⑥社長の仕事は「確認」と「例外対応」だけになる


― 忙しさから解放される“意思決定構造”の完成形 ―

「社長なのに、ずっと現場にいる」その違和感から始まる

「社長って、こんなに細かいことまで決めなきゃいけないんでしたっけ?」
これは、私が多くの経営者と話す中で、何度も耳にしてきた言葉です。

・毎日の承認依頼
・現場から飛んでくる判断待ち
・本来考えたい“未来の話”は、いつも後回し

気づけば一日が終わり、「今日も社長の仕事はできなかったな」と感じる。
でも、ここで大事なのはあなたが怠けているわけでも、能力が足りないわけでもないという点です。

原因は、ほぼ一つ。
「意思決定の構造」が設計されていないことにあります。

社長が全部決める会社ほど、実は危うい

一見すると、「何でも社長が決めている会社」は強そうに見えます。
スピードもあるし、ブレも少ない。

しかし、裏側ではこんな問題が起きがちです。

  • 社長が不在だと何も進まない
  • 現場が“考えなくなる”
  • 社長がボトルネックになる
  • 社長が疲弊し、判断の質が落ちる

特に小規模事業では、「自分が一番分かっている」という理由で、
無意識のうちに全部を背負ってしまう社長が非常に多い。

でも冷静に考えてみてください。
社長の時間は、会社で一番高い資源です。
それを日常判断で使い切ってしまうのは、あまりにももったいない。

ゴールは「社長がいなくても回る」ではない

ここでよくある誤解があります。

最終的には、社長がいなくても回る会社を作りたいんですよね?

半分正解で、半分間違いです。

本当のゴールは、
社長が“考えるべきことだけ”に集中できる状態を作ること

つまり、

  • 日常業務 → 社長は関与しない
  • 通常判断 → ルール通りに処理される
  • イレギュラー → 社長が判断する

この構造を作ること。
その結果として、「社長がいなくても回る時間が増える」だけなのです。

社長の仕事は、たった2つに集約できる

では、意思決定構造が完成した会社で、
社長は何をしているのか。

答えはシンプルです。

① 確認
② 例外対応

これだけです。

①「確認」=数字と事実を見て、ズレを察知する

まず「確認」とは、
細かい作業をチェックすることではありません。

・正しく進んでいるか
・想定とズレていないか
・違和感がないか

を、決められた数字と事実で見ることです。

例えば、

  • 売上は計画通りか
  • 粗利率は基準内か
  • 客数や単価に異常はないか

これらを毎日・毎週・毎月、
“同じフォーマット”で眺める。

ここで社長がやるべきなのは、
「なぜ?」を考えることだけ
です。

ケース:確認が「口出し」になってしまう会社

ある飲食店の社長は、
毎日売上を見ては、こんなことを言っていました。

「今日は客数少ないね」
「このメニュー、もっと出せない?」

一見、確認しているようで、
実は現場介入になっていた。

そこで行ったのは、

  • 「見る数字」を3つに絞る
  • 基準値を決める
  • 基準内なら何も言わない

というルール作り。

結果、
社長は数字を見るだけ。
現場は考えて動くようになりました。

②「例外対応」=ルール外だけを社長が引き取る

次に「例外対応」。

これは、
事前に決めたルールでは処理できないことだけを、
社長が判断するという役割です。

例えば、

  • 想定外の大口取引
  • 基準を大きく外れる数字
  • 人に関する重要判断
  • 大きな投資や撤退判断

逆に言えば、
ルール内のことは、社長の仕事ではない

ここが曖昧だと、
現場はすぐに「社長判断」に逃げます。

「例外」を定義しないと、全部が例外になる

多くの会社で起きている問題はこれです。

  • 何が例外か決まっていない
  • だから、全部が社長判断になる

解決策はシンプル。

この条件を超えたら、社長に上げる

という線を引くこと

金額
利益率
リスク
影響範囲

この線を引くだけで、
社長の判断回数は一気に減ります。

社長が“判断しない勇気”を持てるか

意思決定構造設計で、
最大の壁になるのはここです。

「任せた判断が、少しズレることを許せるか」

最初は、必ずズレます。
でも、それは失敗ではありません。

  • ルールが甘かった
  • 基準が曖昧だった

そう気づける材料が手に入った、というだけ。

社長が全部決め続ける限り、
そのズレは永遠に表に出てきません。

構造ができると、社長の景色が変わる

意思決定構造が整った会社では、
社長の一日がこう変わります。

  • 朝:数字を見る
  • 気になる点だけ深掘る
  • 例外案件に集中する
  • 未来の打ち手を考える

「忙しい」はなくなりません。
でも、意味のある忙しさに変わります。

そして何より、

社長らしい仕事をしている

という実感が戻ってきます。

社長業とは、決め続けることではない

このシリーズを通して伝えたかったのは、
「社長が全部決める」ことではありません。

決めなくていいことを、決めない仕組みを作ること

その先に、

  • 確認
  • 例外対応

だけを行う、
軽やかな社長業があります。

今日の一言

社長の仕事は「決めること」ではなく、
「決めなくていい状態を作ること」。

それができたとき、
あなたの会社は、次のステージに進み始めます。


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