― 価格競争から抜け出すためのポジショニング再設計|第2回目(全6回) ―
「商品には自信があるのに、なぜか選ばれない」
「うちの商品・サービス、内容は悪くないと思うんです」
「競合より劣っている気はしない」
「むしろ、ちゃんとしている方だと思う」
それでも現実は、
- 問い合わせは来るが、成約しない
- 最後は価格で比較される
- 「検討します」で終わることが多い
そして、こんな結論に行き着きます。
「もっと差別化しないとダメなんですかね…」
ですが、ここで少し立ち止まって考えてみてください。
そもそも、その商品・サービスは「誰」に向けたものなのでしょうか?
この問いに、即答できますか?
差別化の前に、ほぼ全員が飛ばしているSTEP
多くの人は、ポジショニングや差別化を考えるとき、
いきなりこんなことを考え始めます。
- 強みは何か
- 他社との違いは何か
- どこが優れているか
- どう見せれば魅力的か
ですが、これらはすべて後の話です。
差別化の設計において、
最初に決めなければならないのは、たった一つ。
「誰に売るのか」
しかも、
「年齢」「性別」「業種」といった
ざっくりした属性の話ではありません。
このSTEPを曖昧なまま進むと、
どれだけ言葉を磨いても、
どれだけ特徴を並べても、
差別化は始まりません。
「誰にでも売れそう」は、実は一番危険
よく聞くフレーズがあります。
- 「特定の業種に絞る必要はないと思っていて」
- 「基本的には、誰でも対象です」
- 「小規模事業者全般ですね」
一見すると、間口が広くて良さそうです。
ですが、これはポジショニングの観点では最悪に近い状態です。
なぜなら、
「誰にでも売れる」=「誰にとっても決定打にならない」
からです。
お客さんの頭の中では、こうなります。
「悪くはないけど、決め手がない」
「他にも同じようなところ、あるよね」
この瞬間、
あなたの商品は比較対象の一つに格下げされます。
ケース①:技術力が高いのに埋もれた制作会社
ある制作会社の話です。
この会社は、
- デザイン力が高い
- コーディングも丁寧
- 納期も守る
- 実績もそれなりにある
にもかかわらず、
常に相見積もり、価格勝負に巻き込まれていました。
ホームページを見ると、こんな表現が並びます。
- 「幅広い業種に対応」
- 「お客様のニーズに柔軟に対応」
- 「高品質な制作を適正価格で」
問題は、ここです。
「誰の、どんなニーズなのか」が一切見えない。
結果として、
- 飲食店からも
- 士業からも
- 中小メーカーからも
問い合わせは来る。
でも、どの案件も“決めきれない”。
なぜか。
誰向けでもないから、誰にも刺さらないのです。
「誰に売るか」は、顧客リストを眺めても決まらない
ここで、多くの人が次にやる行動があります。
「じゃあ、今までの顧客を分析してみよう」
もちろん、これは無駄ではありません。
ですが、それだけでは不十分です。
なぜなら、
これまでの顧客は、たまたま集まった結果であって、
「選びたい顧客」ではない場合が多いからです。
- 価格にうるさい顧客
- 無理な要望が多い顧客
- 手間の割に利益が出ない顧客
こうした顧客も、
過去の実績には含まれています。
STEP1でやるべきなのは、
「これから、どんな人に売りたいのか」
を、意思を持って決めることです。
「理想の顧客」は、優しい人のことではない
ここでよくある勘違いがあります。
「理想の顧客」と聞くと、
- クレームを言わない
- 話が早い
- 感謝してくれる
- いい人
を思い浮かべがちです。
ですが、ポジショニングにおける
理想の顧客の定義は、そこではありません。
重要なのは、次の3点です。
- その人は、どんな状況で困っているか
- その困りごとは、他では解決しにくいか
- あなたが、その解決に自然に力を発揮できるか
ここが噛み合っていないと、
どれだけ良いサービスでも、
「わざわざ選ぶ理由」になりません。
ケース②:「忙しすぎる社長」に絞ったら、値下げが止まった
別の事例を見てみましょう。
ある業務支援系の事業者は、
以前はこう言っていました。
「中小企業全般をサポートしています」
当然、問い合わせは来ます。
しかし、
- 価格に敏感
- 何社も比較している
- 決定までが長い
そんな案件ばかり。
そこで、思い切ってこう定義しました。
「現場にも出ていて、
経営のことを考える時間がほとんどない社長」
この瞬間、何が起きたか。
- 相談内容が具体的になった
- 「今すぐ何とかしたい」案件が増えた
- 価格の話が後回しになった
なぜなら、
「誰の、どんな切羽詰まった状況か」が
明確になったからです。
これが、
「誰に売るか」を定める力です。
「ターゲットを絞る=市場が狭くなる」は本当か?
ここで必ず出てくる不安があります。
「絞ったら、売上が減りませんか?」
結論から言います。
短期的には減る可能性があります。
でも、中長期では、むしろ安定します。
なぜなら、
- 誰に向けて書いているかが明確になる
- 言葉が具体的になる
- 共感が生まれる
- 「自分のことだ」と思われる
結果として、
“価格以外で選ばれる確率”が上がるからです。
逆に、
絞らないまま進むと、
- 常に比較され
- 値下げを求められ
- 消耗し続ける
というループから抜け出せません。
STEP1のゴールは「一文で言える」こと
STEP1で目指すゴールは、
完璧なペルソナを作ることではありません。
たった一文で、
「〇〇な状況の△△な人」
と、スッと言える状態です。
例えば、
- 「初めて社員を雇い、管理に不安を感じている社長」
- 「売上はあるのに、なぜかお金が残らない事業主」
- 「技術はあるが、営業が苦手で悩んでいる職人」
この一文があるだけで、
- 何を伝えるべきか
- 何を削るべきか
- どんな言葉を使うべきか
すべてが変わり始めます。
差別化は「誰を選ぶか」を決めた瞬間に始まる
ここまでの話をまとめます。
差別化とは、
- 目立つこと
- 尖ること
- 強みを叫ぶこと
ではありません。
「誰に売るか」を決め、
それ以外を手放す覚悟を持つこと。
この瞬間に、
ポジショニングは初めて動き出します。
次回は、
この「誰に」をさらに一段深掘りし、
“どんな場面で思い出される存在になるか”
を設計するSTEPに進みます。
今日の一言
差別化は、特徴を足すことではない。
「誰に売らないか」を決めた瞬間から、始まる。
