
― 「選ばれる理由」は、生まれつきではなく“作れる” ―
「うちには、これといった強みがなくて…」
市場を決め直す話をした次に、ほぼ必ず出てくる言葉があります。
それが、
「でも、うちには特別な強みがないんですよね」
という一言です。
・技術はあるけど、どこも似たようなもの
・実績はあるけど、他社と大差ない
・結局、価格で選ばれている気がする
この感覚を持っている社長は、とても多い。
そして、多くの場合、その悩みは真面目に仕事をしてきた証拠でもあります。
ですが、ここで最初に大切なことをお伝えします。
選ばれる理由は、「見つけるもの」ではありません。
設計し、言語化し、伝えることで“作るもの”です。
「提供価値=スキルや商品」だと思っていませんか?
まず、よくある勘違いから整理しましょう。
提供価値という言葉を聞くと、多くの人はこう考えます。
- 技術力
- 専門知識
- 商品の性能
- 経験年数
もちろん、これらは重要です。
ですが、それだけでは選ばれる理由にはなりません。
なぜなら、お客さんから見れば、
「それ、他でもできるよね?」
で終わってしまうからです。
提供価値とは、
「自分たちが何をできるか」ではなく、
「お客さんが何を理由に選ぶか」
の話なのです。
選ばれる理由が曖昧な会社で起きていること
提供価値が定義されていない会社では、
次のようなことが起こりがちです。
- 営業トークが毎回バラバラ
- ホームページの説明が抽象的
- 価格の根拠をうまく説明できない
- 結果として、価格競争に巻き込まれる
社長はこう思います。
「ちゃんと説明すれば分かってもらえるはずなんだけど…」
ですが、現実は逆です。
説明が必要な時点で、価値が伝わっていない
ことがほとんどなのです。
ケーススタディ|「何でもできます」が仇になった会社
ある制作系の会社の話です。
この会社の売りは、
「デザインも、WEBも、印刷も、全部対応できます」
というものでした。
社長としては、
柔軟性があり、頼りになる存在
でありたかったのです。
しかし実際には、
- お客さんは「結局、何が得意なのか分からない」
- 問い合わせは来るが、単価は低い
- 毎回ゼロから説明が必要
そこで、この会社が取り組んだのが、
提供価値の再定義でした。
やったことはシンプルです。
- 「全部できる」をやめる
- 一番成果が出ている支援内容に絞る
- その結果、お客さんがどう楽になったかを書く
すると、
「○○の課題なら、あの会社」
と認識されるようになり、
指名での相談が増えたのです。
提供価値は「機能」ではなく「変化」で語る
ここで、提供価値を再定義する際の
重要な視点をお伝えします。
それは、
提供価値は“機能”ではなく“変化”で語る
ということです。
×「このシステムを導入します」
×「この作業を代行します」
ではなく、
○「〇〇に悩まなくなります」
○「△△の判断が楽になります」
という形です。
お客さんが欲しいのは、
サービスそのものではありません。
サービスの先にある“状態の変化”
なのです。
「強みがない」のではなく、「整理されていない」だけ
ここで、もう一度言います。
多くの会社は、
強みがないのではありません。
- 日常業務に埋もれている
- 当たり前すぎて言語化されていない
- お客さん視点に翻訳されていない
ただ、それだけです。
実際に提供価値を整理していくと、
社長自身がこう言うことがあります。
「そんなの、どこもやってると思ってました」
ですが、その“当たり前”こそが、
特定の市場にとっては、
十分に選ばれる理由になるのです。
提供価値を再定義するための3つの問い
ここで、実際に使える問いを3つ紹介します。
紙に書きながら考えてみてください。
- どんなお客さんが、一番喜んでくれているか?
- そのお客さんは、何に一番困っていたか?
- 自分たちが関わったことで、何がどう変わったか?
ポイントは、
「何をしたか」ではなく、
「どう変わったか」に焦点を当てること。
この答えが、
提供価値の原型になります。
提供価値を決めると「やらないこと」も決まる
提供価値を再定義すると、
良い意味で“できないこと”が増えます。
- 本来の価値につながらない仕事
- 無理に合わせていた要望
- 価格だけで選ばれる案件
最初は、少し怖いかもしれません。
ですが、その代わりに、
- 説明が圧倒的に楽になる
- 営業の迷いが減る
- 価格の納得感が高まる
という変化が起こります。
提供価値を決めるとは、
「選ばれない理由」を先に作ること
でもあるのです。
市場 × 提供価値 が噛み合った瞬間に起きること
STEP1で市場を決め、
STEP2で提供価値を定義する。
この2つが噛み合うと、
事業は一気に楽になります。
- 誰に向けて話せばいいか分かる
- どんな言葉を使えばいいか分かる
- なぜ自分たちが選ばれるのか説明できる
ここまで来て、初めて次のSTEP、
「収益の仕組み」
の話が成立します。
次回予告|価格は「お願いするもの」ではなくなる
次回は、
STEP3:収益構造を設計する
を扱います。
「値上げが怖い」
「価格の根拠が説明できない」
その悩みは、
価格の問題ではなく、
構造の問題かもしれません。
今日の一言
選ばれる理由は、才能ではない。
設計し、言葉にした会社が手に入れる。
提供価値を定義した瞬間から、
あなたの事業は“比較される側”から
“指名される側”へと変わり始めます。
