
――管理会計が、社長を自由にする・第4回――
管理会計の「虎の穴」に、迷い込んでいませんか?
突然ですが、少し刺激的な問いから始めます。
あなたの会社の管理会計、
気づけば「修行の場」になっていませんか?
・細かすぎる数字
・大量のExcelシート
・意味は分からないが、とにかく作っている資料
・「やらなきゃいけない気がする」月次作業
これらはすべて、
管理会計の虎の穴に足を踏み入れたサインかもしれません。
そもそも「虎の穴」とは何だったのか
某、伝説のレスラー育成機関「虎の穴」は、
- 強くなるための過酷な訓練
- 脱落者も多い
- ついていける者だけが残る
という、恐怖と修行の象徴でした。
これを管理会計に置き換えると、
驚くほど似た構図が見えてきます。
- 数字に強くならなければならない
- 分からなくても耐える
- できない自分が悪い
そんな空気の中で、
多くの社長が静かに脱落していくのです。
管理会計が「苦しいもの」になった瞬間
管理会計が苦しくなる最大の原因は、
実はとてもシンプルです。
「目的」より先に
「手段」が来てしまった
これに尽きます。
- 何のために見るのか分からない数字
- 判断に使われない資料
- 作ることがゴールになった会計
こうなると、管理会計は一気に虎の穴化します。
ケース①:完璧な資料を作ろうとして、止まった社長
あるサービス業の社長は、
毎月こんな作業をしていました。
- 売上を部門別・商品別・担当者別に細分化
- 原価も可能な限り按分
- 10枚以上の月次レポート
しかし、社長本人がこう言います。
「正直、見てないんです」
理由は明確でした。
- 情報量が多すぎて判断できない
- 結局、感覚で決めている
これは典型的な
虎の穴に真面目に取り組んでしまったケースです。
管理会計は「強くなる修行」ではない
ここで、はっきりさせておきたいことがあります。
管理会計は、
社長を鍛え上げるための修行ではありません。
本来の役割は、
社長の判断を、
少ないエネルギーで、
正しい方向に導くこと
です。
苦しさが伴っている時点で、
その管理会計は、何かがズレています。
卒業とは「やらなくなる」ことではない
「虎の穴を卒業する」と言うと、
- 管理会計をやめる
- 数字を見ない
と誤解されがちですが、そうではありません。
卒業とは、
管理会計を
“頑張らなくても回る状態”にすること
です。
- 見る数字は少ない
- 判断に直結する
- 自然と目に入る
この状態になって、
初めて卒業と言えます。
管理会計を「生活習慣」に戻す
卒業した社長の共通点は、
管理会計をこう捉えています。
- 特別な作業ではない
- 月に一度の儀式でもない
- 日常の確認事項
たとえば、
- 体重計に乗る
- 天気予報を見る
それと同じ感覚です。
だから続くし、
だから苦しくなりません。
ケース②:数字を「3つ」に減らしたら、経営が楽になった
ある小売業の社長は、
管理会計が完全に止まっていました。
そこで、思い切ってこうしました。
- 見る数字を3つに限定
- 月次売上
- 粗利
- 固定費合計
これだけです。
すると、
「これなら、毎月見られます」
と言い、
実際に判断が早くなりました。
虎の穴を出た瞬間です。
管理会計は「分かる人の世界」ではない
虎の穴化した管理会計には、
ある共通点があります。
- 分かる人だけが分かる
- 専門用語が多い
- 聞きづらい空気
しかし、社長のための管理会計は、
説明されなくても、
見れば分かる
状態でなければなりません。
分からない仕組みは、
必ず続きません。
卒業の目安は「説明できるかどうか」
虎の穴を卒業できているかどうかは、
この質問で分かります。
この数字を、
社員に一言で説明できますか?
- 何を表しているのか
- なぜ見ているのか
- どう判断に使うのか
これが説明できるなら、
もう虎の穴にはいません。
管理会計は、社長を選別しない
虎の穴は、
「ついてこれる者」と「脱落者」を分けます。
しかし、管理会計は違います。
管理会計は、
どんな社長でも使えるべきもの
数学が得意である必要も、
会計の専門家である必要もありません。
必要なのは、
- 会社を良くしたい
- 判断を間違えたくない
それだけです。
「自由になる」とは、こういうこと
このシリーズのタイトルは、
『管理会計が、社長を自由にする』でした。
ここで言う自由とは、
- 数字に追われない
- 不安に振り回されない
- 判断を先送りしない
という状態です。
虎の穴を卒業すると、
この自由が手に入ります。
最後に:虎の穴を作らない、という選択
もし、今まさに、
- 管理会計が苦しい
- 続かない
- 自分に向いていない気がする
と感じているなら、
それはあなたの問題ではありません。
その管理会計が、
虎の穴になってしまっているだけです。
卒業していいのです。
今日の一言
管理会計は、耐え抜く修行ではない。
社長が自然体で判断するための、いちばん優しい道具である。
