画は「修正していい」
もう一つ、重要な話をします。
多くの社長は、
「計画を変える=負け」
と思っています。
でも実際は、逆です。
計画を修正できる会社ほど、
成長が長続きする
市場も、人も、
社内状況も変わる。
変わらない計画の方が、
よほど危険です。
ケーススタディ②:計画を“軽く”した会社
ある製造業。
以前は、
- 3年計画
- 細かい数値
- 修正は年1回
今は、
- 1年計画
- 月次で修正
- 大枠だけ死守
結果として、
- 判断が早くなり
- 社長のストレスも減り
- 数字への抵抗感が消えた
計画は、
縛るものではなく、助けるものです。
「計画 → 月次 → 意思決定」の循環を作る
成長が安定する会社は、
必ずこの循環を持っています。
- 成長計画を描く
- 月次で確認する
- 意思決定を少し変える
- 計画に反映する
この小さなサイクルを、
淡々と回しているだけです。
派手なことはしていません。
社長の仕事は「判断の質」を上げること
最後に、
社長の役割をはっきり言います。
社長の仕事は、
- 全部やること
- 現場を回すこと
ではありません。
意思決定の質を上げること
そのために、
- 計画があり
- 数字があり
- 振り返りがある
成長計画を毎月使うとは、
社長が“社長の仕事”をするということです。
今日の一言
成長計画は、未来のためではない。
来月の判断を、迷わないためにある。
