
――管理会計が、社長を自由にする・第3回――
「忙しい社長ほど、社長の仕事をしていない」という現実
多くの社長と話していると、よくこんな言葉を聞きます。
- 「毎日バタバタで、考える時間がない」
- 「現場に入らないと会社が回らない」
- 「結局、全部自分が決めている」
一見すると、
「よく働く社長」「頑張っている社長」に見えます。
しかし、少し厳しい言い方をすると、
忙しすぎる社長ほど、
社長本来の仕事から遠ざかっている
ケースが非常に多いのです。
社長の仕事は「処理」ではなく「選択」
ここで、問いを一つ投げかけます。
社長の仕事とは、何でしょうか?
多くの方が、無意識にこう答えます。
- 決裁
- 指示
- トラブル対応
- 現場フォロー
もちろん、これらも必要です。
しかし、本来の社長の仕事は、
「会社として、何を選び、何を捨てるか」を決めること
です。
そして、この“選択”の質を上げるために必要なのが、
管理会計です。
管理会計がないと、社長は「作業者」に戻る
管理会計がない状態では、社長はどうなるでしょうか。
- 数字が見えない
- 先が読めない
- 不安になる
結果、
- 現場に入り
- 自分で確認し
- 自分で判断する
という行動を取りがちです。
つまり、
社長が「一番忙しい作業者」になってしまう
のです。
ケース①:現場に戻りすぎた社長
ある建設業の社長は、こう言っていました。
「現場に行ってないと、なんだか不安で…」
売上は立っている。
利益も一応出ている。
それでも、先が見えない。
原因は単純でした。
- 会社全体の数字を
- 社長が“判断用”に見ていなかった
のです。
管理会計として、
- 月次の粗利
- 固定費
- 最低限必要な売上
だけを整理したところ、
「現場に行かなくても、会社の状態が分かる」
と言うようになりました。
社長が現場を離れるために、勇気はいらない
ここで誤解してほしくないのですが、
管理会計は、
社長を現場から“引き離す”ものではありません。
正しくは、
社長が
「入るべき現場」と
「入らなくていい現場」
を見分けられるようにする
ための道具です。
数字があることで、
- 今、どこが重要か
- どこは任せていいか
が分かるようになります。
「全部自分で決める」から抜け出せない理由
社長が本来の仕事に戻れない最大の理由は、
判断の基準が、
自分の頭の中にしかないこと
です。
これでは、
- 任せられない
- 共有できない
- 判断が集中する
のは当然です。
管理会計は、
判断基準を“外に出す”仕組みでもあります。
ケース②:社員に任せられなかった社長
ある小売業の社長は、
「社員に任せるのが怖い」
と話していました。
理由を聞くと、
- 判断の基準が説明できない
- 数字で示せない
管理会計として、
- 「このラインを超えたらOK」
- 「ここを下回ったら相談」
という数字を共有したところ、
「判断の相談が減りました」
と驚いていました。
社長がやるべき仕事が、
確実に減ったのです。
社長がやるべき仕事は「未来の話」
管理会計が回り始めると、
社長の時間の使い方が変わります。
- 過去の失敗を悩む時間 → 減る
- 目先のトラブル対応 → 減る
代わりに増えるのが、
- 来月どうするか
- 半年後どうなりたいか
- 何に投資するか
といった、未来の話です。
これこそが、
社長が本来やるべき仕事です。
管理会計は「社長の思考を取り戻す装置」
多くの社長は、
- 考える時間がない
- 余裕がない
と言います。
しかし実際には、
考えるための“材料”がなかった
だけなのです。
管理会計は、
- 考える材料を
- シンプルな形で
- 定期的に提供する
装置です。
だから、思考が戻ります。
「全部把握していないと不安」からの卒業
管理会計を導入すると、
社長はこう変わります。
- 「全部知らなくていい」
- 「ポイントだけ見ればいい」
この感覚を持てるようになります。
これは、
社長にとって大きな精神的自由です。
管理会計は、社長の“役割分担”を助ける
会社には、本来こういう役割分担があります。
- 社員:日々の業務を回す
- 管理職:現場を整える
- 社長:方向を決める
管理会計がないと、
この線がすべて曖昧になります。
管理会計は、
社長を自然に「方向を決める役」に戻してくれます。
忙しさは、社長の勲章ではない
最後に、あえてこの言葉を置きます。
忙しさは、
社長の頑張りの証明ではありません。
むしろ、
- 忙しさが続いている
- ずっと現場にいる
状態は、
社長の仕事が
仕組みになっていないサイン
です。
管理会計は、
その仕組みを作る第一歩です。
今日の一言
管理会計は、社長を忙しくするための数字ではない。
社長が“本来の仕事に戻るため”の道しるべである。
