
いきなり戦略を考えてはいけない理由
「売上を伸ばしたい」
「利益体質に変えたい」
「今のやり方に限界を感じている」
事業構造転換を考え始めた社長の多くが、
最初にこうした“正しい悩み”を口にします。
ただし、ここでほぼ100%起こるのが、
最初から打ち手を考え始めてしまうという現象です。
- 新しいサービスを作ろうか
- 単価を上げるべきか
- SNSを強化するか
- 人を増やすべきか
どれも間違いではありません。
ですが、順番が違います。
事業構造転換において、
社長が最初にやるべき仕事は「施策」ではありません。
それが、このSTEP1
市場選定です。
なぜ「市場選定」が最初なのか?
少し極端な言い方をします。
市場選定を間違えたまま努力すると、
努力量に比例して苦しくなります。
なぜなら、
- どれだけ頑張っても価格競争になる
- どれだけ工夫しても差別化できない
- どれだけ忙しくても利益が残らない
こうした状態は、
やり方の問題ではなく、立っている市場の問題だからです。
逆に言えば、
市場が変われば、同じ力でも結果が変わる
これが、事業構造転換の出発点です。
「市場」とは、エリアや業界のことではない
ここで、まず定義を揃えておきましょう。
市場選定というと、
- 都市部か地方か
- 法人向けか個人向けか
- 製造業かサービス業か
といった話を想像されがちですが、
このSTEP1で扱う「市場」は、もう少し踏み込みます。
この講座での「市場」の定義
市場 =
「誰が、どんな困りごとを、どんな理由で解決したいと思っているか」
つまり、
- 顧客の属性
- 困りごとの種類
- お金を払う動機
この3点がセットになったものを、市場と呼びます。
社長に最初に考えさせる、たった一つの問い
STEP1の市場選定ワークで、
最初に社長に投げる問いは、とてもシンプルです。
今のあなたの会社は、
“誰の、どの困りごと”でお金をもらっていますか?
ここで重要なのは、
理想や今後の話を一切しないこと。
- 将来やりたいこと
- 得意なこと
- 伸ばしたい分野
これらはいったん横に置きます。
まずは、
現実にお金をもらっている市場を、
言葉にして把握します。
ワーク①|「売上の正体」を言葉で書き出す
最初のワークは、数字を使いません。
紙とペン、もしくはメモ帳を用意して、
次の3点を書き出します。
- よくお金を払ってくれる顧客は誰か
- その人は、何に困っているのか
- なぜ、あなたの会社を選んでいるのか
ポイントは、
一番多い顧客像を1つに絞って書くこと。
ケーススタディ:ある士業事務所の例
ある士業の社長は、最初こう書きました。
- 顧客:中小企業全般
- 困りごと:手続きが分からない
- 選ばれる理由:対応が丁寧
一見、それっぽく見えますが、
これでは市場が広すぎて、何も見えません。
そこで、さらに掘り下げました。
- 顧客:従業員10名以下、創業5年以内の会社
- 困りごと:初めての手続きが不安
- 選ばれる理由:専門用語を使わず説明してくれる
ここまで具体化すると、
「戦っている場所」が、はっきりします。
ワーク②|「儲かっている市場」と「疲れる市場」を分ける
次に行うのが、
市場を感覚ではなく手応えで分ける作業です。
次の2つに、顧客を分類してみてください
- 話が早く、意思決定がスムーズ
- 価格交渉が少ない
- 紹介が生まれやすい
こうした特徴を持つ顧客がいる市場と、
- 説明に時間がかかる
- 値下げ前提で話してくる
- トラブルが多い
こうした顧客が多い市場。
どちらが多いでしょうか?
ここで大切なのは、
好き・嫌いではなく、事実ベースで見ること。
市場には「社長を消耗させる市場」がある
多くの社長が、無意識のうちに
自分を消耗させる市場に居続けています。
- 昔からの付き合い
- 今までやってきたから
- 他に選択肢がない気がする
こうした理由で選び続けた市場は、
往々にして、
- 利益が薄く
- 判断が増え
- 精神的負担が大きい
という特徴を持ちます。
市場選定とは、
「どこで頑張らないか」を決める作業でもあります。
ワーク③|「選ばれている理由」を疑ってみる
次にやるべきは、
「選ばれている理由」を疑うことです。
多くの社長は、こう考えがちです。
- 技術力があるから
- 実績があるから
- サービスが良いから
しかし、顧客の本音は、
もっと現実的です。
ケース:リフォーム会社の例
あるリフォーム会社は、
「技術力が高いから選ばれている」と思っていました。
しかし、実際にヒアリングすると、
- 見積もりが早かった
- 説明が分かりやすかった
- 不安な点を先回りして教えてくれた
という声が大半。
技術力は、
選ばれる理由ではなく、前提条件だったのです。
このズレに気づくことが、
次のSTEPに進む土台になります。
STEP1のゴールは「正解」を決めることではない
ここで誤解しないでほしいのですが、
STEP1は「最適な市場」を決め切る工程ではありません。
この段階のゴールは、たった一つ。
「今、自分はどの市場で戦っているのか」を
社長自身が説明できる状態になること。
- どんな顧客で
- どんな困りごとで
- なぜ選ばれているのか
これを、
他人に説明できるレベルまで言語化する。
それだけで、
この後の5ステップの精度は、驚くほど変わります。
市場を選ぶとは、「覚悟」を決めること
最後に、少しだけ踏み込んだ話をします。
市場選定とは、
単なる分析作業ではありません。
それは、
- どの顧客を優先するか
- どの仕事を伸ばすか
- どこに時間と判断を使うか
を決める、社長の覚悟決めです。
全員に好かれる市場はありません。
全部を取れる会社もありません。
だからこそ、
市場選定は最初にやる必要があるのです。
今日の一言
事業構造転換の最初の仕事は、
「何をやるか」を考えることではない。
「どこで戦うか」を、社長自身が言葉にすることだ。
ここが定まらなければ、
どんな打ち手も、ただの消耗戦になります。
