
事業構造を変える。
商品を変え、価格を変え、業務の流れも変えた。
――さて、ここで一つ、とても大事な問いが出てきます。
「この構造、続けられるのか?」
気合や根性の話ではありません。
「忙しいけど、なんとなく回っている」
「手応えはある気がする」
この“気がする経営”を終わらせるのが、STEP5の役割です。
ここでは、管理会計を使って、事業構造を“冷静に検証”します。
「儲かっているはず」が一番危ない
管理会計という言葉を聞くと、
- 難しそう
- 数字に強い人向け
- 税理士さんの仕事
そんな印象を持つ方も多いかもしれません。
でも、ここで扱う管理会計は、もっとシンプルです。
目的は一つ。
この事業構造を、社長自身が“続けたいかどうか”を判断するため。
ここでよくある落とし穴が、次の状態です。
- 売上は伸びている
- 仕事も増えている
- でも、なぜか社長は疲弊している
- お金も思ったほど残らない
この状態でよく出てくる言葉が、
「儲かっている“はず”なんですけどね…」
“はず”が付く経営は、ほぼ間違いなく構造に問題があります。
管理会計は「未来を決めるための道具」
ここで一度、管理会計の立ち位置を整理しておきましょう。
- 財務会計:過去を振り返るための数字
- 管理会計:未来を判断するための数字
STEP5でやるのは、後者です。
「この構造で、来年もやるか?」
「人を増やしても耐えられるか?」
「社長が現場に張り付かなくても回るか?」
こうした問いに、感覚ではなく数字で答えるための工程です。
まず見るべきは「利益」ではない
意外に思われるかもしれませんが、
この段階でいきなり最終利益を見る必要はありません。
最初に見るべきは、次の3点です。
- どこでお金を生んでいるか
- どこでお金を食っているか
- 社長の時間は、どこに吸われているか
利益は、この結果として“あとから見えるもの”です。
ケーススタディ:忙しいのに苦しい会社
あるサービス業の社長の話です。
- 売上:前年比120%
- 問い合わせ:増加
- 稼働率:ほぼ100%
数字だけ見れば、順調そのもの。
しかし、管理会計で中身を分解してみると、こうでした。
- 利益を出している商品:全体の20%
- ほとんど利益が出ない商品:50%
- 赤字だが「昔からの付き合い」で続けている商品:30%
さらに、社長の時間配分を見ると、
- 利益商品:ほぼ関与できていない
- 赤字商品:クレーム・調整対応で時間を消費
つまり、
一番価値を生む場所に、社長がいない構造だったのです。
この構造は、続けられるでしょうか?
答えは、ほぼノーです。
STEP5でやる管理会計検証の全体像
ここから、具体的に何を検証するのかを整理します。
STEP5の管理会計検証は、大きく4つの問いで構成されます。
- この事業は、誰のためのものか
- 利益は、どこから生まれているか
- 社長が抜けたら、どうなるか
- 続けた場合の未来は、明るいか
一つずつ見ていきましょう。
問い① この事業は「誰のため」に成り立っているか
まず確認したいのは、
この事業が、本当に“狙った顧客”のために最適化されているかです。
売上が立っていても、
- 無理な要望が多い
- 値下げ交渉ばかり
- 社長が直接対応しないと進まない
こうした顧客ばかり増えている場合、
構造としてはかなり危険です。
管理会計では、顧客別・商品別に、
- 売上
- 粗利
- 対応時間
をざっくりでいいので並べてみます。
すると、
「売上はあるけど、割に合わない」
「数は少ないが、めちゃくちゃ健全」
こうした違いが、驚くほどはっきり見えてきます。
問い② 利益は、どこから生まれているか
次に見るのが、利益の源泉です。
ここで重要なのは、
“頑張った結果の利益”と“構造から生まれる利益”を分けて考えること。
- 社長が深夜まで働いて出た利益
- 特定の個人スキルに依存した利益
これらは、管理会計上では不安定な利益です。
逆に、
- 価格が適正
- 業務が標準化されている
- 誰がやっても同じ成果が出る
こうした状態から生まれる利益は、
続けられる利益です。
STEP5では、
「この利益、社長がいなくても出る?」
と自分に問い続けます。
問い③ 社長が抜けたら、どうなるか
これは、少し怖いですが、避けて通れない問いです。
- 社長が1週間いなかったら
- 社長が現場対応をやめたら
事業はどうなるでしょうか。
管理会計的に見ると、
- 社長がやっている業務の人件費換算
- 社長が止まったときの売上影響
を仮置きで数値化します。
すると、
「この利益、社長のタダ働き前提じゃないか…」
そんな現実に気づくことも珍しくありません。
ここに気づけるかどうかが、
次のSTEP(改善・修正)に進めるかどうかの分かれ道です。
問い④ この構造を続けた未来は、明るいか
最後は、少し未来の話です。
- 人を1人増やしたら
- 社長の稼働を半分にしたら
- 売上が1.2倍になったら
それぞれの場合、
利益・キャッシュ・負荷はどう変わるか。
ここでは、正確な数字は不要です。
方向性が見えるかどうかが大事です。
- 成長すると楽になる構造か
- 成長すると苦しくなる構造か
管理会計は、この違いを見抜くための道具です。
管理会計検証のゴールは「続ける/直す」の判断
STEP5のゴールは、
完璧な数字を作ることではありません。
この構造を、
・このまま続けるのか
・どこかを直すのか
・やめるのか
この判断が、社長自身の言葉でできること。
「なんとなく不安」ではなく、
「ここが危ないから、ここを直す」と言える状態。
それが、STEP5の到達点です。
管理会計は、社長を責めるためのものではない
最後に、とても大事なことを一つ。
管理会計は、
「社長の判断ミスを暴くための道具」ではありません。
むしろ逆です。
ここまで一人で背負ってきた社長を、
構造の問題から解放するための道具です。
数字で構造を見れば、
「自分がダメだった」のではなく、
「仕組みがそうなっていただけ」と分かります。
それが分かれば、次に進めます。
今日の一言
続けられない構造は、頑張っても報われない。
数字は、その事実を静かに教えてくれる。
次のSTEPでは、この検証結果をもとに、
構造を“修正し、定着させる”フェーズへ進みます。
