― 価格競争から抜け出すためのポジショニング再設計|第4回目(全6回) ―
ポジショニングを考え始めると、なぜか競合ばかり見てしまう
ポジショニングを考えようとすると、
多くの人が、まず最初にやることがあります。
- 競合のホームページを見る
- 競合の価格帯を調べる
- 競合のキャッチコピーを並べる
- 「あそこは強いよな…」とため息をつく
そして、こうなります。
「うち、どこで勝てばいいんでしょうか…」
実はこれ、かなり“真面目にやっている人ほど陥りやすい罠”です。
努力しているからこそ、
調べて、比較して、考え込んでしまう。
ですが、ここで一度、はっきり言っておきます。
競合を見れば見るほど、
自分のポジションは分からなくなります。
競合分析が悪いわけではない。ただし「順番」が致命的
誤解しないでください。
競合分析そのものを否定しているわけではありません。
- 市場を知る
- 相場感を掴む
- 業界構造を理解する
これらは、経営において重要です。
問題なのは、
ポジショニングを決める前に、競合を見すぎること。
なぜなら、その瞬間から思考がこう変わるからです。
- 「あそこより弱いかも」
- 「同じこと言ってるな」
- 「ここは負けてる」
つまり、
自分の軸ではなく、他人の物差しで立ち位置を測り始めるのです。
「違いを探す」ほど、みんな同じになる不思議
競合を見ていると、
よくこんな作業を始めます。
- どこが違うか
- 何が足りないか
- どうズラすか
ですが、実際に起きているのは逆です。
「違いを探す」行為が、
全員を同じ方向に引き寄せている。
なぜか。
競合が打ち出している要素は、たいてい次のようなものです。
- 実績
- 品質
- スピード
- 対応力
- 価格
これらはすべて、
比較しやすく、分かりやすく、誰もが使う軸です。
そこから「少しだけズラそう」とすると、
- 実績が豊富 → さらに豊富
- 対応が丁寧 → もっと丁寧
- 価格が安い → もっと分かりやすい価格
結果として、
言葉だけが微妙に違う“横並びの集団”が出来上がります。
ケース①:競合研究を重ねるほど、言葉が薄まったコンサル業
ある支援系の事業者の話です。
彼は、ポジショニングを見直そうと考え、
真面目に競合調査を始めました。
- 同業者のHPを20社以上チェック
- キャッチコピーを書き出す
- 提供サービスを一覧化
最初は、やる気満々。
ところが、数日後、こう言いました。
「どこも似たようなこと言ってて、
何が違うのか分からなくなりました…」
実際、彼自身の言葉も、
- 「伴走支援」
- 「実行支援」
- 「課題解決」
と、どこかで見た表現に寄っていきました。
これは能力の問題ではありません。
競合を起点に考えた時点で、行き先はほぼ決まっているのです。
ポジションは「相対」ではなく「記憶」で決まる
ここで、視点を切り替えましょう。
ポジショニングとは、
競合との相対的な位置関係ではありません。
本質は、もっとシンプルです。
「お客さんの頭の中で、どう記憶されるか」
例えば、
- 「価格が少し安いA社」
- 「対応が丁寧なB社」
- 「説明が分かりやすいC社」
これらは、すべて比較前提の記憶です。
一方で、
- 「あの状況になったら、まず相談するところ」
- 「あの手の悩みなら、あそこしか思い浮かばない」
こう記憶されると、
競合比較は、そもそも起きにくくなります。
STEP3でやるべきことは「競合を見る」ことではない
STEP3の核心は、
競合を研究することではありません。
やるべきは、次の問いです。
「自分は、どんな瞬間に思い出されたいのか?」
これは、
- 市場シェア
- 強み
- 優位性
よりも、ずっと重要です。
なぜなら、
人は“比較表”ではなく、“状況”で意思決定するからです。
ケース②:「比較されない相談」が増えた瞬間
ある専門サービスを提供する事業者の例です。
以前は、
- 相見積もり前提
- 価格の話が最初
- 「他社と比較して検討します」
が当たり前でした。
そこで、競合を見るのを一度やめ、
次の問いに集中しました。
「どんな状態の人が、
どんなタイミングで、
どんな気持ちで連絡してくるのか?」
その結果、言語化されたのは、
- 切羽詰まっている
- 期限が決まっている
- 判断を先延ばしにできない
という“状況”でした。
発信や説明も、
競合比較ではなく、
その状況を前提にした言葉に切り替えたところ、
- 「ここしかないと思った」
- 「比較する余裕がなかった」
という相談が増えていきました。
競合を見ると「不安」が、顧客を見ると「確信」が生まれる
競合を見ていると、
頭の中はこんな状態になります。
- 自分は足りていない
- 出遅れている
- 勝ち目が薄い
つまり、不安ベースの思考です。
一方、顧客の状況を見ていると、
- 何に困っているか
- なぜ今なのか
- 何が怖いのか
が見えてきます。
こちらは、確信ベースの思考です。
ポジショニングを決めるとき、
どちらを起点にするかで、
言葉も、立ち姿も、まったく変わります。
「競合と比べない」は、目をつぶることではない
「競合を見ない」と言うと、
極端に聞こえるかもしれません。
ですが、ここで言っているのは、
- 市場を無視する
- 相場を知らない
ということではありません。
「自分の立ち位置を決める材料に、
競合を使わない」という意味です。
立ち位置は、
- 誰に(STEP1)
- 何をしないか(STEP2)
- どんな状況で思い出されたいか(STEP3)
この3点から、内側から決めるものです。
競合は、
その後に確認すれば十分です。
STEP3のゴール:「比較軸」から降りる
STEP3のゴールは、
競合より優れた表現を見つけることではありません。
- 比較される前提から降りる
- 同じ土俵に立たない
- 思い出される場面を一つに絞る
この状態を作ることです。
ここまで来ると、
- 価格の話が後回しになる
- 説明が短くなる
- 「分かりやすい」と言われる
という変化が起き始めます。
次回予告:STEP4|「選ばれ続ける理由」は、後から言語化される
次回はいよいよ、
- STEP1〜3で整えた立ち位置を
- どう言葉に落とすのか
を扱います。
多くの人がやりがちな
「先にキャッチコピーを作る」失敗と、
後からでもズレない言語化の順番について解説します。
今日の一言
ポジショニングは、
競合との差を探した先にはない。
「どんな瞬間に思い出されたいか」
を決めたところに生まれる。
