⑥集客構造設計を「社長業」としてどう位置づけるか


「集客は、現場や外注先に任せています」
「自分は数字の最終結果だけを見ています」

社長の方と話していると、よく出てくる言葉です。
決して間違っているわけではありません。
限られた時間の中で、すべてを自分でやることは不可能です。

ただし、ここに集客が迷走する最大の分岐点があります。

それは、
集客を“作業”として捉えているか、
“社長業(経営判断の対象)”として捉えているか

という違いです。

シリーズ最終回となる今回は、
集客構造設計を、社長業の中でどう位置づけるべきかを整理していきます。

社長が集客に関わると、なぜ現場は混乱するのか

まず、よくある誤解から整理しましょう。

「社長が集客に口を出すと、現場が混乱する」

これは半分正解で、半分間違いです。

混乱するケースの多くは、
社長がやるべきでないレイヤーに入り込んでいる場合です。

例えば、

  • 投稿文の細かい表現を直す
  • 広告バナーの色を指示する
  • SNSの更新頻度を日替わりで変える

これらは、完全に“作業レイヤー”です。
ここに社長が入り込むと、現場は振り回されます。

一方で、社長が本来関わるべきなのは、

  • どの顧客を取りに行くのか
  • どの行動を成果と定義するのか
  • 何をもって「良い集客」と判断するのか

という、構造と判断のレイヤーです。

ここを放置してしまうと、
現場も外注先も「正解が分からないまま動く」ことになります。

集客構造設計は「経営の翻訳作業」である

集客構造設計を一言で言うなら、
それは経営方針を、行動に翻訳する作業です。

  • どんなお客さんと付き合いたいのか
  • どんな強みで選ばれたいのか
  • どこまでの価格帯・関係性を許容するのか

これらは、完全に経営の話です。

ところが、多くの会社では、
この翻訳をせずに、いきなり手段に入ります。

  • とりあえずSNS
  • とりあえず広告
  • とりあえずHP改善

結果、施策は増えるが、方向性は定まらない。
これが、本シリーズで繰り返し見てきた「迷走」の正体です。

落とし穴|集客を「売上を作る装置」としか見ていない

社長が集客から距離を取ってしまう背景には、
こんな認識があります。

集客は、売上を作るための手段

もちろん、間違いではありません。
しかし、この見方だけだと、集客は短期成果に引っ張られます

  • 今月の問い合わせ数
  • 今期の売上
  • CPA(獲得単価)

これらだけを見ると、
どうしても「今効く施策」しか選べなくなります。

社長業としての集客構造設計では、
もう一段上の役割を持たせます。

それは、
会社の戦い方を固定化する装置
としての役割
です。

どんな顧客が集まり、
どんな相談が増え、
どんな案件が当たり前になるのか。

これは、集客構造によって、かなりの部分が決まってしまいます。

ケーススタディ|社長が関与レイヤーを変えた会社

ある会社では、以前こんな状態でした。

  • 集客はすべて外注
  • 月次レポートは確認
  • 数字が悪いと「何とかして」と言う

外注先は、指示が曖昧なまま改善を繰り返し、疲弊していました。

そこで社長が変えたのは、
「口出しの量」ではなく「口出しの場所」です。

具体的には、

  • どんな顧客の問い合わせなら成功か
  • 問い合わせが来なくてもOKな月の定義
  • 改善判断をする数字と、その基準

この3点だけを明確にしました。

結果、

  • 外注先は迷わず動ける
  • 社長は日々の作業から解放される
  • 改善は淡々と積み上がる

集客は、社長が現場に張り付かなくても、
社長業として機能し始めたのです。

社長業としての集客構造設計、3つの責任

集客を社長業として位置づけると、
社長の役割は次の3つに整理されます。

1. 取らない客を決める責任

集客で最も重要なのは、
「誰を集めるか」ではなく
「誰を集めないか」です。

ここを決められるのは、社長しかいません。

短期売上に引っ張られると、
本来合わない客も集めてしまいます
その歪みは、必ず後から組織に返ってきます。

2. 判断基準を決める責任

  • この数字ならOK
  • ここを超えたら見直す

この基準がなければ、
集客は永遠に「感覚勝負」になります

判断基準を決めることは、
意思決定の設計そのものです。

3. 続ける前提を作る責任

誰が、どの頻度で、何を見るのか。
忙しい月でも、最低限何はやるのか。

これは作業ではなく、設計です。
この設計をするのが、社長業です。

「任せる」と「放置する」は、まったく違う

ここまで読むと、
「やはり社長が全部見るべきなのか」と感じるかもしれません。

そうではありません。

社長業としての集客構造設計とは、
任せるために、決めることです。

  • 任せる範囲
  • 任せない判断
  • 確認するポイント

これを決めて初めて、
任せることが“経営判断”になります。

決めずに任せるのは、放置です。
放置された集客は、必ず迷走します。

集客構造設計は「未来の社長業」を楽にする

最後に、少し長い目の話をします。

集客構造設計を社長業として位置づける最大の価値は、
将来の社長の仕事を減らすことにあります。

  • 毎回同じ判断をしなくていい
  • 感覚で悩まなくていい
  • 人が変わっても回る

これは、組織が大きくなるほど効いてきます。

集客を
「その場しのぎの施策」
から
「会社の戦い方を支える構造」
に変えること

それが、社長業としての集客構造設計です。

今日の一言

集客を社長業にするとは、手を動かすことではない。
「何を判断し、何を任せるか」を決め切ることだ。


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