③損益分岐点は「計算するもの」ではなく「使うもの」


――限界利益を制する者が、経営を制する・第3回――

「損益分岐点、計算したことありますか?」

社長にこう聞くと、
だいたい次の3パターンに分かれます。

パターン①

「昔、どこかで習いました」

パターン②

「税理士さんが出してくれてます」

パターン③

「正直、よく分かってません」

実はパターン③が一番健全だったりします。

なぜなら、多くの会社では
損益分岐点を“計算しただけ”で終わっているからです。

  • 計算した
  • 表に出てきた
  • でも、使っていない

それなら、
「分からない」と言っているのと大差はありません。


損益分岐点は「覚える数字」ではない

最初に、はっきり言います。

損益分岐点は、覚える数字ではありません。

毎月、

  • 「うちの損益分岐点は○円だ!」

と暗記しても、
経営は1ミリも楽になりません。

損益分岐点の本当の価値は、

判断の基準になること

にあります。


そもそも損益分岐点とは何か?

とてもシンプルに言えば、

「ここを超えたら、やっと利益が出始めるライン」

です。

  • 売上 = 損益分岐点 → トントン
  • 売上 < 損益分岐点 → 赤字
  • 売上 > 損益分岐点 → 黒字

このラインを、
感覚ではなく、数字で知っているかどうか

ここが、
経営の安定感を大きく分けます。


なぜ損益分岐点が“使われない”のか?

理由は、とても単純です。

「難しそう」に見えるから

  • 計算式が分からない
  • 限界利益率?固定費?
  • なんだか会計っぽい

その結果、

  • 税理士任せ
  • 決算書の片隅に置かれる
  • 見ない数字になる

でも、損益分岐点は
本当は現場寄りの数字です。


損益分岐点は「固定費の重さ」を教えてくれる

損益分岐点を理解する最大のメリット。

それは、

固定費が、どれだけ自分を縛っているかが見えること

です。

  • 家賃
  • 人件費
  • リース料
  • 通信費

これらは、
売上があってもなくても出ていきます。

損益分岐点は、

「これだけ売らないと、
そもそもスタートラインにも立てない」

という、
経営の現実を教えてくれます。


ケーススタディ①:売上はあるのに、安心できない社長

ある社長の話です。

月商は、だいたい300万円。
一見、悪くない。

でも社長は、いつも不安でした。

  • 月末が近づくと落ち着かない
  • 売上が少し落ちると一気に不安
  • 気が休まらない

理由は、簡単でした。

この会社の損益分岐点は、
280万円だったのです。

つまり、

  • 300万円売って
  • 残るのは、ほんのわずか

これでは、
安心できるはずがありません。


損益分岐点を知ると、判断が変わる

この社長が損益分岐点を理解してから、
判断が変わりました。

それまでの判断軸は、

  • 「売上が増えるかどうか」

だけでした。

でも、変わった判断軸はこうです。

  • 「損益分岐点から、どれだけ余裕があるか」

すると、

  • 値下げに慎重になる
  • 固定費を増やす決断が重くなる
  • 無理な受注を断れる

心の余裕が生まれました。


損益分岐点は「安全ライン」

損益分岐点は、
経営における安全ラインです。

  • このラインを下回ると危険
  • 上回っていれば、ひとまず安全

だから、

損益分岐点が高い会社ほど、
経営はシビアになる

逆に言えば、

損益分岐点を下げられれば、
経営は一気に楽になる


損益分岐点を下げる方法は2つしかない

ここが重要です。

損益分岐点を下げる方法は、
実は2つしかありません。

① 固定費を下げる
② 限界利益率を上げる

これ以外、ありません。

  • 売上を増やす
    は、その後の話です。

ケーススタディ②:人を増やす前に見るべき数字

「そろそろ人を増やしたい」

よくある相談です。

このとき、多くの社長は、

  • 今、忙しいか
  • 売上が伸びているか

だけで判断します。

でも、見るべきはここ。

人を増やしたら、
損益分岐点はいくら上がるのか?

これを見るだけで、

  • 採用のタイミング
  • 給与水準
  • 業務の切り出し方

すべてが変わります。


損益分岐点は「未来を試算する道具」

損益分岐点は、
過去を振り返る数字ではありません。

「もし○○したら、どうなるか?」を考えるための数字

です。

  • 値上げしたら?
  • 値下げしたら?
  • 人を1人増やしたら?
  • 家賃が上がったら?

これらを、
感覚ではなく数字で想像できるようになります。


計算ができなくてもいい

ここで、安心して下さい。

損益分岐点は、

  • 自分で複雑な計算を
  • 毎回やる必要はありません

大事なのは、

  • 固定費がどれくらいか
  • 限界利益率がどれくらいか

この2つを、
ざっくり把握していることです。

完璧さより、
使うこと


損益分岐点を使わない経営は「度胸試し」

損益分岐点を知らずに経営するのは、

毎月、度胸試しをしているようなもの

  • 今月、いけるかな
  • 来月、大丈夫かな

不安が消えません。

でも、

損益分岐点を知っているだけで、
不安は「対策」に変わる

これが、最大の価値です。


今日の一言

損益分岐点は、計算して満足する数字ではない。
「ここを下回ると危ない」という
経営の安全ラインとして、使ってこそ意味がある。


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