⑤DXは、管理会計と一緒に設計しなければ意味がない


――管理会計が回るDX、回らないDX・第5回――

DXは手段、管理会計は経営の羅針盤

近年、多くの会社がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいます。
しかし、DXだけを先行させても経営は楽になりません

DXは「手段」であり、管理会計こそ経営の羅針盤です。
つまり、管理会計の視点を抜きにしたDXは、宝の持ち腐れになりやすいのです。

  • DX単体 → データが集まるだけ、意思決定には直結しない
  • 管理会計と連動 → データが判断材料になり、経営を動かす

ケーススタディ:ツールだけ導入した製造業E社

E社は最新のクラウドERPを導入しました。

  • DX内容:受注、在庫、工数、売上をリアルタイムで可視化
  • 問題点:
    • 管理会計の指標設計が未整備
    • 経営者は何を判断すればいいのか迷う
    • 現場は入力負荷だけが増える

結果、DX導入後も経営改善にはつながらず、社長は「データはあるのに判断できない」という状態になりました。


管理会計と一緒にDXを設計するとは?

では、どうすればDXを意味のあるものにできるのでしょうか?
ポイントは次の3つです。

1. 判断に必要な数字を明確化する

  • 売上、原価、粗利、損益分岐点など、意思決定に必須のKPIを洗い出す
  • ただ見えるだけのデータは不要

ケーススタディ:小売業F社

  • DX設計前に管理会計のKPIを整理
  • 「店舗別粗利」「在庫回転率」「商品別利益率」を即座に計算できる仕組みを作成
  • 経営者はリアルタイムで判断可能
  • 結果:意思決定が月次 → 週次 → 日次に短縮

2. 現場の入力フローを管理会計に合わせる

DXはツール導入だけではなく、データ取得フローの設計も含まれます。

  • 入力ルールを現場の業務フローに組み込み
  • 「数字が揃わない」「入力が面倒」状態を防ぐ

ケーススタディ:サービス業G社

  • 顧客対応工数・売上・原価をタブレット入力
  • 入力のタイミングを業務フローに沿って設計
  • 現場負荷は最小化、データ精度は向上
  • 経営者はダッシュボードで即座に意思決定

3. 経営判断フローに組み込む

  • DXで可視化した数字を、必ず経営会議や判断フローに組み込む
  • 数字を見るだけで満足せず、アクションに結びつける

ケーススタディ:製造業H社

  • DX導入と同時に、経営会議フローを設計
  • 部門別粗利の変動を確認 → 改善策を議論 → 現場実行
  • DX前は1週間かかっていた意思決定が、2日で完了

管理会計とDXが一緒に動くと起きる変化

  1. 意思決定のスピードが飛躍的に向上
    • データ確認 → 判断 → アクションが即時に可能
  2. 現場が数字を意識するようになる
    • 入力ルールが明確 → 責任が明確 → 精度向上
  3. 経営者は戦略に集中できる
    • 日々の数字管理から解放 → 長期戦略に時間を使える

ケーススタディ:小売業I社

  • 管理会計DXを一緒に設計
  • 売上・原価・粗利をリアルタイム把握
  • 現場は入力フローに従い、改善策を自律的に実行
  • 経営者は戦略立案に専念 → 売上前年比120%

DXだけではなく、管理会計とセットで考える理由

  • ツールだけでは「データの山」が残る
  • 見える化だけでは「意思決定は遅れたまま」
  • 現場負荷が増えるだけでDXの効果は薄れる

一方、管理会計を軸に設計すれば、DXは意思決定を加速する道具になるのです。


今日の一言

DXは手段、管理会計は羅針盤。
DXを導入するなら、必ず管理会計と一緒に設計し、
数字を判断と行動につなげる仕組みを作ることが成功の鍵である。


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