
――管理会計が回るDX、回らないDX・第4回――
見える化は目的ではなく手段
最近、「ダッシュボードができた」「売上・原価がリアルタイムで見えるようになった」と満足している経営者をよく見かけます。
しかし、見える化=経営がうまく回るではありません。
見える化はあくまで「経営判断を助ける手段」であり、最終ゴールではないのです。
- 見える化だけで終わると、意思決定は変わらない
- データは見えるが、現場は改善行動を起こさない
- 会議は数字確認だけで終わり、戦略は停滞
この状態を私は「見える化中毒」と呼んでいます。
ケーススタディ1:製造業A社の末路
A社は最新のERPを導入し、売上、原価、工数、在庫がリアルタイムでダッシュボードに表示されるようになりました。
- 社長:「すごい!数字が全部見える!」
- 問題:
- 経営会議は数字確認だけで終了
- 問題があっても、誰が対応するかのルールがない
- データは正確だが、改善アクションが生まれない
結果、ERP導入前と変わらず、粗利改善や生産効率向上にはつながらず、DXの費用だけがかさんだ状態になりました。
見える化だけで満足する社長の心理
- 「数字が見える=安心」と錯覚する
- 「自分が介入しなくても会社が動く」と思い込む
- データに依存して、意思決定の本質を忘れる
問題の本質
管理会計DXで重要なのは、数字を使って判断を速くすることです。
見える化はそのための第一歩ですが、判断に結びつかなければ意味はありません。
ケーススタディ2:小売業B社の失敗
B社は売上や在庫の見える化を完了し、月次ダッシュボードも整備しました。
- 問題点:
- 店舗マネージャーは数字を見るだけで改善策を考えない
- 社長は「全部見えるから安心」と判断を先送り
- 在庫過多や売れ残りが慢性的に発生
結果、見える化だけで経営改善が進まない典型例となりました。
見える化で満足しないためのポイント
1. 数字を「見て終わり」にしない
- ダッシュボードは「判断の入口」であり、出口ではない
- 必ずアクションに結びつけるルールを作る
2. KPIを意思決定に直結させる
- 粗利率、在庫回転率、顧客別収益など
- 数字を見て「何を判断するか」を事前に設計
3. 経営会議での運用ルールを決める
- 誰がアクションを起こすのか
- どのタイミングで改善策を実施するのか
- ダッシュボードを見た結果をすぐに議論する
ケーススタディ:サービス業C社
- 見える化+判断フローを設計
- 月次会議ではダッシュボードを見ながら改善策を決定
- 現場は即実行、社長は戦略判断に集中
- 結果:意思決定速度が格段に向上し、売上・利益が改善
見える化だけで満足する社長が陥る罠
- データ依存症
- 数字を見るだけで安心し、判断や行動を先送り
- 改善が現場に浸透しない
- 現場が数字を見ても、何をすればよいか分からない
- 経営判断が遅れる
- 見えるだけで満足 → アクションがない → 問題が長引く
- DX投資が無駄になる
- ツール導入コストだけが残り、経営改善に寄与しない
管理会計DXで本当に目指すべきゴール
- 見える化は手段
- 目的は「数字をもとに判断を速くする」こと
- アクションに直結したKPI設計、現場運用フロー、経営会議でのルールが重要
ケーススタディ:製造業D社
- 見える化+KPI+アクションフロー設計
- DX導入後、原価改善・生産効率向上・粗利改善を同時に達成
- 社長は「データを見るだけ」から「データで判断する」に進化
見える化だけで安心するのではなく、**「数字を見る → 判断する → 行動する」というフロー」を設計することが、社長のDX成功の鍵です。
今日の一言
見える化はゴールではない。
数字を判断に活かし、アクションにつなげて初めて、管理会計DXは経営を楽にする。
