
――数字が苦手な社長ほど、経営に向いている・第2回――
「この数字、何かおかしくないか?」
決算書や月次資料を見ていて、
こんな感覚を持ったことはありませんか?
- 売上は伸びているのに、手元が苦しい
- 利益は出ているはずなのに、現場は忙しすぎる
- 数字上は問題ないのに、嫌な予感がする
そして、こう思う。
「……自分が数字を分かっていないだけなのか?」
今日は、この**“違和感”**がテーマです。
結論から言うと、
この違和感は、
社長としてとても健全な反応です。
数字が苦手=違和感を覚える社長
多くの社長は、
「数字が苦手」と言います。
でも、よく話を聞くと、
- 現場の状況は把握している
- お客さんの反応も分かっている
- 社員の疲れ具合も感じている
つまり、
経営の“肌感覚”は、かなり鋭い。
だからこそ、
数字を見たときに、
「あれ?
体感と合わないぞ」
という違和感が生まれます。
数字だけ見ている人には、違和感がない
一方で、
数字が得意な人はどうでしょうか。
- 売上:OK
- 利益率:問題なし
- 前年比:プラス
「全部、順調ですね」
ここで思考が止まります。
なぜなら、
比較対象が数字しかないからです。
違和感は「現場」と「数字」のズレから生まれる
違和感の正体は、
とてもシンプルです。
現場で見ている世界
と
帳簿に出てくる世界
が、ズレている
このズレを感じ取れるのは、
現場に足を運んでいる社長だけです。
【ケース①】売上好調なのに、社長だけが不安だった会社
ある小売業の社長。
- 月商は前年同月比120%
- 利益率も改善
- 数字だけ見れば絶好調
でも、社長は言います。
「なんか、無理してる気がするんです」
理由を聞くと、
- 現場は常に人手不足
- 値引き販売が増えている
- ベテランが疲れてきている
数字には出ていない“歪み”を、
社長は感じていました。
数か月後、
離職が続き、
売上は急落。
違和感は、
未来のサインだったのです。
数字は「結果」、現場は「原因」
ここで大切な整理をします。
- 数字:過去の結果
- 現場:今起きている原因
数字は、
現場で起きたことの
通知表のようなものです。
でも、
通知表だけ見ていても、
勉強のやり方は分かりません。
現場感覚のある社長ほど、数字が“冷たく”見える
現場を知っている社長ほど、
- この数字の裏に、誰の苦労があるか
- この利益の裏に、何を削ったか
が見えます。
だから、
「数字は正しい。でも…」
と感じてしまう。
これは、
数字を軽視しているのではありません。
むしろ、
数字を立体的に見ている証拠です。
【ケース②】利益率を上げたら、クレームが増えた理由
あるサービス業の社長。
- 原価を見直し
- 外注を削減
- 利益率アップ
数字は改善。
しかし、
- クレーム増加
- リピート率低下
- 現場の不満増大
社長は言いました。
「この利益、長く続かない気がする」
数字だけ見れば成功。
でも、現場感覚が
**“危険信号”**を出していました。
違和感を「気のせい」で片付けてはいけない
多くの社長が、
この段階でこう思います。
「いや、数字が合ってるんだから」
「自分が感覚的すぎるだけだ」
そして、
違和感を押し殺します。
これが、
一番もったいない。
違和感は、管理会計の入口
管理会計とは、
- 数字を正確に出すこと
ではなく - 数字と現場をつなぐこと
です。
違和感があるからこそ、
- なぜこうなっているのか
- どこが無理をしているのか
- 何を変えればいいのか
という問いが生まれます。
数字が苦手な社長は「問い」を持てる
数字が得意な人は、
「答え」を出そうとします。
一方、
数字が苦手な社長は、
- これで本当に大丈夫か?
- 続けられるのか?
- 誰かに無理をさせていないか?
と、問いを立てる。
経営に必要なのは、
正解を一発で当てる力より、
問い続ける力です。
【ケース③】違和感を言語化した社長の変化
ある社長は、
月次資料を見るたびに、
「何か、しっくりこない」
と感じていました。
そこで、
- 売上ではなく、案件別に見る
- 利益率ではなく、作業時間と並べる
という形に数字を並べ替えました。
すると、
- 忙しい仕事ほど利益が薄い
- 手間の少ない仕事が利益を出している
ことが一目で分かりました。
違和感は、
数字の見せ方を変えるヒントだったのです。
数字に違和感を持てる社長は、強い
数字に違和感を持てるということは、
- 数字を鵜呑みにしていない
- 現場を見ている
- 経営を“人の営み”として捉えている
ということです。
これは、
AIにも、
表計算ソフトにも、
できない仕事です。
「数字に弱い」のではなく「現場に強い」
ここで、言い換えてみてください。
- 数字が苦手
ではなく - 現場に強い
数字は、
現場を良くするための
道具でしかありません。
主役は、
いつも現場です。
管理会計は、違和感を放置しないための技術
管理会計とは、
- 違和感を感じ
- 数字で確かめ
- 次の一手を考える
ための仕組みです。
数字が苦手な社長ほど、
この使い方が向いています。
今日の一言
数字に違和感を持てる社長は、
すでに経営の本質に触れている。
その感覚を、
なかったことにしないでほしい。
