
――社長が数字を嫌いになった日・第4回――
「自分は数字に向いていない」と思ったことはありませんか?
これまで、何人もの社長から
同じ言葉を聞いてきました。
「自分、数字は本当にダメで…」
「昔から苦手なんです」
「向いてないと思います」
でも、ここで一度、
立ち止まって考えてみてください。
本当に、それは能力の問題でしょうか?
数字アレルギー=才能の欠如、という思い込み
「数字が苦手」という言葉は、
とても便利です。
- 説明しなくて済む
- 深掘りしなくて済む
- 努力しなくて済む
でも同時に、
とても残酷でもあります。
これは一生変わらない
自分には無理だ
そう、
可能性にフタをしてしまう言葉でもあるからです。
でも冷静に考えると、おかしな点がある
ここで、
少しだけ事実を振り返ってみましょう。
- 社長は、商売を回してきた
- 売上を作り、原価を考え、人を雇ってきた
- 値段も、取引条件も、感覚で決めてきた
これって、本当に
「数字が分からない人」にできることでしょうか?
実は多くの社長は、
数字を使って経営してきたのです。
ただし、
意識せずに。
数字が分からなくなったのは「環境」が変わったから
数字アレルギーが生まれる最大の原因は、
能力ではありません。
数字に触れる環境が変わったことです。
具体的には、こんな変化です。
- 数字が「現場」から「資料」になった
- 数字が「自分の感覚」から「専門用語」になった
- 数字が「判断材料」から「評価材料」になった
この環境の変化が、
数字を一気に難しく、怖くしました。
【ケース①】現場では強いのに、会議室で弱くなる社長
ある製造業の社長の話です。
現場に出ると、
- 原価の高い工程
- 無駄な動き
- 効率の悪さ
を、瞬時に見抜きます。
ところが、
月次報告会になると、急に口数が減る。
「この数字、どう思いますか?」
と聞かれると、黙ってしまう。
理由は単純です。
現場では「自分の言葉」
会議室では「他人の言葉」
数字が、
翻訳されてしまっているのです。
数字は「抽象度」が上がるほど、人を不安にさせる
現場の数字は、
- 今日いくら売れた
- 仕入れが高かった
- 人が足りない
とても具体的です。
一方、
管理資料に出てくる数字は、
- 利益率
- キャッシュフロー
- 損益分岐点
一気に抽象度が上がります。
この抽象度の差が、
理解の断絶を生みます。
数字アレルギーは「学び方」を奪われた結果
本来、数字は、
- 試して
- 間違えて
- 修正して
身につくものです。
ところが社長は、
- 間違えられない
- 分からないと言えない
- 教えてもらえない
環境に置かれます。
これはもう、
能力以前の問題です。
【ケース②】Excelが原因で数字が嫌いになった社長
ある社長は、こう言いました。
「Excelを見ると、頭が真っ白になる」
よくよく話を聞くと、
原因は数字ではありません。
- 色付きのセル
- 数式がびっしり
- どこを見ればいいか分からない
環境が複雑すぎたのです。
数字アレルギーの正体が、
Excelアレルギーだった、
というケースは本当に多い。
環境を変えると、人は驚くほど変わる
逆に言えば、
環境を変えるだけで、数字は怖くなくなります。
- 数字を減らす
- 用語を翻訳する
- 判断に直結する形にする
管理会計の虎の穴が
「Excel1枚で十分」と言うのは、
能力を軽視しているからではありません。
余計な環境ノイズを消すためです。
管理会計とは「社長のための翻訳装置」
管理会計の本質は、
高度な分析ではありません。
- 社長の感覚を
- 社長の言葉で
- 数字にする
これがすべてです。
だから、
経理や会計の世界とは、
出発点が違います。
数字アレルギーは「治すもの」ではない
最後に、
とても大切なことを伝えます。
数字アレルギーは、
- 克服するものでも
- 鍛え直すものでも
- 恥じるものでもない
ただ、環境が合っていなかっただけです。
合わない靴で走れば、
誰だって転びます。
虎の穴は「才能を選別する場所」ではない
管理会計の虎の穴は、
強者だけが残る場所ではありません。
- 数字が怖かった人
- 分からないと言えなかった人
- 感覚で経営してきた人
そういう人が、
自分の感覚を武器に変える場所です。
今日の一言
数字アレルギーは、
あなたの能力の問題ではない。
合っていない環境に、
長く置かれていただけだ。
