
――財務会計は過去、管理会計は未来・第4回――
「決算書は読めます」社長が、なぜ迷い続けるのか
「決算書は、一応読めます」
多くの社長が、こう言います。
実際、
- 売上
- 利益
- 借入金
- 現預金
このあたりは把握している方がほとんどです。
それでも、こんな悩みが消えません。
- このまま進んでいいのか分からない
- 投資していいのか判断できない
- 断る勇気が持てない
なぜでしょうか。
理由はシンプルです。
「読める」と「使える」は、まったく別物だから
です。
決算書を「読む社長」の行動パターン
まずは、「読む社長」の典型例を見てみましょう。
- 決算書を開く
- 前年と比較する
- 良かった/悪かったを確認する
ここまでは、とても真面目です。
でも、その後こうなります。
- 「で、どうする?」が出てこない
- 判断は感覚に戻る
- 結局、前年踏襲
つまり、
数字を確認して、行動は変わらない
状態です。
【ケース①】決算書は毎年見るが、経営は変わらない会社
ある会社の社長は、
10年以上、欠かさず決算書を読んでいました。
でも、
- 価格設定
- 取引条件
- 事業構成
は、ほぼ変わっていません。
社長自身も、こう言います。
「見てはいるんですけどね…」
これが、「読む社長」の限界です。
数字を「使う社長」は、見ている場所が違う
一方で、「使う社長」は、
決算書の見方そのものが違います。
注目しているのは、
- 正しさ
- 形式
- 評価
ではありません。
見ているのは、常にこうです。
「次、何を決めるための材料か」
決算書を“質問に変換”できるかどうか
数字を使う社長は、
決算書を見ながら、こんな質問を自分に投げています。
- この利益は、どこから生まれた?
- これは再現性がある?
- 来期も同じ構造でいける?
つまり、
数字を「答え」ではなく「問い」として扱う
のです。
【ケース②】同じ決算書を見て、真逆の行動をした2人の社長
同業・同規模の2社。
どちらも、
- 売上1億円
- 利益500万円
という決算でした。
A社長(読む社長)
「とりあえず黒字だし、良しとしよう」
B社長(使う社長)
「この利益率で、この忙しさはおかしい」
結果、
- A社:翌年も同じ苦しさ
- B社:価格改定と仕事整理で利益倍増
決算書は同じ。使い方が違っただけです。
「読む社長」は安心を求め、「使う社長」は違和感を探す
ここに、決定的な違いがあります。
- 読む社長 → 安心したい
- 使う社長 → 違和感を見つけたい
読む社長は、
「黒字でよかった」
「資金は足りている」
で思考が止まります。
使う社長は、
「なぜこの数字なのか」
「このままで本当にいいのか」
と、思考を動かします。
決算書は「過去の成績表」にすぎない
ここで、はっきり言います。
決算書は、
過去の結果をまとめた成績表
です。
- 未来を保証しない
- 次の一手を教えてくれない
- 判断まではしてくれない
だから、
読むだけでは、経営は前に進まない
のです。
数字を使う社長は、決算書を“分解”する
数字を使う社長は、
決算書をそのまま受け取りません。
必ず、こう分解します。
- この売上は、どの商品?
- この利益は、どの仕事?
- この費用は、固定?変動?
これはもう、
管理会計の入り口です。
【ケース③】PLを「眺める」のをやめた瞬間
ある社長は、こう言いました。
「PLを眺めるの、やめました」
代わりにやったことは、
- 利益が出ている仕事だけ抜き出す
- 赤字っぽい仕事を洗い出す
それだけ。
でも、
- 断る仕事が決まった
- 値上げの根拠ができた
- 社内の会話が変わった
と、一気に経営が動きました。
「使う社長」は、完璧な数字を求めない
もう一つの違い。
- 読む社長 → 正確さ重視
- 使う社長 → 判断スピード重視
管理会計において、
多少ズレていても、
方向が合っていればOK
という感覚を持っています。
これが、意思決定の速さを生みます。
決算書が「武器」になる瞬間
決算書は、
- 読むだけなら、資料
- 使えば、武器
になります。
その境目は、たった一つ。
「この数字で、何を決める?」
と自分に問えているか
それだけです。
管理会計とは、「数字を使う練習」である
このシリーズで伝えたかったのは、
難しい理論ではありません。
- 会計は過去
- 管理会計は未来
- 管理会計は社長のため
そして、
数字は、読むものではなく、使うもの
という一点です。
次のステージへ
ここまで来たあなたは、
もう「入門」を抜けています。
次からは、
- 利益構造
- 判断基準
- 使える指標
といった、
実際に“使う管理会計”の世界に入っていきます。
数字は、答えではありません。
あなたの決断を支える、道具です。
ここから先は、
「読む社長」ではなく
「使う社長」として進んでいきましょう。
今日の一言
決算書を読んでも、会社は変わらない。
数字を使った瞬間から、経営は動き出す。
