
――戦わない市場を決めるという戦略・第11回――
戦略は「感覚」だけでは、続かない
市場を選び直し、
- 値下げが減った
- 話が通じる顧客が増えた
- 経営が少し楽になった
これは、とても良い兆候です。
ただし、ここで一つ大事な問いがあります。
その戦略、
本当に“正しかった”と言えますか?
「うまくいっている気がする」は危険
経営者がよく陥る罠。
- 忙しい=うまくいっている
- 問い合わせが増えた=成長している
- 評判がいい=利益が出ている
感覚としては分かります。
でも、ここには大きな落とし穴があります。
戦略は、
数字で検証して初めて“戦略”になる
管理会計は「戦略の健康診断」
管理会計というと、
- 難しそう
- 会計知識が必要
- 税理士の領域
と思われがちですが、
本質はもっとシンプルです。
やった戦略が、
会社の体に合っているかを見る
これが管理会計の役割です。
競争戦略を数字で見るとは、どういうことか
ここで言う「競争戦略」とは、
- どの市場で
- どんな価値で
- どう勝とうとしているか
という設計でした。
管理会計では、それを次の問いに変換します。
- その市場は、利益を生んでいるか
- その価値は、価格に反映されているか
- その勝ち方は、続けられるか
売上ではなく「構造」を見る
まず大切なこと。
売上だけ見ても、
競争戦略は検証できない
理由は簡単です。
- 無理な値下げでも売上は上がる
- 人を酷使すれば売上は伸びる
- 広告を打てば一時的に増える
重要なのは、
その売上が、
どんな構造で生まれているか
最初に見るべき3つの数字
競争戦略を検証するために、
最低限見るべき数字は3つです。
① 粗利率
② 顧客別・商品別の利益
③ 固定費に対する余裕
この3つだけで、
戦略の成否はかなり見えてきます。
粗利率は「戦っていない証拠」
市場を正しく選べている会社は、
粗利率が安定しています。
- 値引き前提でない
- 説明に時間がかからない
- 比較されにくい
逆に、
- 粗利率が下がっている
- 案件ごとの差が激しい
場合、
どこかで戦っている
可能性が高い。
ケーススタディ①:売上が伸びても苦しい理由
あるBtoBサービス会社。
- 売上:前年比120%
- 問い合わせも増加
しかし、管理会計で見ると、
- 粗利率が10%低下
- 人件費が急増
- 利益は横ばい
原因は明確でした。
「選んだつもりの市場」に、
実は価格競争が混ざっていた
戦略は、
数字で初めてズレが見えます。
顧客別利益は「市場選択の答え」
次に重要なのが、
顧客別・商品別の利益
ここを見ると、
市場戦略の成否がはっきりします。
- どの顧客が利益を運んでいるか
- どの市場が時間を奪っているか
売上が同じでも、
- 楽な利益
- 苦しい利益
は、必ず分かれます。
ケーススタディ②:「いいお客さん」が数字で証明された
市場を絞った会社での話。
社長の感覚では、
「この業界のお客さん、話が早い」
管理会計で確認すると、
- 粗利率が高い
- クレームが少ない
- 工数が読める
感覚が、数字で裏付けられました。
これが戦略の検証
です。
固定費に対する余裕=続けられる戦略か?
最後の視点が、
この戦略、続けられるか?
を見る数字。
ここで重要なのは、
- 売上
- 利益
ではなく、
固定費をどれだけ余裕でカバーできているか
無理な戦略は、固定費に歪みを生む
市場が合っていないと、
- 人を増やさないと回らない
- 社長が現場を離れられない
- 教育コストが膨らむ
これらはすべて、
固定費の不安定さ
として表れます。
管理会計は「修正のため」にある
ここで大事なこと。
管理会計は、
正解探しではない
- 間違いを責める
- 過去を後悔する
ためのものではありません。
戦略を“微調整”するため
のツールです。
数字があると、戦略会議が変わる
管理会計があると、
- 感情論が減る
- 意見が噛み合う
- 社長が一人で抱えなくなる
戦略が、
個人のセンスから、
会社の共通言語
に変わります。
「戦わない戦略」は、数字で証明できる
戦わない市場を選ぶと、
- 粗利が安定し
- 顧客が絞られ
- 固定費が軽くなる
これは、
管理会計に、必ず現れる
逆に数字に出ないなら、
まだどこかで戦っています。
戦略と会計がつながった瞬間
この瞬間、社長はこう言います。
「数字を見るのが、
怖くなくなりました」
それは、
数字が“敵”ではなく、
味方になった瞬間
です。
今日の一言
戦略は、
語った時点では仮説。
数字で確かめた瞬間、
本物になる。
